フィリス・ガランの近衛生活

かざみはら まなか

文字の大きさ
216 / 1,464
第4章 異世界転生した少年少女がガラン領を永久追放されて王都に移送後、何があった?

217.誰もが認める人気者を受け入れない人がいるなんて、考えもしなかったんだろうねえ。

しおりを挟む
「成人の儀が閉会する前には。」

「ボク、知らないよ?」
初耳だよ。
「フィリスは王都にいなかったから、知らないのだろう。」
ボクが悪いんじゃないよね?
「王都にいなくても、領地にいたの。ボクにも家にも打診しないまま、何を決めたのよ。」

「成人したフィリスの近衛入団。」

「却下。」

「無駄だ。既に近衛で、私の護衛筆頭になっている。」

「ボクは、白紙撤回を要求する。」

「不可能だ。近衛は終身だからな。」

「そんな手続き、したのはどなた?認めたのはどなた?」

「手続きは、2つの公爵家と近衛の一部だな。認めたのは父とその他。父である国王陛下の反対はなかった。」

「フィリップ殿下のお母様である王妃様は、ガランが大嫌いなのに、王妃様が大事にしている愛息子のフィリップ殿下にガランの子息を充てがうの?」
矛盾しない?
「母の意向と公爵家の意向が、全て一致するわけではない。」
ほほう。
「聞きたい。」

「母は、王妃で王家の一員だが、公爵家は王から爵位を頂いた一貴族にすぎない。」

「そうね。」

「コーハ王国とコーハ王家が確固たる地位を示しているからこそ、コーハ王国の公爵家が活きる。」

「その通り。」

「公爵家としては、王家と国の権威が揺らぐことは望まない。国の安定的発展が自分達のためになるからな。」

「どんな王侯貴族も、国外からの扱いは、所属国の評価を抜きに考えられないもの。」

「母の兄弟は、母とともに、王家に振り回されたせいか、母寄りの立場だが、次期当主の長男達は、それぞれ、母に寄り添って共倒れになることを危惧した。」

「わかってきた。」

「母の持ち込んでくる見合い話は、国益を損なう。母が私の見合い話に大喜びしている間に、その見合い話自体を無意味なものにしてしまえば、母が浮かれただけで済む。」

「だから、ボクと結婚だなんだと、ね。」

「結婚は、王子の独断では出来ない。王子の結婚の足掛かりとして、フィリスは近衛に入り、護衛筆頭として、私と愛を育んだ末に、結婚するという筋書きが出来上がっていた。関係部署には、話が回ったはず。国益のために、積極的に反対するものはいなかったな。ウィルソンとレオナルドを除いて。」

「あの2人が側近なのに遠ざけられたわけね?」

「ああ。悪手だから、と周りを説得しようとする2人の動きが、王妃に伝わらないように、側近の立場を保留にして、自宅謹慎にした。」

「ボク、完全に人身御供じゃない?」

「私に寵愛されることを不幸だとか、迷惑だと主張する貴族子弟の存在は、計画の中に考慮されなかったからな。」

「キモチワルイ。」

フィリスは1つ、思い当たるフシがあった。

成人の儀での、フィリスの番だけ、不自然な沈黙と、国王陛下からの名前呼び。

手続きに関わった部署と、国王陛下を始めとする計画に加担した貴族や、要人達は、フィリスの誓いが、彼らの計画を台無しにするものだったから、歓迎しなかった。

「事前の打ち合わせもなく、近衛になりたいなんて、言う人いるの?」

「成人の儀の参加者は、早めに会場入りするから、フィリスがぎりぎりの滑り込み参加になるとは、誰も、予想していなかった。」
会場にいつ来るか、なんて、本人次第でしょ。
「打ち合わせしても、うんとは、言わない可能性は考えなかったの?誰も。」

「フィリスはな。」

「他の方は違うの?嫌がらないの。」

「公爵家と要人が後押ししている王子の私を袖にすることは、しないだろう。まして、国益にかなうとわかれば、貴族籍がある以上、思うことがあろうと、粛々と受け入れる。」

「ボクには通用しないやり方ね。」

「フィリスを見誤ったな。」
フィリップ殿下は苦笑している。
「最初から、ボクを見る目が曇っているから仕方ないね。」
ボクは、気づいていたよ、最初から。
「そんなことは。」

「王妃様から、逃れようとする行動と逃れたい気持ちは、王妃様の影響そのもの、よ?」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ユキ・シオン

那月
BL
人間の姿をした、人間ではないもの。 成長過程で動物から人間に変わってしまう”擬人化種”の白猫青年と、16歳年上のオッサンとのお話。 出会ったのは猫カフェ。白猫従業員としての青年と客としてやってきたオッサン。 次に再会したのは青年が人間として通う大学。オッサンは保健室の先生だった。 青年が金のためにヤバいことをしていて、あるトラブルが起こる。 そこへ見計らったかのようにオッサンが飛び込んで救出したのをきっかけに2人の距離は縮まり…… ※表紙絵は自作。本編は進むにつれてどんどん動物園と化します(笑)

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ギルド職員は高ランク冒険者の執愛に気づかない

Ayari(橋本彩里)
BL
王都東支部の冒険者ギルド職員として働いているノアは、本部ギルドの嫌がらせに腹を立て飲みすぎ、酔った勢いで見知らぬ男性と夜をともにしてしまう。 かなり戸惑ったが、一夜限りだし相手もそう望んでいるだろうと挨拶もせずその場を後にした。 後日、一夜の相手が有名な高ランク冒険者パーティの一人、美貌の魔剣士ブラムウェルだと知る。 群れることを嫌い他者を寄せ付けないと噂されるブラムウェルだがノアには態度が違って…… 冷淡冒険者(ノア限定で世話焼き甘えた)とマイペースギルド職員、周囲の思惑や過去が交差する。 表紙は友人絵師kouma.作です♪

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。  だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。 かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。 だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。 「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。 国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。 そして、勇者は 死んだ。 ──はずだった。 十年後。 王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。 しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。 「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」 これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。 彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。

記憶を無くしたら家族に愛されました

レン
BL
リオンは第三王子で横暴で傲慢で侍女や執事が少しでも気に入らなかったら物を投げたり怒鳴ったりする。家族の前でも態度はあまり変わらない… 家族からも煩わしく思われたていて嫌われていた… そんなある日階段から落ちて意識をなくした…数日後目を覚ましたらリオンの様子がいつもと違くて…

有能すぎる親友の隣が辛いので、平凡男爵令息の僕は消えたいと思います

緑虫
BL
第三王子の十歳の生誕パーティーで、王子に気に入られないようお城の花園に避難した、貧乏男爵令息のルカ・グリューベル。 知り合った宮廷庭師から、『ネムリバナ』という水に浮かべるとよく寝られる香りを放つ花びらをもらう。 花園からの帰り道、噴水で泣いている少年に遭遇。目の下に酷いクマのある少年を慰めたルカは、もらったばかりの花びらを男の子に渡して立ち去った。 十二歳になり、ルカは寄宿学校に入学する。 寮の同室になった子は、まさかのその時の男の子、アルフレート(アリ)・ユーネル侯爵令息だった。 見目麗しく文武両道のアリ。だが二年前と変わらず睡眠障害を抱えていて、目の下のクマは健在。 宮廷庭師と親交を続けていたルカには、『ネムリバナ』を第三王子の為に学校の温室で育てる役割を与えられていた。アリは花びらを王子の元まで運ぶ役目を負っている。育てる見返りに少量の花びらを入手できるようになったルカは、早速アリに使ってみることに。 やがて問題なく眠れるようになったアリはめきめきと頭角を表し、しがない男爵令息にすぎない平凡なルカには手の届かない存在になっていく。 次第にアリに対する恋心に気づくルカ。だが、男の自分はアリとは不釣り合いだと、卒業を機に離れることを決意する。 アリを見ない為に地方に移ったルカ。実はここは、アリの叔父が経営する領地。そこでたった半年の間に朗らかで輝いていたアリの変わり果てた姿を見てしまい――。 ハイスペ不眠攻めxお人好し平凡受けのファンタジーBLです。ハピエン。

処理中です...