正義が勝たないデスゲームから脱出しよう。【R15】

かざみはら まなか

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504.お父さんの取引先のパーティーにお母さんと弟がお父さんと一緒に参加した経緯。弟は気付いていなかったが、お母さんはお父さんの異変に?

弟の唇が震えている。

「死んでいたら、なんて考えたくない。」
と弟。

「弟さんも、お母様のように、お父様の取引先の関係者に囲まれることになっていたかもしれません。」
とカガネ。

「お母さんは、何かに気付いて洗脳されたと考えているんですか?」
と弟。

「お父様が、お母様と弟さんを取引先のパーティーに連れていったことで、お母様と弟さんにスポットライトが当たりました。」
とカガネ。

「やっぱりお父さんの取引のパーティーなんて、行くべきじゃなかった。」
と弟。

「お父さんの取引先のパーティーは、お父さんだけがいれば良かったのか?」

「弟さんとお母様は行く必要がないパーティーだったのでしょうか?」
とカガネ。

俺とカガネは、同時に声をあげていた。

「お父さんからパーティーに行くと告げられたとき、お父さんのパーティー出席に反対したんだ。俺とお母さんの二人で。」
と弟。

「お父さんから聞いた説明を信じたお母さんとユキミが、お父さんのパーティー参加を反対するのは至極真っ当だと思う。」

俺の知るお母さんと弟は。

意にそわない美容整形手術をしたことを隠そうとしている家族が。

意にそわないパーティーに出されようとしていると聞かされて。

パーティーには行ってきたらという性格ではない。

「お母様と弟さんに反対されたお父様は何と?」
とカガネ。

「行きたくなくても、お父さんは行かないといけない。

俺とお母さんへそう話していたよ。」
と弟。

「お父さんは行かないといけない、か。」

どうしても、俺は、お父さんの発言の裏を読みたくなってしまう。

「お母様と弟さんがお父様に同行された理由は、話せますか?」
とカガネ。

「お父さんはパーティーに行かなくてもいい、とお母さんはずっと言っていた。

そうしたら、実は家族も招待されているとお父さんが打ち明けてきたんだ。」
と弟。

「お父さんが美容整形手術をすることに固執する取引先から招待されたパーティーに、ユキミは行きたかったか?」

「行きたくなかったよ。俺にとって居心地の良い空間だとは思えなかったし。

兄ちゃんもそう思うだろう?」
と弟。

「俺は、行かない。」

家族も行かせない。

お父さんが手術を受けると言い出すか、手術を受けて帰ってきた時点で、お母さんと弟に手伝わせてでも、お父さんを家から出さないようにする。

本人が離れようとしなくなっているのなら、家族の力で、強制的にそこに行かないようにさせるしかないと思う。

これらの答えは、過ぎた事実として聞いているからこそであることは否めない。

「パーティーへ招待されているという話を聞いて、家族でパーティーに行くと決めたのは、お母様ですか?」
とカガネ。

「はい。お母さんは、パーティーに参加して、お父さんの取引先とパーティーで話をしたいと話していました。」
と弟。

「お母様がどんな話をする予定か、お父様と弟さんは聞いていましたか?」
とカガネ。

「お父さんの取引先と、お父さんの待遇について話をしたいと言っていました。」
と弟。

お父さんは、お母さんがパーティーに出席する目的を誰にも明かさずにいたか?

「お母さんの話がしたいは、これまでお父さんがされてきたことについての文句を言うことだったか?

それとも、お父さんのこれからの待遇の話だったか?」

「前者だよ。

お父さんがこれまでされてきたことに対する苦情を入れて、取引先にはお父さんに対する考え方を変えてもらうと息巻いていた。」
と弟。

お母さんは、パーティーに参加して、お父さんの変わり様に対する憤りをお父さんの取引先にぶつけに行こうとしていた。

お父さんの変わり様に引きずられたり、振り回されたりしているうちに、この時期、お母さんは、平常心を失っていたのではないか。

「お父さんが正常な判断能力を失って、取引先の言いなりになっている姿に、お母さんは危惧を覚えて動いた、か。」

お母さんは、お母さんとユキミだけで、敵陣に乗り込むくらい冷静さに欠けていた。

お父さんの異変に気付いたお母さんが、誰かに相談して味方につけようとしても、誰も味方に出来なかったとは思う。

誰も味方がいないから、と、一人で乗り込んでは失敗する。

現実に奇跡は起きない。

パーティーに乗り込む前に、普段親交がない下世話な噂話が好きな人達を巻き込んでいるなどしていたら、まだ、勝算はあったかもしれない。

お父さんの身に起きたことを世間に隠し通したまま、お父さんを追い詰めた主犯の元に自分一人で乗り込むのは。

お父さんの次は、自分を標的しろとお母さんから名乗り出ているようなもの。

その証拠に、標的がお父さんからお母さんに移っている。

ひょっとしたら、パーティー会場に行けば、お父さんがお母さんに協力的になるとお母さんは期待していたのかもしれない。

「お父様の思考を偏よらせ、取引先の言うことなら何でも聞くようになったお父様が何をされてその状態になってしまったかということに、お母様は気付かれたのでしょう。」
とカガネ。

「お父さんが何をされたって?」
と弟。

弟は、ソワソワしだした。

「その時期のお父さんには、自身の意思がなかった、と感じたことはないか?」

「お父さんに意思がないなんてことはなかったよ。いつも、お喋りかけてくるのはお父さんからだった。」
と弟。

家族に喋りかけるという動作を、お父さん自身の意思でしていたかどうか。

という憶測は口に出さない。

「お母さんから見たお父さんは、お父さんの取引先に直接、お母さんが物申そうとするくらいの状態になっていたのではないか?」

俺の台詞をカガネが補足する。

「取引先との関係を絶つようにと伝えても、頑として頷かないお父様を見て、お母様が痺れを切らした可能性はありませんか?」
とカガネ。

カガネに、お母さんについて確認された弟は、記憶を思い出したかのように小さく手を叩いた。

「お母さんは、文句を言うためにパーティーに参加すると言って、今まで集めたとかいう証拠の整理をしていたよ。」
と弟。

「ユキミは、お母さんに証拠の整理を誘われたか?」

「お母さんがパーティーに行くなら、俺もついていった方がいいと漠然と思ったのは。

証拠を持って行くとお母さんが話していたから。

そんな状態なら、家に一人でいても、パーティーが気になって仕方なくなるし。」
と弟。

「お母さんがパーティーに行くことに乗り気になったから、ユキミも自主的についていったということか。」

突然、弟は、ひたっと俺に視線を合わせてきた。

こちらの真偽を見極めようとするかのように、視線をズラさない。

「お母さんがおかしくなる前に、お父さんが洗脳されていた可能性があるという話をしているよね?」
と弟。

「お父さん自身の意思でそう振る舞っていた可能性もある。」

「でも。兄ちゃんは、お父さんが洗脳された方が先だと疑っているんだよね?」
と弟。

正直なところ、お父さんは、どちらの可能性もあると俺は思っている。

お母さんが、積極的に動いた動機として、お母さんがお父さんの状態に気付いたからだとすると、俺の中でしっくりくるのは確かだ。

お父さんの性格は、一考の余地がある。
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