正義が勝たないデスゲームから脱出しよう。【R15】

かざみはら まなか

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134.動機がなくても、人は人を殺す?支援団体の言いなりになっている学生は、支援団体が全てを仕切っていると考えて、私怨を晴らすために?

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話し始めたのは、モエカだった。

「佐竹くんは、何をされても話さなかった。」
とモエカ。

「おい!」
と話し手がモエカの話を遮ろうと声をあげ、他にも何人かが、ざわめく。

モエカは、周りのざわつきを無視した。

「このまま見ていたら、佐竹くんは、何も話さないうちに死んでしまう、と私は思ったの。」
とモエカ。

「殺しかねないことを佐竹ハヤトにしていた、ということか。」

俺は、モエカと話しながら、周りを一瞥した。

「俺達が、佐竹ハヤトを殺すわけがない。

俺達には、佐竹ハヤトを殺す動機がない。」
と話し手。

「俺と話せる状態の佐竹ハヤト自身が、俺にそう言っていたら、耳を傾けるくらいはしていた。

佐竹ハヤトがこの部屋にいない時点で、聞く意味はあるか?」

俺の友達は、死んだ。

友達の死の無念を晴らすとか、御大層な考えなど、俺にはない。

俺は、友達の死によって利益を享受してきた側の言い分をビタ一文、受け入れたくないから、友達の死の真相を探っている。

俺の友達が、佐竹ハヤトしかいなかったのは、俺の人生の邪魔をしないのが、佐竹ハヤトだけだったから。

佐竹ハヤトは、俺の生き方を純粋に面白がっていた。

ときどき、友達というよりも、研究されているような質問が飛んでくることもあったが、それらの質問が不快になったことは一度もない。

俺は、今まで、俺の気に入らないことを俺に要求するやつらとの縁を切って、生きてきた。

我慢を強いられて生きて行くのは、俺の性に合わない。

俺の人生をコントロールするのは、俺だ。

俺は、友達の佐竹ハヤトが死んだことを受け入れてはいる。

佐竹ハヤトが死ぬ羽目になった経緯を受け入れることと、佐竹ハヤトの死を受け入れることは、別だ。

「最初は、話をしているだけだったの。

何を言われても動じない佐竹くんに対して、徐々にかける言葉が荒くなっていった。

どれだけ罵られても、佐竹くんは、動じなかった。

動じない佐竹くんに、分からせてやろうと言い出した人がいた。

さっき死んだ男よ。

タケハヤプロジェクトの機密を盗み出すのに失敗して、支援団体の存在を明るみに出した男。

あの男は、言ったの。

『支援団体は、佐竹ハヤトに煮え湯を飲まされたことを恨んでいる。

この建物の中から出られるかどうかは、支援団体が満足するかにかかっている。

佐竹ハヤトが、反抗的なままだったら、支援団体は俺達をどう思うか?』

死んだ男の台詞を聞いて、佐竹くんを取り巻く空気は、格段に悪くなったの。

何人かが、佐竹くんに恨み言を言い始めた。

佐竹くんは、一人一人に、ではなく、まとめて言い返していた。

言い返すというより、論点をまとめて、諭していた。

佐竹くんに諭された人は、恨み言を引っ込めた。

私達は、佐竹くんほどではないけれど、馬鹿ではないから、論理的に破綻している会話はできないの。

振り出しに戻ったあの男は、自分一人では、佐竹くんをどうにかできない、と気づいて、作戦を変えてきた。」
とモエカ。

タケハヤプロジェクトに参加した学生は、熱意と意欲と少しの才能と、自身が馬鹿ではないという自負があったということか。

佐竹ハヤトは、タケハヤプロジェクトの学生の自尊心が失われていないと知っていた。

学生の自尊心をくすぐって、納得させたか。

「あの男は、支援団体が自分を見捨てるはずがないと思っていたの。

『俺のアドバイス通りに動けば、支援団体は必ず俺達を助け出す。

早く確実に助かりたいなら、支援団体にいい印象を持ってもらえるように、した方がいい。』
とあの男は言い出した。」
とモエカ。

「支援団体の息がかかっていた男は、佐竹ハヤトへの私怨を晴らそうと、『◯◯という部屋にに閉じ込められた』の状況を利用したのか。」

俺は、合点がいった。

賢さを小ずるさに全振りした男は、最期まで、正義が勝たないデスゲームを運営するのは、支援団体だと思い込んでいたから、デスゲーム運営に助けを求めたのか。

見当違いだと気づかないまま、今日まで生きてきて、今日、死んだ。

話し手が、俺に話をしているのは、支援団体の息がかかっていた男が死んだタイミングだからか。

「支援団体について、全員疑心暗鬼になっていた。

タケハヤプロジェクトの学生は、最初から支援団体に反発してきた。

支援団体のご機嫌をとったら助けにきてくれるのではないか?

そんな希望を持ってしまったの。」
とモエカ。

「助ける気がサラサラないどころか、タケハヤプロジェクトの学生を苦境に立たせているのは、支援団体だと、タケハヤプロジェクトの学生は、誰も気づかなかったのか?」

「気づいても、気づかなくても。
私達が、助けを求める相手は、支援団体しかないと思っていた。

私達が支援団体に助けを乞う原因を作ったのが、支援団体という現実を見てきて、経験してきていても。

私達には、他の方法を選べなかったの。

だから、腹立たしい矛盾には目をつむって、見なかったことにした。

私達は、正論を述べて反発するという方法しか、戦い方を知らなかった。

私達が支援団体に反発したことが、私達自身の首を絞めることになっている、と私達は考えてしまったの。」
とモエカ。

モエカは、早いうちに、支援団体のやり方に気づいていて、支援団体から目をつけられないように、息を潜めていた、か。

私達と言いながらも、モエカは、話し手や他のタケハヤプロジェクトの参加者とは一戦をひいた話し方をする。

モエカは、タケハヤプロジェクトの学生の行動の動機を分析するような話し方をしている。

「支援団体の言いなりになっている男の言うことを鵜呑みにして、佐竹ハヤトに機密を話せと迫るのではなく、佐竹ハヤトに助かり方をレクチャーしてくれと頼むこと。

タケハヤプロジェクトの学生が本来選ばなければならない選択肢は、これ以外なかった。

選ばなければならない選択肢から、佐竹ハヤト以外は目を背けたか?」

「あの男は、支援団体が納得するように、無様にひれ伏す姿になれ、と佐竹くんに言ったの。

佐竹くんは相手にしなかった。

すると。

佐竹くんが、心から反省するようにしてやれ、と、あの男は他の人を唆したの。

唆された人が、佐竹くんを蹴ったり、殴ったりし始めた。

佐竹くんは逃げられないように、最初から床に押さえつけられていた。

佐竹くんは、誰に何をされても何も言わなかった。

『つまらない。これでは、佐竹ハヤトが心から悔い改めたかどうか、分からない。』
とあの男は言ったの。

『もっと効果的な方法があるから、それにしよう。』

あの男は、私を顎でしゃくって、笑いながら、佐竹くんに言ったの。

『一番仲良しだった女には、さすがに未練があるだろう?

痛い目にあわせたくないだろう?』」
とモエカ。
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