《本編 完結 続編 完結》29歳、異世界人になっていました。日本に帰りたいのに、年下の英雄公爵に溺愛されています。

かざみはら まなか

文字の大きさ
53 / 673
第4章 夫が真実の愛を捧げる相手はどこにいるのでしょうか?名乗り出てください。

53.『愛するヒサツグに不貞を働かせるわけにはいかない。』公爵が、仕事の合間に屋敷に帰ってくるようになりました。オレ、外出禁止になりました。

しおりを挟む
男?

なぜ、男?

疑問しかない。

公爵に、神子様と公爵の仲の進展のため、と言ってしまえる雰囲気ではない。

となると、玉虫色の回答の出番だ。

「男子禁制で無い限り、どこに行っても男は、いる。逆に女もいる。」

明言を避けた。

すると。

「ヒサツグは、私以外と外出する日は、来ないと心得るように。」

はい?
屋敷から出たらダメだと?

「何を言って。」

「私に会えないあまりに、私に隠れて、一人で外出しようとするほど、思い詰めていたとは。」

公爵が嘆き出した。

どうしよう。

公爵の嘆きポイントが、オレには、さっぱり分からん。

外出が悪い?

いや、視察には行ったぞ。

視察は、一人では、なかったなー。

一人で、か?

一人で外出がダメなのか?

治安がどうの、という流れじゃなかったぞ。

「ヒサツグ。私は、ヒサツグの控えめさに甘えすぎていた。」

オレが控えめ?

ノー、ノー。

オレは、主張すべきことは主張するよ。

公爵の頭の中で、何が起きている?

「ヒサツグ。私は、ヒサツグ一人を愛し続ける。ヒサツグにもそうであってほしい。ゆえに、私は、ヒサツグを一人で、外出させることはしない。」

なんですと?

公爵は、オレのことを愛している?

瓢箪から駒!

公爵がオレを愛してる、なんて初耳。

公爵がオレを愛する要素なんて、どこに?

神子様は、どうなっている?

「愛しているから、一人で外出させないって、どういう意味?」

「私は、愛するヒサツグに不貞を働かせるつもりはない、ということだ。」

「ふ、ふ、不貞?オレが?」

不貞を働くのは、オレじゃないって。

オレは、日本に帰るために、夫の公爵に愛人を斡旋するだけだから。

あれ?

愛人を斡旋しようにも、一人での外出が出来なかったら、どうやって探す?

万事休すじゃないか。

どうしよう?

そのとき、オレは、自分の考えを追っていて、公爵の動きを意識の外に追いやっていた。

だから、気づくのが遅れた、公爵の反応に。

公爵は、オレの一挙手一投足、顔色や、目の動きまで、隣に張り付いて観察していたようだ。

「図星か。」
公爵は、誤った確信を持ってしまった。

「違う!」
とオレが否定しても、後の祭り。

「今日からは、合間、合間に帰ってくる。」

公爵は、そう言って、仕事に行った。


そして、この日から、公爵は、本当に、一日のうちに、数回、時間はバラバラで、屋敷に帰ってくるようになった。

日中は、帰ってくると、オレが屋敷にいることを確認して、ヤグルマさんと打ち合わせをして、仕事に戻っていく。

約二週間に一度くらいの割合で行っていた王城も、オレは行かなくなった。

国王陛下の姉や、宰相の娘、司祭の従兄弟とも会っていない。

お誘いが来なくなった。

お誘いが来なかったんで。

「そろそろ王城に行く頃合いだから。」
と公爵に言ったら。

「私のヒサツグなので、私に返してもらっている。ヒサツグは、私の伴侶だ。」
と言われた。

それ以来、誰とも音信不通。

愛しているって、オレのどこを?

一体、いつから?

このまま、何もしなければ、完全に外部との繋がりが断たれる。

外部との繋がりは、数少ないオレの生命線なのに。

オレは、公爵がボンクラだと知っている。

公爵をあてにしない方が、安心。

というか、さ。

この世界。
オレ自身しか信用できないんだよな。

そんなオレは、公爵のせいで、金魚鉢の金魚だ。

なんとか、現状を打破しないと。
しおりを挟む
感想 84

あなたにおすすめの小説

異世界転移してΩになった俺(アラフォーリーマン)、庇護欲高めα騎士に身も心も溶かされる

ヨドミ
BL
もし生まれ変わったら、俺は思う存分甘やかされたい――。 アラフォーリーマン(社畜)である福沢裕介は、通勤途中、事故により異世界へ転移してしまう。 異世界ローリア王国皇太子の花嫁として召喚されたが、転移して早々、【災厄のΩ】と告げられ殺されそうになる。 【災厄のΩ】、それは複数のαを番にすることができるΩのことだった――。 αがハーレムを築くのが常識とされる異世界では、【災厄のΩ】は忌むべき存在。 負の烙印を押された裕介は、間一髪、銀髪のα騎士ジェイドに助けられ、彼の庇護のもと、騎士団施設で居候することに。 「αがΩを守るのは当然だ」とジェイドは裕介の世話を焼くようになって――。 庇護欲高め騎士(α)と甘やかされたいけどプライドが邪魔をして素直になれない中年リーマン(Ω)のすれ違いラブファンタジー。 ※Rシーンには♡マークをつけます。

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

氷の騎士団長様の悪妻とかイヤなので離婚しようと思います

黄金 
BL
目が覚めたら、ここは読んでたBL漫画の世界。冷静冷淡な氷の騎士団長様の妻になっていた。しかもその役は名前も出ない悪妻! だったら離婚したい! ユンネの野望は離婚、漫画の主人公を見たい、という二つの事。 お供に老侍従ソマルデを伴って、主人公がいる王宮に向かうのだった。 本編61話まで 番外編 なんか長くなってます。お付き合い下されば幸いです。 ※細目キャラが好きなので書いてます。    多くの方に読んでいただき嬉しいです。  コメント、お気に入り、しおり、イイねを沢山有難うございます。    

騎士団長の秘密

さねうずる
BL
「俺は、ポラール殿を好いている」 「「「 なんて!?!?!?」」 無口無表情の騎士団長が好きなのは別騎士団のシロクマ獣人副団長 チャラシロクマ×イケメン騎士団長

転生したらスパダリに囲われていました……え、違う?

米山のら
BL
王子悠里。苗字のせいで“王子さま”と呼ばれ、距離を置かれてきた、ぼっち新社会人。 ストーカーに追われ、車に轢かれ――気づけば豪奢なベッドで目を覚ましていた。 隣にいたのは、氷の騎士団長であり第二王子でもある、美しきスパダリ。 「愛してるよ、私のユリタン」 そう言って差し出されたのは、彼色の婚約指輪。 “最難関ルート”と恐れられる、甘さと狂気の狭間に立つ騎士団長。 成功すれば溺愛一直線、けれど一歩誤れば廃人コース。 怖いほどの執着と、甘すぎる愛の狭間で――悠里の新しい人生は、いったいどこへ向かうのか? ……え、違う?

転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした

リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。  仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!  原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!  だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。 「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」  死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?  原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に! 見どころ ・転生 ・主従  ・推しである原作悪役に溺愛される ・前世の経験と知識を活かす ・政治的な駆け引きとバトル要素(少し) ・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程) ・黒猫もふもふ 番外編では。 ・もふもふ獣人化 ・切ない裏側 ・少年時代 などなど 最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。

2度目の異世界移転。あの時の少年がいい歳になっていて殺気立って睨んでくるんだけど。

ありま氷炎
BL
高校一年の時、道路陥没の事故に巻き込まれ、三日間記憶がない。 異世界転移した記憶はあるんだけど、夢だと思っていた。 二年後、どうやら異世界転移してしまったらしい。 しかもこれは二度目で、あれは夢ではなかったようだった。 再会した少年はすっかりいい歳になっていて、殺気立って睨んでくるんだけど。

【完結済】虚な森の主と、世界から逃げた僕〜転生したら甘すぎる独占欲に囚われました〜

キノア9g
BL
「貴族の僕が異世界で出会ったのは、愛が重すぎる“森の主”でした。」 平凡なサラリーマンだった蓮は、気づけばひ弱で美しい貴族の青年として異世界に転生していた。しかし、待ち受けていたのは窮屈な貴族社会と、政略結婚という重すぎる現実。 そんな日常から逃げ出すように迷い込んだ「禁忌の森」で、蓮が出会ったのは──全てが虚ろで無感情な“森の主”ゼルフィードだった。 彼の周囲は生命を吸い尽くし、あらゆるものを枯らすという。だけど、蓮だけはなぜかゼルフィードの影響を受けない、唯一の存在。 「お前だけが、俺の世界に色をくれた」 蓮の存在が、ゼルフィードにとってかけがえのない「特異点」だと気づいた瞬間、無感情だった主の瞳に、激しいまでの独占欲と溺愛が宿る。 甘く、そしてどこまでも深い溺愛に包まれる、異世界ファンタジー

処理中です...