62 / 673
第5章 いつになったら、日本に帰れますか?
62.神子様に夫を取られることが、不安なわけじゃありません、オレは。公爵は『妻を不安がらせないため、神子様とは距離をとる』と言っていますが。
しおりを挟む
オレと公爵は、王都の公爵家の屋敷に戻ってきた。
公爵領での、神子様についての話し合いは、空振りに終わった。
オレは、なんの情報も得られなかった。
本当に、もう、なんなんだ。
公爵は、以下の三つの台詞を繰り返すばかり。
『誤解だ。』
『神子様とは、何ともないんだ。』
『私が愛しているのは、ヒサツグだけ。』
浮気者の常套句ばかり並べて、正妻のオレが納得するとでも?
腹を立てていたから、現場もおさえているのに、誰が引き下がるか!と、オレは強気対応をしていた。
最終的に、オレが根負けした。
オレが、
『分かった。』
と言うまで、公爵は、常套句三つをエンドレス。
最後の方、公爵は、オレの足元に跪いて。
『私のヒサツグが、私を信じてくれるまで、このままでいる。』
とふざけたことを言って、本当に立ち上がろうとしなかった。
その根性は、別の機会にとっておいてほしかった。
にっちもさっちもいかなくなって、オレは、『分かった。』と言うしかなかったよ。
ふっ。
浮気者が、正妻に発揮する知能の高さの、常ならざることよ、とか言いたくなるよね?
オレの立場はさ。
夫の浮気に怒りながら、浮気者の夫から、離れられない。
なぜなら、夫が帰ってくるのは、正妻がいる家だから。
正妻は、どんと構えて待っている、みたいな、妻の役どころになってしまいそうなんだけど。
違うからな!
オレは、正妻の余裕とかじゃないからな!
神子様に夫を取られるんじゃないかと、オレが不安がっているという結論に達した公爵。
『私のヒサツグ。王都に、私と一緒に戻ってほしい。この先、私は、私のヒサツグを不安にさせない、と約束する。』
と誓われたオレ。
駄目押しのように、公爵はオレに訴えた。
『今までみたいに、神子様の近くにはいないようにする。
神子様とは、距離をとる。
どうか私を信じてほしい。』
誓いは、素晴らしいけれど、オレが欲しいのは、誓いじゃなくて、情報なんだよ。
いや、不安がっているというか、不安なんだよ。
神子様の情報がなさすぎて。
神子様がオレの敵、じゃないんだよなー。
オレには、神子様と敵対するメリットなんか、ないからね?
逆に、神子様には、オレに敵対する理由がある。
オレは、神子様の敵なんだよなー。
オレは、神子様が好きじゃない。
でも。
日本に帰るために必要だから。
神子様が、オレに危害を加える心配がなければ、神託通りに、神子様と公爵をくっつけて、身を引く。
その予定でいるんだけど。
オレが身を引く前に、乗り込んできて、早く別れろと言ってくる人だから、何かされないか、不安だ。
神子様は、オレに対する申し訳なさ、が皆無。
あれか?
『二人は、出会うのが、遅すぎただけ。』
思考なのか、神子様は。
ん?
神子様は、公爵と一緒に魔王討伐をしている。
オレが来る前に魔王は討伐されている。
神子様は、オレより先に公爵と出会っているぞ?
ということは。
『側にいすぎて、側にいるのが、当たり前になっているから、誰かに取られる心配をしていなかった。
気持ちを伝えなくても、二人は同じ気持ちと思っていたのに、後から出てきたオレが掻っ攫っていって、気がついた。
気持ちが伝わっていなかった。
取り返さないと。』
系?
糟糠の妻?系じゃないよなー。
糟糠の妻系だと、周りが、ぽっと出のオレの敵にまわる。
敵に?
オレ、公爵に連れてこられてから、周りに敵しかいない状態じゃなかったか?
公爵家の使用人は、オレを客扱いしていたけれど。
公爵の友人とか、公爵の婚約者候補とか、教育係とか。
まさか。
糟糠の妻が、正解だったりする?
考えても、仕方ないな。
うん。
問題は一つ。
浮気者と浮気相手がいたら、神子様が憎むのは浮気相手。
腐れ縁の相手に、恋人が出来たら、腐れ縁の相手の恋人に憎しみを募らせる。
オレ、王都に戻ってきたくなかったなー。
王都に、というか、神子様の目の届く範囲にいたくないなー。
はあ。
気が重い。
旅に出たい。
オレが、王都の公爵家の屋敷の玄関から出られない問題も、未解決のまま。
ヤグルマさんは、公爵が原因っぽい話をしていた。
問題を解決して、軟禁を解除する流れにもっていけば、不自然じゃない。
王都でも、公爵と話し合いするのか、オレは。
成果が出るといいなー。
公爵領での、神子様についての話し合いは、空振りに終わった。
オレは、なんの情報も得られなかった。
本当に、もう、なんなんだ。
公爵は、以下の三つの台詞を繰り返すばかり。
『誤解だ。』
『神子様とは、何ともないんだ。』
『私が愛しているのは、ヒサツグだけ。』
浮気者の常套句ばかり並べて、正妻のオレが納得するとでも?
腹を立てていたから、現場もおさえているのに、誰が引き下がるか!と、オレは強気対応をしていた。
最終的に、オレが根負けした。
オレが、
『分かった。』
と言うまで、公爵は、常套句三つをエンドレス。
最後の方、公爵は、オレの足元に跪いて。
『私のヒサツグが、私を信じてくれるまで、このままでいる。』
とふざけたことを言って、本当に立ち上がろうとしなかった。
その根性は、別の機会にとっておいてほしかった。
にっちもさっちもいかなくなって、オレは、『分かった。』と言うしかなかったよ。
ふっ。
浮気者が、正妻に発揮する知能の高さの、常ならざることよ、とか言いたくなるよね?
オレの立場はさ。
夫の浮気に怒りながら、浮気者の夫から、離れられない。
なぜなら、夫が帰ってくるのは、正妻がいる家だから。
正妻は、どんと構えて待っている、みたいな、妻の役どころになってしまいそうなんだけど。
違うからな!
オレは、正妻の余裕とかじゃないからな!
神子様に夫を取られるんじゃないかと、オレが不安がっているという結論に達した公爵。
『私のヒサツグ。王都に、私と一緒に戻ってほしい。この先、私は、私のヒサツグを不安にさせない、と約束する。』
と誓われたオレ。
駄目押しのように、公爵はオレに訴えた。
『今までみたいに、神子様の近くにはいないようにする。
神子様とは、距離をとる。
どうか私を信じてほしい。』
誓いは、素晴らしいけれど、オレが欲しいのは、誓いじゃなくて、情報なんだよ。
いや、不安がっているというか、不安なんだよ。
神子様の情報がなさすぎて。
神子様がオレの敵、じゃないんだよなー。
オレには、神子様と敵対するメリットなんか、ないからね?
逆に、神子様には、オレに敵対する理由がある。
オレは、神子様の敵なんだよなー。
オレは、神子様が好きじゃない。
でも。
日本に帰るために必要だから。
神子様が、オレに危害を加える心配がなければ、神託通りに、神子様と公爵をくっつけて、身を引く。
その予定でいるんだけど。
オレが身を引く前に、乗り込んできて、早く別れろと言ってくる人だから、何かされないか、不安だ。
神子様は、オレに対する申し訳なさ、が皆無。
あれか?
『二人は、出会うのが、遅すぎただけ。』
思考なのか、神子様は。
ん?
神子様は、公爵と一緒に魔王討伐をしている。
オレが来る前に魔王は討伐されている。
神子様は、オレより先に公爵と出会っているぞ?
ということは。
『側にいすぎて、側にいるのが、当たり前になっているから、誰かに取られる心配をしていなかった。
気持ちを伝えなくても、二人は同じ気持ちと思っていたのに、後から出てきたオレが掻っ攫っていって、気がついた。
気持ちが伝わっていなかった。
取り返さないと。』
系?
糟糠の妻?系じゃないよなー。
糟糠の妻系だと、周りが、ぽっと出のオレの敵にまわる。
敵に?
オレ、公爵に連れてこられてから、周りに敵しかいない状態じゃなかったか?
公爵家の使用人は、オレを客扱いしていたけれど。
公爵の友人とか、公爵の婚約者候補とか、教育係とか。
まさか。
糟糠の妻が、正解だったりする?
考えても、仕方ないな。
うん。
問題は一つ。
浮気者と浮気相手がいたら、神子様が憎むのは浮気相手。
腐れ縁の相手に、恋人が出来たら、腐れ縁の相手の恋人に憎しみを募らせる。
オレ、王都に戻ってきたくなかったなー。
王都に、というか、神子様の目の届く範囲にいたくないなー。
はあ。
気が重い。
旅に出たい。
オレが、王都の公爵家の屋敷の玄関から出られない問題も、未解決のまま。
ヤグルマさんは、公爵が原因っぽい話をしていた。
問題を解決して、軟禁を解除する流れにもっていけば、不自然じゃない。
王都でも、公爵と話し合いするのか、オレは。
成果が出るといいなー。
188
あなたにおすすめの小説
異世界転移してΩになった俺(アラフォーリーマン)、庇護欲高めα騎士に身も心も溶かされる
ヨドミ
BL
もし生まれ変わったら、俺は思う存分甘やかされたい――。
アラフォーリーマン(社畜)である福沢裕介は、通勤途中、事故により異世界へ転移してしまう。
異世界ローリア王国皇太子の花嫁として召喚されたが、転移して早々、【災厄のΩ】と告げられ殺されそうになる。
【災厄のΩ】、それは複数のαを番にすることができるΩのことだった――。
αがハーレムを築くのが常識とされる異世界では、【災厄のΩ】は忌むべき存在。
負の烙印を押された裕介は、間一髪、銀髪のα騎士ジェイドに助けられ、彼の庇護のもと、騎士団施設で居候することに。
「αがΩを守るのは当然だ」とジェイドは裕介の世話を焼くようになって――。
庇護欲高め騎士(α)と甘やかされたいけどプライドが邪魔をして素直になれない中年リーマン(Ω)のすれ違いラブファンタジー。
※Rシーンには♡マークをつけます。
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
氷の騎士団長様の悪妻とかイヤなので離婚しようと思います
黄金
BL
目が覚めたら、ここは読んでたBL漫画の世界。冷静冷淡な氷の騎士団長様の妻になっていた。しかもその役は名前も出ない悪妻!
だったら離婚したい!
ユンネの野望は離婚、漫画の主人公を見たい、という二つの事。
お供に老侍従ソマルデを伴って、主人公がいる王宮に向かうのだった。
本編61話まで
番外編 なんか長くなってます。お付き合い下されば幸いです。
※細目キャラが好きなので書いてます。
多くの方に読んでいただき嬉しいです。
コメント、お気に入り、しおり、イイねを沢山有難うございます。
転生したらスパダリに囲われていました……え、違う?
米山のら
BL
王子悠里。苗字のせいで“王子さま”と呼ばれ、距離を置かれてきた、ぼっち新社会人。
ストーカーに追われ、車に轢かれ――気づけば豪奢なベッドで目を覚ましていた。
隣にいたのは、氷の騎士団長であり第二王子でもある、美しきスパダリ。
「愛してるよ、私のユリタン」
そう言って差し出されたのは、彼色の婚約指輪。
“最難関ルート”と恐れられる、甘さと狂気の狭間に立つ騎士団長。
成功すれば溺愛一直線、けれど一歩誤れば廃人コース。
怖いほどの執着と、甘すぎる愛の狭間で――悠里の新しい人生は、いったいどこへ向かうのか?
……え、違う?
転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした
リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。
仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!
原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!
だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。
「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」
死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?
原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に!
見どころ
・転生
・主従
・推しである原作悪役に溺愛される
・前世の経験と知識を活かす
・政治的な駆け引きとバトル要素(少し)
・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程)
・黒猫もふもふ
番外編では。
・もふもふ獣人化
・切ない裏側
・少年時代
などなど
最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。
2度目の異世界移転。あの時の少年がいい歳になっていて殺気立って睨んでくるんだけど。
ありま氷炎
BL
高校一年の時、道路陥没の事故に巻き込まれ、三日間記憶がない。
異世界転移した記憶はあるんだけど、夢だと思っていた。
二年後、どうやら異世界転移してしまったらしい。
しかもこれは二度目で、あれは夢ではなかったようだった。
再会した少年はすっかりいい歳になっていて、殺気立って睨んでくるんだけど。
【完結済】虚な森の主と、世界から逃げた僕〜転生したら甘すぎる独占欲に囚われました〜
キノア9g
BL
「貴族の僕が異世界で出会ったのは、愛が重すぎる“森の主”でした。」
平凡なサラリーマンだった蓮は、気づけばひ弱で美しい貴族の青年として異世界に転生していた。しかし、待ち受けていたのは窮屈な貴族社会と、政略結婚という重すぎる現実。
そんな日常から逃げ出すように迷い込んだ「禁忌の森」で、蓮が出会ったのは──全てが虚ろで無感情な“森の主”ゼルフィードだった。
彼の周囲は生命を吸い尽くし、あらゆるものを枯らすという。だけど、蓮だけはなぜかゼルフィードの影響を受けない、唯一の存在。
「お前だけが、俺の世界に色をくれた」
蓮の存在が、ゼルフィードにとってかけがえのない「特異点」だと気づいた瞬間、無感情だった主の瞳に、激しいまでの独占欲と溺愛が宿る。
甘く、そしてどこまでも深い溺愛に包まれる、異世界ファンタジー
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる