《本編 完結 続編 完結》29歳、異世界人になっていました。日本に帰りたいのに、年下の英雄公爵に溺愛されています。

かざみはら まなか

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第5章 いつになったら、日本に帰れますか?

62.神子様に夫を取られることが、不安なわけじゃありません、オレは。公爵は『妻を不安がらせないため、神子様とは距離をとる』と言っていますが。

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オレと公爵は、王都の公爵家の屋敷に戻ってきた。

公爵領での、神子様についての話し合いは、空振りに終わった。

オレは、なんの情報も得られなかった。

本当に、もう、なんなんだ。

公爵は、以下の三つの台詞を繰り返すばかり。
『誤解だ。』
『神子様とは、何ともないんだ。』
『私が愛しているのは、ヒサツグだけ。』

浮気者の常套句ばかり並べて、正妻のオレが納得するとでも?

腹を立てていたから、現場もおさえているのに、誰が引き下がるか!と、オレは強気対応をしていた。

最終的に、オレが根負けした。

オレが、
『分かった。』
と言うまで、公爵は、常套句三つをエンドレス。

最後の方、公爵は、オレの足元に跪いて。
『私のヒサツグが、私を信じてくれるまで、このままでいる。』
とふざけたことを言って、本当に立ち上がろうとしなかった。

その根性は、別の機会にとっておいてほしかった。

にっちもさっちもいかなくなって、オレは、『分かった。』と言うしかなかったよ。

ふっ。

浮気者が、正妻に発揮する知能の高さの、常ならざることよ、とか言いたくなるよね?

オレの立場はさ。

夫の浮気に怒りながら、浮気者の夫から、離れられない。
なぜなら、夫が帰ってくるのは、正妻がいる家だから。
正妻は、どんと構えて待っている、みたいな、妻の役どころになってしまいそうなんだけど。

違うからな!

オレは、正妻の余裕とかじゃないからな!

神子様に夫を取られるんじゃないかと、オレが不安がっているという結論に達した公爵。

『私のヒサツグ。王都に、私と一緒に戻ってほしい。この先、私は、私のヒサツグを不安にさせない、と約束する。』
と誓われたオレ。

駄目押しのように、公爵はオレに訴えた。
『今までみたいに、神子様の近くにはいないようにする。
神子様とは、距離をとる。
どうか私を信じてほしい。』

誓いは、素晴らしいけれど、オレが欲しいのは、誓いじゃなくて、情報なんだよ。

いや、不安がっているというか、不安なんだよ。

神子様の情報がなさすぎて。

神子様がオレの敵、じゃないんだよなー。

オレには、神子様と敵対するメリットなんか、ないからね?

逆に、神子様には、オレに敵対する理由がある。

オレは、神子様の敵なんだよなー。


オレは、神子様が好きじゃない。

でも。
日本に帰るために必要だから。
神子様が、オレに危害を加える心配がなければ、神託通りに、神子様と公爵をくっつけて、身を引く。

その予定でいるんだけど。

オレが身を引く前に、乗り込んできて、早く別れろと言ってくる人だから、何かされないか、不安だ。

神子様は、オレに対する申し訳なさ、が皆無。

あれか?

『二人は、出会うのが、遅すぎただけ。』
思考なのか、神子様は。

ん?

神子様は、公爵と一緒に魔王討伐をしている。

オレが来る前に魔王は討伐されている。

神子様は、オレより先に公爵と出会っているぞ?


ということは。

『側にいすぎて、側にいるのが、当たり前になっているから、誰かに取られる心配をしていなかった。 
気持ちを伝えなくても、二人は同じ気持ちと思っていたのに、後から出てきたオレが掻っ攫っていって、気がついた。
気持ちが伝わっていなかった。
取り返さないと。』
系?

糟糠の妻?系じゃないよなー。

糟糠の妻系だと、周りが、ぽっと出のオレの敵にまわる。

敵に?

オレ、公爵に連れてこられてから、周りに敵しかいない状態じゃなかったか?

公爵家の使用人は、オレを客扱いしていたけれど。

公爵の友人とか、公爵の婚約者候補とか、教育係とか。

まさか。
糟糠の妻が、正解だったりする?

考えても、仕方ないな。

うん。

問題は一つ。

浮気者と浮気相手がいたら、神子様が憎むのは浮気相手。

腐れ縁の相手に、恋人が出来たら、腐れ縁の相手の恋人に憎しみを募らせる。

オレ、王都に戻ってきたくなかったなー。

王都に、というか、神子様の目の届く範囲にいたくないなー。

はあ。
気が重い。

旅に出たい。

オレが、王都の公爵家の屋敷の玄関から出られない問題も、未解決のまま。

ヤグルマさんは、公爵が原因っぽい話をしていた。

問題を解決して、軟禁を解除する流れにもっていけば、不自然じゃない。

王都でも、公爵と話し合いするのか、オレは。

成果が出るといいなー。
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