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第9章 オレはケレメイン大公国の大公妃殿下です。
677.オレは、ケレメイン家とケレメイン大公国の国民が、三つに分断されたままでいいとは思いません。再び分裂しないためには、と考えていました。
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ケレメイン家内の少数派であるヒサツグ派は、ケレメイン家とケレメイン大公国の実権を握っている。
ヒサツグ派は、中立派が中立の立場を取らずに、ヒサツグ派になっていれば、ケレメイン大公国とケレメイン家とクロードとオレを守る苦労はましだったはずだという思いを中立派に向けている。
オレももっともだと思う。
ヒサツグ派は、サーバル王国のシガラキノ王女殿下をクロードの伴侶にと担ぎ出した、シガラキノ王女殿下を大公妃に派よりも、中立派に対して憤懣やる方なしになっている。
ヒサツグ派にとって、中立派は、保身にかまけた卑怯者。
サーバル王国のシガラキノ王女殿下を担ぎ出し、サーバル王国の手下になったと公言する方が、どれだけ潔く感じるか。
中立派は、国を割らないためにやむなく中立派になったのだと主張するが、国を割らないためには、中立派など作らず、ヒサツグ派になっていれば、国を混乱させることはなかった。
オレも、オレと一緒に、ケレメイン大公国を侵略から守ろうと奔走した人達も。
中立派や、サーバル王国のシガラキノ王女殿下を大公妃に派のしたことで、多大な迷惑をかけられたり、命の危機にさらされたりし続けたから、どちらにもいい感情を持っていない。
迷惑をかけられ続けたヒサツグ派が勝利をおさめたので、勝者の当然の権利として、オレには、中立派とサーバル王国のシガラキノ王女殿下を大公妃に派を切り捨てたり、困窮していくのを黙って見捨てたり、敗北者に罰を与えて見せしめにしたりする選択肢があった。
オレがそれらの選択肢を選ぶのは、勝者として当然の権利だったけれど。
オレは、勝者としての権利を行使しなかった。
ケレメイン家の領民が、思慮深くケレメイン家に忠誠を誓えていたら、サーバル王国の侵略は進まなかったのは確かだ。
でも。
そもそもの話。
ケレメイン公爵領民が、自分達はケレメイン家をどうにかできる立場だと思い違いして、サーバル王国の侵略に手を貸していたのは、領民だけが悪かったわけじゃないとオレは思っている。
ケレメイン公爵家時代のケレメイン公爵領内にサーバル王国が入り込む余地が出来ていたことが、サーバル王国による侵略を恐怖する気持ちや警戒心を麻痺させることに繋がった。
ケレメイン公爵家の先代公爵夫妻は、マウンテン王家の失点を押し付けられたといえど、サーバル王国へは政治的配慮を見せていた。
先代ケレメイン公爵夫妻が、ケレメイン公爵領民に対して、分かりやすく、サーバル王国は敵だ、と示していたら?
ケレメイン公爵領民は、警戒心を持ち続けたとは思う。
ただ。
領民に警戒心はあっても、領民の生活を守れなかった時点で、領民からの忠誠は期待できないものになっていた。
魔王による消失の一番の混乱期に、ケレメイン公爵だったクロードは、当時のマウンテン王国の国王陛下から国の仕事に忙殺するように仕向けられて、ケレメイン公爵領内の問題を把握して指示を出すことができなかった。
ケレメイン公爵領内で、クロードの決裁がなくて何も進まない状態が続いた結果、クロードの決裁なしで乗り切る方法が編み出された。
それは、サーバル王国のシガラキノ王女殿下の資金援助を受けての立て直しだった。
魔王による消失の後、先代ケレメイン公爵夫妻がいなくなり、ケレメイン公爵領内でサーバル王国に配慮の差配をしていた人がいなくなった。
この場にいるサーバル王国のシガラキノ王女殿下を大公妃に派は、サーバル王国から渡されるお金に裏があることを承知で受け取っていた人達。
ことを荒立てるよりも生活のためになあなあでやり過ごすことを選んだ中立派の文官。
こういった人達がケレメイン公爵家の家人と領民に増えたのは、ケレメイン家の主人であるクロードと主人に近い上層部が、領民の人心を留められなかったことも大きい。
ケレメイン家の主人クロードと主人に近い人達は、ケレメイン公爵領に対して、無関心でいたわけではない。
でも。
マウンテン王国のケレメイン公爵家である以上、サーバル王国とマウンテン王国の決め事に対して、マウンテン王家に楯突くことにしかならない言い分や警告をケレメイン公爵領民へ公に発することは難しかった。
クロードの周りにいて、先代ケレメイン公爵夫妻にも近かった人達は。
英雄になったクロードを敵視するマウンテン王国の当時の国王陛下からクロードがなぶられないように立ち回ったり、マウンテン王家にケレメイン公爵家が利用されて潰されないようにするという仕事があり。
クロードとケレメイン公爵家が危ぶまれる状態を回避すること以上に手が回らず、ケレメイン公爵領内への対応は遅れに遅れた。
クロードに近い人達は、理由が理由だけに、クロードがケレメイン公爵領の復興に携われていない本当の理由を伝えることができなかった。
伝えていたら、その話が漏れて、クロードに近い人達は不敬罪で縛り首にされていたかもしれない。
マウンテン王家の先々代国王陛下と先代女王陛下との確執の余波をもろかぶりしたケレメイン公爵家は、魔王による消失により、ケレメイン公爵となったクロードが先々代国王陛下の息子である先代国王陛下に英雄になったことを一方的に恨まれて、潰されそうになっていたところを持ちこたえた。
持ちこたえたケレメイン公爵家が再び潰れそうになる事態は回避したい。
中立派とサーバル王国のシガラキノ王女殿下を大公妃に派にきっちりと責任を取らせて、ヒサツグ派の溜飲を下げさせることと、中立派とサーバル王国のシガラキノ王女殿下を大公妃に派の傲慢さを消すことを両立させる作戦をオレは考えた。
ヒサツグ派は、中立派が中立の立場を取らずに、ヒサツグ派になっていれば、ケレメイン大公国とケレメイン家とクロードとオレを守る苦労はましだったはずだという思いを中立派に向けている。
オレももっともだと思う。
ヒサツグ派は、サーバル王国のシガラキノ王女殿下をクロードの伴侶にと担ぎ出した、シガラキノ王女殿下を大公妃に派よりも、中立派に対して憤懣やる方なしになっている。
ヒサツグ派にとって、中立派は、保身にかまけた卑怯者。
サーバル王国のシガラキノ王女殿下を担ぎ出し、サーバル王国の手下になったと公言する方が、どれだけ潔く感じるか。
中立派は、国を割らないためにやむなく中立派になったのだと主張するが、国を割らないためには、中立派など作らず、ヒサツグ派になっていれば、国を混乱させることはなかった。
オレも、オレと一緒に、ケレメイン大公国を侵略から守ろうと奔走した人達も。
中立派や、サーバル王国のシガラキノ王女殿下を大公妃に派のしたことで、多大な迷惑をかけられたり、命の危機にさらされたりし続けたから、どちらにもいい感情を持っていない。
迷惑をかけられ続けたヒサツグ派が勝利をおさめたので、勝者の当然の権利として、オレには、中立派とサーバル王国のシガラキノ王女殿下を大公妃に派を切り捨てたり、困窮していくのを黙って見捨てたり、敗北者に罰を与えて見せしめにしたりする選択肢があった。
オレがそれらの選択肢を選ぶのは、勝者として当然の権利だったけれど。
オレは、勝者としての権利を行使しなかった。
ケレメイン家の領民が、思慮深くケレメイン家に忠誠を誓えていたら、サーバル王国の侵略は進まなかったのは確かだ。
でも。
そもそもの話。
ケレメイン公爵領民が、自分達はケレメイン家をどうにかできる立場だと思い違いして、サーバル王国の侵略に手を貸していたのは、領民だけが悪かったわけじゃないとオレは思っている。
ケレメイン公爵家時代のケレメイン公爵領内にサーバル王国が入り込む余地が出来ていたことが、サーバル王国による侵略を恐怖する気持ちや警戒心を麻痺させることに繋がった。
ケレメイン公爵家の先代公爵夫妻は、マウンテン王家の失点を押し付けられたといえど、サーバル王国へは政治的配慮を見せていた。
先代ケレメイン公爵夫妻が、ケレメイン公爵領民に対して、分かりやすく、サーバル王国は敵だ、と示していたら?
ケレメイン公爵領民は、警戒心を持ち続けたとは思う。
ただ。
領民に警戒心はあっても、領民の生活を守れなかった時点で、領民からの忠誠は期待できないものになっていた。
魔王による消失の一番の混乱期に、ケレメイン公爵だったクロードは、当時のマウンテン王国の国王陛下から国の仕事に忙殺するように仕向けられて、ケレメイン公爵領内の問題を把握して指示を出すことができなかった。
ケレメイン公爵領内で、クロードの決裁がなくて何も進まない状態が続いた結果、クロードの決裁なしで乗り切る方法が編み出された。
それは、サーバル王国のシガラキノ王女殿下の資金援助を受けての立て直しだった。
魔王による消失の後、先代ケレメイン公爵夫妻がいなくなり、ケレメイン公爵領内でサーバル王国に配慮の差配をしていた人がいなくなった。
この場にいるサーバル王国のシガラキノ王女殿下を大公妃に派は、サーバル王国から渡されるお金に裏があることを承知で受け取っていた人達。
ことを荒立てるよりも生活のためになあなあでやり過ごすことを選んだ中立派の文官。
こういった人達がケレメイン公爵家の家人と領民に増えたのは、ケレメイン家の主人であるクロードと主人に近い上層部が、領民の人心を留められなかったことも大きい。
ケレメイン家の主人クロードと主人に近い人達は、ケレメイン公爵領に対して、無関心でいたわけではない。
でも。
マウンテン王国のケレメイン公爵家である以上、サーバル王国とマウンテン王国の決め事に対して、マウンテン王家に楯突くことにしかならない言い分や警告をケレメイン公爵領民へ公に発することは難しかった。
クロードの周りにいて、先代ケレメイン公爵夫妻にも近かった人達は。
英雄になったクロードを敵視するマウンテン王国の当時の国王陛下からクロードがなぶられないように立ち回ったり、マウンテン王家にケレメイン公爵家が利用されて潰されないようにするという仕事があり。
クロードとケレメイン公爵家が危ぶまれる状態を回避すること以上に手が回らず、ケレメイン公爵領内への対応は遅れに遅れた。
クロードに近い人達は、理由が理由だけに、クロードがケレメイン公爵領の復興に携われていない本当の理由を伝えることができなかった。
伝えていたら、その話が漏れて、クロードに近い人達は不敬罪で縛り首にされていたかもしれない。
マウンテン王家の先々代国王陛下と先代女王陛下との確執の余波をもろかぶりしたケレメイン公爵家は、魔王による消失により、ケレメイン公爵となったクロードが先々代国王陛下の息子である先代国王陛下に英雄になったことを一方的に恨まれて、潰されそうになっていたところを持ちこたえた。
持ちこたえたケレメイン公爵家が再び潰れそうになる事態は回避したい。
中立派とサーバル王国のシガラキノ王女殿下を大公妃に派にきっちりと責任を取らせて、ヒサツグ派の溜飲を下げさせることと、中立派とサーバル王国のシガラキノ王女殿下を大公妃に派の傲慢さを消すことを両立させる作戦をオレは考えた。
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