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取り合う手と手
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深く、ゆっくりと息を吐いた。
つけられてる。
これまで全然こういうことはなかったのに…
痩せた途端にこれか。
太った私を知ってるせいか、学校ではダイエット成功で騒がれはしたものの男子からアプローチされることもなく、女子もむしろダイエット法を教えてくれと痩身神と崇められたくらいにして、心配していたことはなく過ぎた。
でも外ではそうもいかないようだ。
さすが自他共に認める美女(a.k.a.元デブ、中身残念)!
最寄駅を降りて中通りに入ったところで、背後を歩く男に気付いた。
有り難くないことに変質者の視線ってなんかわかるんだよね。慣れって怖い。
走って逃げてもいいけど…迎撃する?
もう少し人目の多いところで気付けたら良かったなぁ。
とりあえず舌打ちをひとつして、こっそり携帯を取り出す。
コール音が途切れてから、後ろの男に気づかれないよう小声で話しかけた。
「あ、お兄ちゃん?いま帰り道もなんだけど、なんかつけられてるみたいなんだよね。………と、え?あれ、この携帯、兄の…あ、最寄駅から中通りに入ったとこ、です。あ、近くにいるんですか?じゃあその通りまで走ります。」
ビ…ッビックリした!
なんでお兄ちゃんの携帯に会長が出るの⁉︎
ていうか会うの久々だけど それどころじゃない!
私の早歩きに合わせて追いかける速度を上げてくる変質者。
何あの変質者、足速いんですけど!
あーもう!!
角を曲がったところで、追いつかれ腕を掴まれる。
強い力で、ふりほどけない。
「……ッ!!!」
『お嬢ちゃん、お兄さんと遊ばない?』
幼少期の記憶が頭をかすめる。
足元から頭の上までぞくぞく寒気が走り、思わず叫ぶ。
「ゃ…いやーーーっ!離せぇー!」
「……さくらさん!!」
向こうから走ってくるのは………会長?
いつも優雅なのに。
あんなに取り乱してる姿初めて見た。
変質者は私の腕を離し、そのまま会長とは逆方向に逃げ出す。
ハッと我に帰った私は速攻で変質者を追う。
「…!待ちなさい!!」
先ほど襲おうとした女子高生に逆に腕を掴まれ、驚いた男は「ヒィッ!」と怯えた声を出したけど、んなもん知らん!
「うらぁッ!」
ずっだァァんッ!!!
見事、大外刈りを決めたのだった。
「ふぅ…逃がすわけないでしょーが!」
伸びてる男の傍で立ち上がって埃を払う。
近くまで来た会長に笑顔を向ける。
「会長!来てくれてありが「ブフッ!」」
ん?
堪えきれないというように会長が声を出して笑い始めた。
「悲鳴上げたと思ったら逃げた犯人捕まえて大外刈り決めるって……ふ…っはははは!ほんと強すぎるよ」
こんな風に笑うこともあるんだ、とまじまじ見つめていると、熱のこもった瞳で見つめ返される。
「さくらさん…どんな姿でも、君は君なんだね。儚く消えてしまうことなんてない」
何のこと?
軽くそう返したいけど、会長の真剣な瞳の前では憚られ、黙り込む。
「改めて…早坂さくらさん、僕と結婚してください」
あの時と同じく跪いて手を取って。
でもあの時と違うのは、私も会長も、「お互いの本当の姿」を見ていることだ。
だけど交際経験すらない私は、うまく素直になれなくて。
「…考えておきます」
これが、精一杯。
この後私たちがどうなったかは、また別のお話。
つけられてる。
これまで全然こういうことはなかったのに…
痩せた途端にこれか。
太った私を知ってるせいか、学校ではダイエット成功で騒がれはしたものの男子からアプローチされることもなく、女子もむしろダイエット法を教えてくれと痩身神と崇められたくらいにして、心配していたことはなく過ぎた。
でも外ではそうもいかないようだ。
さすが自他共に認める美女(a.k.a.元デブ、中身残念)!
最寄駅を降りて中通りに入ったところで、背後を歩く男に気付いた。
有り難くないことに変質者の視線ってなんかわかるんだよね。慣れって怖い。
走って逃げてもいいけど…迎撃する?
もう少し人目の多いところで気付けたら良かったなぁ。
とりあえず舌打ちをひとつして、こっそり携帯を取り出す。
コール音が途切れてから、後ろの男に気づかれないよう小声で話しかけた。
「あ、お兄ちゃん?いま帰り道もなんだけど、なんかつけられてるみたいなんだよね。………と、え?あれ、この携帯、兄の…あ、最寄駅から中通りに入ったとこ、です。あ、近くにいるんですか?じゃあその通りまで走ります。」
ビ…ッビックリした!
なんでお兄ちゃんの携帯に会長が出るの⁉︎
ていうか会うの久々だけど それどころじゃない!
私の早歩きに合わせて追いかける速度を上げてくる変質者。
何あの変質者、足速いんですけど!
あーもう!!
角を曲がったところで、追いつかれ腕を掴まれる。
強い力で、ふりほどけない。
「……ッ!!!」
『お嬢ちゃん、お兄さんと遊ばない?』
幼少期の記憶が頭をかすめる。
足元から頭の上までぞくぞく寒気が走り、思わず叫ぶ。
「ゃ…いやーーーっ!離せぇー!」
「……さくらさん!!」
向こうから走ってくるのは………会長?
いつも優雅なのに。
あんなに取り乱してる姿初めて見た。
変質者は私の腕を離し、そのまま会長とは逆方向に逃げ出す。
ハッと我に帰った私は速攻で変質者を追う。
「…!待ちなさい!!」
先ほど襲おうとした女子高生に逆に腕を掴まれ、驚いた男は「ヒィッ!」と怯えた声を出したけど、んなもん知らん!
「うらぁッ!」
ずっだァァんッ!!!
見事、大外刈りを決めたのだった。
「ふぅ…逃がすわけないでしょーが!」
伸びてる男の傍で立ち上がって埃を払う。
近くまで来た会長に笑顔を向ける。
「会長!来てくれてありが「ブフッ!」」
ん?
堪えきれないというように会長が声を出して笑い始めた。
「悲鳴上げたと思ったら逃げた犯人捕まえて大外刈り決めるって……ふ…っはははは!ほんと強すぎるよ」
こんな風に笑うこともあるんだ、とまじまじ見つめていると、熱のこもった瞳で見つめ返される。
「さくらさん…どんな姿でも、君は君なんだね。儚く消えてしまうことなんてない」
何のこと?
軽くそう返したいけど、会長の真剣な瞳の前では憚られ、黙り込む。
「改めて…早坂さくらさん、僕と結婚してください」
あの時と同じく跪いて手を取って。
でもあの時と違うのは、私も会長も、「お互いの本当の姿」を見ていることだ。
だけど交際経験すらない私は、うまく素直になれなくて。
「…考えておきます」
これが、精一杯。
この後私たちがどうなったかは、また別のお話。
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