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本編
エピローグ
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あゆみの家に戻ると、あゆみが笑顔で迎えてくれた。
冬彦は笑う。
「まだ俺、何も言ってないけど」
「だって、こんな顔してないもん。仲直りできたんでしょ?」
あゆみが渋面を作って見せる。坂下との電話の後はそんな顔をしていたのかもしれない、と思い出して気恥ずかしくなった。
「あゆみが期待するほどの成果ではないと思うけどね……」
冬彦は言いながら、あゆみが開けた間を入っていく。
あゆみが冬彦を見上げてまばたきした。
「とりあえず、お茶でも飲もっか」
冬彦が微笑むと、あゆみは首を傾げて頷いた。
* * *
お茶を飲みながらおおかた様子を話し終えると、あゆみはふぅんとあいづちを打った。
「いろんな形があるんだね、親子って」
知ってたけど、知らなかった。と、あゆみはいつもと変わらないまっすぐな目で冬彦を見つめる。
「……冬まで、どうするの?」
「んー」
冬彦は後ろに手をついてあごを上げ、上を見上げた。
ふと笑って、あゆみに視線を戻す。
「一緒に住むか」
「えっ」
突然の提案に、あゆみの肩がぴくりと上がった。
冬彦は笑う。
「えっ? 駄目?」
あゆみの反応は想定通りだったのだが、心外そうに返してみる。じりじりと近づいていく冬彦に、あゆみは目をさまよわせた。
「だ、だって。まだご両親、認めてないんでしょ」
「好きにしろって言ってたから、好きにしていいんだと思うよ」
「そ、そんな」
「だって、好きにしろなんて言われたことないもん」
息子の冬彦だからこそ汲み取れることだが、恐らく突き放すことこそが、両親が示せる精一杯の受容だったのだ。
冬彦はそう察していた。
戸惑っているあゆみの視線を受け、冬彦はにこりと微笑んでその頬に手を伸ばす。
「ーーでも、さしあたり……」
そっとその頬を撫でると、頬にキスをした。
「親との正面対決に疲れたから、あゆみを補充」
「えっーーちょ、待っーー」
「待たなーい。がんばったからご褒美」
冬彦は軽々とあゆみを抱き上げ、ベッドへと連れていく。
あゆみはうろたえてじたばたと暴れた。
「お、小野田くん!」
「ふ、ゆ、ひ、こ」
「ふ、冬彦くーーぁっ」
ベッドに下ろしたあゆみの服の裾から手を差し入れ、直接肌に触れると、あゆみが声を漏らした。
顔を赤らめたあゆみの顔を目にして、冬彦の口の端が自然と引き上がる。
「可愛い、あゆみ」
呟いて、あゆみの耳元に口を寄せた。
「ずっと、側にいてね」
あゆみは観念したようにため息をついて、冬彦の首に腕を回した。
二人の唇が、静かに重なる。
「……そっちこそ」
あゆみが潤んだ瞳で冬彦を見上げた。
冬彦は微笑み、首もとに鼻先を寄せる。
「うん。いるよ……」
たくさん愛してあげるから、あゆみも愛してね。
冬彦の囁きに、あゆみは耳まで真っ赤になった。
その顔に冬彦は微笑む。
何があっても。
側にいる。幸せにする。
必ず。
心中で誓うと、あゆみの頬にそっと指を這わせた。
FIN.
*****
ご覧くださりありがとうございました!
本編はこれにて完結ですが、明日からは番外編と後日談を公開します。
もしよければ引き続きお付き合いくださいませ~
冬彦は笑う。
「まだ俺、何も言ってないけど」
「だって、こんな顔してないもん。仲直りできたんでしょ?」
あゆみが渋面を作って見せる。坂下との電話の後はそんな顔をしていたのかもしれない、と思い出して気恥ずかしくなった。
「あゆみが期待するほどの成果ではないと思うけどね……」
冬彦は言いながら、あゆみが開けた間を入っていく。
あゆみが冬彦を見上げてまばたきした。
「とりあえず、お茶でも飲もっか」
冬彦が微笑むと、あゆみは首を傾げて頷いた。
* * *
お茶を飲みながらおおかた様子を話し終えると、あゆみはふぅんとあいづちを打った。
「いろんな形があるんだね、親子って」
知ってたけど、知らなかった。と、あゆみはいつもと変わらないまっすぐな目で冬彦を見つめる。
「……冬まで、どうするの?」
「んー」
冬彦は後ろに手をついてあごを上げ、上を見上げた。
ふと笑って、あゆみに視線を戻す。
「一緒に住むか」
「えっ」
突然の提案に、あゆみの肩がぴくりと上がった。
冬彦は笑う。
「えっ? 駄目?」
あゆみの反応は想定通りだったのだが、心外そうに返してみる。じりじりと近づいていく冬彦に、あゆみは目をさまよわせた。
「だ、だって。まだご両親、認めてないんでしょ」
「好きにしろって言ってたから、好きにしていいんだと思うよ」
「そ、そんな」
「だって、好きにしろなんて言われたことないもん」
息子の冬彦だからこそ汲み取れることだが、恐らく突き放すことこそが、両親が示せる精一杯の受容だったのだ。
冬彦はそう察していた。
戸惑っているあゆみの視線を受け、冬彦はにこりと微笑んでその頬に手を伸ばす。
「ーーでも、さしあたり……」
そっとその頬を撫でると、頬にキスをした。
「親との正面対決に疲れたから、あゆみを補充」
「えっーーちょ、待っーー」
「待たなーい。がんばったからご褒美」
冬彦は軽々とあゆみを抱き上げ、ベッドへと連れていく。
あゆみはうろたえてじたばたと暴れた。
「お、小野田くん!」
「ふ、ゆ、ひ、こ」
「ふ、冬彦くーーぁっ」
ベッドに下ろしたあゆみの服の裾から手を差し入れ、直接肌に触れると、あゆみが声を漏らした。
顔を赤らめたあゆみの顔を目にして、冬彦の口の端が自然と引き上がる。
「可愛い、あゆみ」
呟いて、あゆみの耳元に口を寄せた。
「ずっと、側にいてね」
あゆみは観念したようにため息をついて、冬彦の首に腕を回した。
二人の唇が、静かに重なる。
「……そっちこそ」
あゆみが潤んだ瞳で冬彦を見上げた。
冬彦は微笑み、首もとに鼻先を寄せる。
「うん。いるよ……」
たくさん愛してあげるから、あゆみも愛してね。
冬彦の囁きに、あゆみは耳まで真っ赤になった。
その顔に冬彦は微笑む。
何があっても。
側にいる。幸せにする。
必ず。
心中で誓うと、あゆみの頬にそっと指を這わせた。
FIN.
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ご覧くださりありがとうございました!
本編はこれにて完結ですが、明日からは番外編と後日談を公開します。
もしよければ引き続きお付き合いくださいませ~
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