モテ男とデキ女の奥手な恋

松丹子

文字の大きさ
1 / 126
第一章 ちかづく

01 CALLING

しおりを挟む
『隼人が女の子連れてきたのよ!大学のサークルで出会ったんですって。近くの女子大の子よ』
 うきうきと弾む母の声が電話口でそう語ったのは、今年ももう終わろうという頃だった。
 隼人は7つ離れた弟だ。我が弟ながらよくできた奴で、 何をやらせても器用にこなす。
 俺も世間的に決して悪くない大学を出たが、隼人は国内トップのT大卒である。
 この年の差があってよかったと何度思ったことか。両親や、2歳上の姉がベタベタに可愛がっていた。
 大人になって考えてみれば、恐らく隼人ができたのは両親にとって「計算外」だろう。隼人が産まれたのは母が37歳のときだった。
「マジで?早くない?あいつ25だろ」
『早くないわよー。お父さんだって結婚したの27だもの。相手の子同級生だし』
 あんたみたいに遅い方が心配だわ、と、案の定お小言をたれる。
「昨今の男の平均初婚年齢、35だけど」
『あら、そうなの?じゃまだあんたも行き遅れじゃないのね』
 男にその表現はありなのかわからないが、あえてスルーして問う。
「で、どんな子?」
 母はイキイキ話し始めた。
『しっかりしたいい子よ。にこにこして、はきはき答えて。市役所に勤めてるんだって。あんたも誰か紹介してもらいなさいよ』
 また変な方向に話が向かいそうになったところで、電話のキャッチが入る。
「あ、電話きた。悪いけど切るよ。また」
『またって言って、かけてこないくせに』
 母が嘆息しながら言って、じゃあねと電話が切れ、切り替わる。
『Hello?』
 声を聞いて、俺は苦笑した。噂の張本人だ。
 今お前の話を聞いたところだ、と英語で返すと、隼人は笑った。
 隼人は大学在学中にアメリカに留学していた。外資系企業に勤める俺が、ちょうどボストンにいた頃だったので、なにかと便を図ってやったし、母も安心して送り出したようだ。
 英会話を忘れないように、という隼人の希望で、俺との電話は英語だ。
『急なんだけど、明日の午後、時間ある?』
「あるけど。なに、お前のハニーに会わせてくれるの?」
『まあ、そんなとこ』
 隼人の声は晴れ晴れしていた。俺は笑って答える。
「いいよ。野暮用はキャンセルしとく。可愛い弟のフィアンセに会えるチャンスだからな」
 隼人も笑って、Thanks、と短く答える。時間と場所はまたメールする、と言って隼人は電話を切った。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

それは、ホントに不可抗力で。

樹沙都
恋愛
これ以上他人に振り回されるのはまっぴらごめんと一大決意。人生における全ての無駄を排除し、おひとりさまを謳歌する歩夢の前に、ひとりの男が立ちはだかった。 「まさか、夫の顔……を、忘れたとは言わないだろうな? 奥さん」 その婚姻は、天の啓示か、はたまた……ついうっかり、か。 恋に仕事に人間関係にと翻弄されるお人好しオンナ関口歩夢と腹黒大魔王小林尊の攻防戦。 まさにいま、開始のゴングが鳴った。 まあね、所詮、人生は不可抗力でできている。わけよ。とほほっ。

偽装夫婦

詩織
恋愛
付き合って5年になる彼は後輩に横取りされた。 会社も一緒だし行く気がない。 けど、横取りされたからって会社辞めるってアホすぎません?

シンデレラは王子様と離婚することになりました。

及川 桜
恋愛
シンデレラは王子様と結婚して幸せになり・・・ なりませんでした!! 【現代版 シンデレラストーリー】 貧乏OLは、ひょんなことから会社の社長と出会い結婚することになりました。 はたから見れば、王子様に見初められたシンデレラストーリー。 しかしながら、その実態は? 離婚前提の結婚生活。 果たして、シンデレラは無事に王子様と離婚できるのでしょうか。

君に恋していいですか?

櫻井音衣
恋愛
卯月 薫、30歳。 仕事の出来すぎる女。 大食いで大酒飲みでヘビースモーカー。 女としての自信、全くなし。 過去の社内恋愛の苦い経験から、 もう二度と恋愛はしないと決めている。 そんな薫に近付く、同期の笠松 志信。 志信に惹かれて行く気持ちを否定して 『同期以上の事は期待しないで』と 志信を突き放す薫の前に、 かつての恋人・浩樹が現れて……。 こんな社内恋愛は、アリですか?

苦手な冷徹専務が義兄になったかと思ったら極あま顔で迫ってくるんですが、なんででしょう?~偽家族恋愛~

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「こちら、再婚相手の息子の仁さん」 母に紹介され、なにかの間違いだと思った。 だってそこにいたのは、私が敵視している専務だったから。 それだけでもかなりな不安案件なのに。 私の住んでいるマンションに下着泥が出た話題から、さらに。 「そうだ、仁のマンションに引っ越せばいい」 なーんて義父になる人が言い出して。 結局、反対できないまま専務と同居する羽目に。 前途多難な同居生活。 相変わらず専務はなに考えているかわからない。 ……かと思えば。 「兄妹ならするだろ、これくらい」 当たり前のように落とされる、額へのキス。 いったい、どうなってんのー!? 三ツ森涼夏  24歳 大手菓子メーカー『おろち製菓』営業戦略部勤務 背が低く、振り返ったら忘れられるくらい、特徴のない顔がコンプレックス。 小1の時に両親が離婚して以来、母親を支えてきた頑張り屋さん。 たまにその頑張りが空回りすることも? 恋愛、苦手というより、嫌い。 淋しい、をちゃんと言えずにきた人。 × 八雲仁 30歳 大手菓子メーカー『おろち製菓』専務 背が高く、眼鏡のイケメン。 ただし、いつも無表情。 集中すると周りが見えなくなる。 そのことで周囲には誤解を与えがちだが、弁明する気はない。 小さい頃に母親が他界し、それ以来、ひとりで淋しさを抱えてきた人。 ふたりはちゃんと義兄妹になれるのか、それとも……!? ***** 千里専務のその後→『絶対零度の、ハーフ御曹司の愛ブルーの瞳をゲーヲタの私に溶かせとか言っています?……』 ***** 表紙画像 湯弐様 pixiv ID3989101

友達の肩書き

菅井群青
恋愛
琢磨は友達の彼女や元カノや友達の好きな人には絶対に手を出さないと公言している。 私は……どんなに強く思っても友達だ。私はこの位置から動けない。 どうして、こんなにも好きなのに……恋愛のスタートラインに立てないの……。 「よかった、千紘が友達で本当に良かった──」 近くにいるはずなのに遠い背中を見つめることしか出来ない……。そんな二人の関係が変わる出来事が起こる。

【完結】育てた後輩を送り出したらハイスペになって戻ってきました

藤浪保
恋愛
大手IT会社に勤める早苗は会社の歓迎会でかつての後輩の桜木と再会した。酔っ払った桜木を家に送った早苗は押し倒され、キスに翻弄されてそのまま関係を持ってしまう。 次の朝目覚めた早苗は前夜の記憶をなくし、関係を持った事しか覚えていなかった。

明日のために、昨日にサヨナラ(goodbye,hello)

松丹子
恋愛
スパダリな父、優しい長兄、愛想のいい次兄、チャラい従兄に囲まれて、男に抱く理想が高くなってしまった女子高生、橘礼奈。 平凡な自分に見合うフツーな高校生活をエンジョイしようと…思っているはずなのに、幼い頃から抱いていた淡い想いを自覚せざるを得なくなり…… 恋愛、家族愛、友情、部活に進路…… 緩やかでほんのり甘い青春模様。 *関連作品は下記の通りです。単体でお読みいただけるようにしているつもりです(が、ひたすらキャラクターが多いのであまりオススメできません…) ★展開の都合上、礼奈の誕生日は親世代の作品と齟齬があります。一種のパラレルワールドとしてご了承いただければ幸いです。 *関連作品 『神崎くんは残念なイケメン』(香子視点) 『モテ男とデキ女の奥手な恋』(政人視点)  上記二作を読めばキャラクターは押さえられると思います。 (以降、時系列順『物狂ほしや色と情』、『期待ハズレな吉田さん、自由人な前田くん』、『さくやこの』、『爆走織姫はやさぐれ彦星と結ばれたい』、『色ハくれなゐ 情ハ愛』、『初恋旅行に出かけます』)

処理中です...