さくやこの

松丹子

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第三章 さくらさく

エピローグ

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 橘家でのホームパーティーからの帰り道、桜の花が風に舞って腕についた。
「咲也」
 その花びらを手にしながら、私は呼びかける。
「なぁに」
 咲也が変わらず穏やかに応じた。
「毎年、桜を見ようね。一緒に」
 私の声は、弾んでいる。
 二人で行く花見を思い浮かべた。
 彼は彼の好きなお酒を持たせて、私は焼酎とお湯を持って。そうして刻んでいくのだ、私たちの毎日を。毎年をーーおじいちゃんおばあちゃんになるまで。
 そんな月並みな幸せが、楽しみになる日が来るだなんて、思いもしなかった。
「いいけど、翌日に熱、出したりしないでね」
 咲也は困ったような笑顔で言う。
 私はわざとらしく唇を尖らせた。
「いいじゃないよぉ。看病してくれる人もいるし」
「看病させる気満々?」
 咲也が笑う。私も笑った。
「だって、散々心配させたんだからね」
 私が咲也の肩を叩くと、咲也はふわりと笑った。
「心配してくれて、ありがとう」
 私も、おうよ、と答える。
 前を向いた咲也は、不意に言った。
「そういえば、いいの?」
「何が」
「あきちゃんの、お母さん」
 私は咲也の横顔を見やった。
 その視線を、また前に戻す。
 ーーもう、頑なになる必要もないような気がした。
「新婚旅行、としゃれ込むのもいいかもね」
「新婚旅行?」
「九州、温泉たくさんあるよ。ーーでも、期待はしないでね。うちの母」
 咲也は笑った。
「うん。でも、お礼は言わなきゃ」
「何を?」
「あきちゃん、産んでくれてありがとうって」
 私は思わぬ言葉に目をまたたかせた。咲也はその様子にまた笑う。私もつられて笑った。
 和やかに話しながら、私たちは歩いていく。
 二年前と同じ家へ向かって。
 家に着いたら、大きな声で言うんだ。
 ただいま、って。
 そして、おかえり、って。

 ちょっと風変わりな私たちの毎日は、多分人並みに過ぎて行くんだろう。
 そこそこ、苦労もしながら。
 そして、そこそこ、幸せに。
 そうであればいいなとーー
 そう、願っている。

 FIN 

* * *

最後までご覧くださり、ありがとうございました!

 松丹子 拝
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