マイ・リトル・プリンセス

松田丹子(まつだにこ)

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.13 ふたりでひとつ

93 やきもち

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 家に帰ると、ふらつく礼奈を支えてベッドへ向かった。
 二つある部屋はそれぞれの部屋にしてあって、ベッドもそれぞれの部屋にある。生活リズムがズレることもあるやろうから、と思うてのことやけど、礼奈が「寒い」とかなんとか言うて俺のベッドに潜り込んでくることも多いから、一緒に寝ることも多い。
 ――それにしても、こんな酔うなんて珍しいな。
 外ではあんまり飲まんようにせぇよ、てのは兄の悠人も口うるさく言うてて、礼奈も守ってたはずやけど――消防士の悠人はレイプドラッグの案件なんかもリアルに見てるから、心配しとるわけや――今日は度を超しとる感がある。
 電話をしたときにはほとんどしらふみたいやったし、その後の一時間そこそこで相当飲んだっちゅうことやろうか。でも、何で急に?
 小柄で人当たりのいいタイプではあるが、礼奈は意外と勧められても断れるタイプやし、自分の意思もなく飲まされることはないはずや。
 薬でも盛られた? いや、それにしてはすんなり帰してもらえてるし――やっぱり、自分から飲んだとしか思えへん。
 あれこれ思うところはあれど、とりあえず無事家まで戻って来て、それが何よりや。
 詳しいことは明日聞こうとベッドに礼奈を横たえる。帰路の間に当人はもうほとんど眠りの中にいて、くったりと力が抜けていた。

 着替えさせてやった方がええやろうな。とりあえずスーツは脱がせよう。
 手をかけながら、前後不覚に酔った女子を脱がせる、っちゅう状況に妙な罪悪感を覚える。

 いや、でもこれは、仕方ないことや。だいたい俺ら夫婦やし、裸かて見てるわけやし……そうや、風呂にかて一緒に入った仲やもん、この程度のことでぐだぐだ言われることはないはずや。
 それでもなんとなく視線をずらしながら服をくつろげる。
 部屋着に着替えさせようとしたけど礼奈の部屋着がどこなのか分からんで、仕方なく俺のものを持って来ようと立ち上がりかけたとき、礼奈の手に引き留められた。

「……栄太兄」

 途中まで胸元をはだけたワイシャツと、下着だけをまとった礼奈が、ベッドの上から俺を見上げている。
 そのぼんやりとした表情と、いつもの快活な笑顔とのギャップに、ぐん、と下半身が反応した。
 ――いや、あかんやろ。相手酔っ払ってんねんで。ここでやる気だしたらあかんわ。落ち着けムスコよ!
 そりゃ、デビューして一ヶ月そこそこやからな、お前もヤル気に満ち満ちてるんは分かる。この一週間はまた、おあずけ状態やったわけやし、大丈夫やろかって心配もしたし……ちょっとくらいご褒美ほしいなーなんて、思わないわけでもない。――けど、相手は酔っ払ってんねんで!

「……礼奈。部屋着持ってくるから、手……」
「やだ……」

 小さな声が、俺の言葉を遮る。
 礼奈は顔をくしゃくしゃにしてかぶりを振った。

「やだ……行かないで」

 またムスコがぎゅんとなる。
 ――だからあかんって!

「なんや、どうした? また甘えたになったんか」

 笑ってごまかそうと、その手をやんわりつかんで離させようとしたが、礼奈はむしろ俺にしがみついてきた。
 やだ、とまた、吐息が俺のシャツの腹あたりを撫で、腰がぞわりと甘く痺れる。

「……朝子ちゃんのとこなんて……行かないで」

 ……は?

 訳が分からず、礼奈を見下ろした。礼奈は俺のシャツに顔をすりつけるようにして、やだ、とまた繰り返す。

「栄太兄は、私のだもん……誰にも渡さないもん……」

 ぎゅう、と俺の首に抱きついてきたかと思えば、ほとんど泣きながら噛みつくようなキスをしてきた。
 そのまま、力のない身体に引き寄せられ、礼奈の上にのしかかる形になる。
 潤んだ目をした礼奈が俺を見つめた。

「……抱いて」

 囁くような、女の声。
 ――あかん。これは……我慢できへん。

 礼奈の吐息を奪うように、その舌を絡め取る。普通なら気分が悪くなりそうな強いアルコール臭も、礼奈の唾液と混ざり合って、甘く感じた。
 いつもより乱暴に礼奈の服を剥ぎ取り、俺も服を脱ぎ捨てる。礼奈は一瞬たりとも俺から離れたくないというように、首に抱きついてくる。

「礼奈」
「栄太兄……」

 荒い息の中互いを呼び合って、再び唇を重ねる。
 礼奈のベッドで繋がるのは初めてや。小柄な礼奈だけなら違和感なく飲み込むシングルサイズは、俺には少し小さい。俺と礼奈が動くたび、ベッドが小さく軋む音を立てる。それがまた、愛しい人を犯してるような気分にさせて、俺を煽る。
 胸の頂きを口に含んで、手で身体をなで回した。えいたにい、と舌っ足らずな吐息が俺を呼ぶ。礼奈の身体ににじんだ汗をも味わうように、全身に舌を這わせる。指でぬかるみに割って入る。

「ぁ、あ、栄太兄」
「イってええで」
「やだ……やだ」

 くちゅくちゅとたつ水音の中、礼奈が髪を乱してかぶりを振る。俺の肩をぐいっと押したと思えば、ごろんと壁の方へ転がされた。

「やだ……栄太兄と一緒がいい」

 腹の上にまたがった礼奈が、泣き顔で言う。唇にキスをして、俺の高ぶりに手を添えて――え? マジで? そんなん、今までしたこと――
 溶けた礼奈の中に、俺の熱が割り込んでいく。ずぐずぐと音がしそうなくらいにあふれた蜜と、その温度にぐらぐらした。半ば開いた口から、礼奈が「はぁ……ん……」と甘い吐息を漏らす。理性を感じないその表情にゾワゾワして、礼奈の中で屹立が跳ねる。

「あっ、んっ」

 我慢ができなくなって、下から腰を打ち付けた。俺の突き上げに合わせて、礼奈の白い身体がぴくんぴくんと跳ねる。そう大きくはない胸が揺れ、桃色の飾りが上下に跳ねる。
 エロいにしても――エロい。礼奈なのに礼奈やないみたいで、頭の中がぱーんとなる。あかん、また語彙力が飛んでる。

「栄太兄っ……栄太兄っ……!」

 礼奈が俺にしがみついてくる。絶対離さないとでも言いたげに、膣が俺自身を締め付ける。
 俺の脳が本能に溶けていく。礼奈をむさぼるように、欲望を突き立てる。白い世界に、礼奈と二人だけみたいになる。礼奈の体温と吐息と汗の臭いに満たされて――幸せな夢の中に、ふたりで飲み込まれた。
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