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(6)最後の細い糸
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和代はワゴンに荷物を積み込むと、すぐに知り合いのリサイクルショップへと向かうべく運転席に乗り込んだ。
車を出す直前、エンジンをかけた直後に、彼女は窓を開けて孝に聞いてきた。
「ね、亜紀ちゃんの事だけど・・・本当にいいの?」
「何が?」
孝は、内心どきりとしながら聞き返した。
「このまま別れてしまって・・・。孝くんが東京に行ってしまうと、ひょっとしたら、もう二度とやり直せないかもしれない」
「やり直すもなにも・・・もう、完全に別れてしまったですから」
「本当に? もう未練はないの?」
「うん・・・」
嘘をついた。
「亜紀ちゃんも、ひょっとしたら後悔しているかもしれない」
「本人に確かめたんですか?」
「別に。ただ、そんな気がしただけ。・・・でも、私の勘では、孝君と亜紀ちゃんは、私が見てきた中でいちばん、お似合いで素敵なふたりだったのにね」
言いながら和代は、サイドブレーキを解除した。
「自信があったんだけど、私の勘に狂いがあったんだね。とんだお節介をしてごめんなさい」
「別に、いいです」
孝は、下を向いた。
いいですと言ったものの、実のところは、よくなかった。
和代は、今ふたりの間を辛うじて繋ぐ細い糸だった。
なんとか彼女に、亜紀との間を取り成してくれるよう頼み込もうとも思った。
そんな彼の心を見透かしたように、和代は少しの間を置いてから言った。
「亜紀ちゃんに、空港まで見送りに行くように、言ってみようか?」
しかし、孝の口から出てきたのは、やはり本心とは違う言葉だった。
「わざわざそんな事しなくても、いいです」
「そう・・・」
和代は小首をかしげて、眉をひそめた。
そして憂いを顔に浮かべながら、孝を見た。
「じゃぁ、ここでお別れね。東京では最初は不慣れで苦労するかもしれないけど、くじけないで、頑張って。時には、この町に帰ってくるといいよ。とりあえず、向こうに着いたら、連絡ちょうだい」
「分かりました。かずねえも、お元気で」
「うん」
そのままアクセルを踏んで、運転席の窓から軽く手を振りながら和代は行ってしまった。
車を出す直前、エンジンをかけた直後に、彼女は窓を開けて孝に聞いてきた。
「ね、亜紀ちゃんの事だけど・・・本当にいいの?」
「何が?」
孝は、内心どきりとしながら聞き返した。
「このまま別れてしまって・・・。孝くんが東京に行ってしまうと、ひょっとしたら、もう二度とやり直せないかもしれない」
「やり直すもなにも・・・もう、完全に別れてしまったですから」
「本当に? もう未練はないの?」
「うん・・・」
嘘をついた。
「亜紀ちゃんも、ひょっとしたら後悔しているかもしれない」
「本人に確かめたんですか?」
「別に。ただ、そんな気がしただけ。・・・でも、私の勘では、孝君と亜紀ちゃんは、私が見てきた中でいちばん、お似合いで素敵なふたりだったのにね」
言いながら和代は、サイドブレーキを解除した。
「自信があったんだけど、私の勘に狂いがあったんだね。とんだお節介をしてごめんなさい」
「別に、いいです」
孝は、下を向いた。
いいですと言ったものの、実のところは、よくなかった。
和代は、今ふたりの間を辛うじて繋ぐ細い糸だった。
なんとか彼女に、亜紀との間を取り成してくれるよう頼み込もうとも思った。
そんな彼の心を見透かしたように、和代は少しの間を置いてから言った。
「亜紀ちゃんに、空港まで見送りに行くように、言ってみようか?」
しかし、孝の口から出てきたのは、やはり本心とは違う言葉だった。
「わざわざそんな事しなくても、いいです」
「そう・・・」
和代は小首をかしげて、眉をひそめた。
そして憂いを顔に浮かべながら、孝を見た。
「じゃぁ、ここでお別れね。東京では最初は不慣れで苦労するかもしれないけど、くじけないで、頑張って。時には、この町に帰ってくるといいよ。とりあえず、向こうに着いたら、連絡ちょうだい」
「分かりました。かずねえも、お元気で」
「うん」
そのままアクセルを踏んで、運転席の窓から軽く手を振りながら和代は行ってしまった。
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