100のキスをあなたに

菅井群青

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2.ケンカ

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「だから、ごめんってば」

「…………」

 俺の彼女はいつもそうだ。いつも約束を破る。今日もようやく二人の休みが合ったというのに、友達が病欠で代わりに仕事に出ることになったという。およそ一ヶ月ぶりのデートであれもしよう、これもしようと計画を練っていたのに全部パァだ。予約していた店もキャンセルだ……店に申し訳ない。

「別にいいよ、仕方ないし」

 毎回このセリフを自分自身にも言いきかせているが、今回は悲し過ぎて年甲斐もなく拗ねたくなる。

「すぐ帰ってくるから、ね?」

 そう言うと彼女は俺の部屋を出ていく。
 一気に密度の減った部屋は寂しい。俺はそのままベッドへと潜り込み貴重な休みをだらけて過ごすことに決めた。


 気がつくとすっかり日も暮れていた。いつのにまにか窓から夕日の橙の光が差し込む。

「ただいま、起きてる?」

 俺は咄嗟に目を瞑り寝たふりをする。ベッドまで来ると彼女はそっと俺の髪を撫でた。外の冷気をまとった彼女の手は案の定冷たい。

「ごめんね」

 そう言うと彼女は俺に軽くキスをした。離れようとした彼女を引き寄せると覆いかぶさる。俺が起きているとは夢にも思ってなかったようで、慌てて起き上がろうとする。そのまま我慢できず開かれた口にかぶりついた。

 何度も何度も咥えては離すのを繰り返し、彼女の唇が熟れた果実のように赤みを増す。

 うぅん……エロい。

「ご機嫌取り、してくれる?」

「この、野獣──んぁ」

 彼女の言葉の続きは聞くことができなかった。
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