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6話 ミゼリアへの叱責
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「ま、まさかリアン。それが……」
「そうだよドウェインお父様。その女性こそ他でもない彼女。ルフェルミアだ」
そう、全てはこの為に。
私もこの出会いを、この機会を逃さない為にここまで来たんだから。
私はリアン様に愛され、彼からの信頼を全て勝ち取る為に、このお屋敷でヴァン様の婚約者のふりをし続けてきたのだから。
「そ、そうしたら王女様にはなんて言うつもりなの!? 王家の顔に泥を塗ったらグレアンドル家の沽券にかかわるわよ!?」
「だが自分の心に嘘はつけない。そんな不誠実な真似で王女様の傍らにいるよりは、きちんと気持ちを伝えるべきだ。僕は王女様の申し出を何があっても断るつもりだよ」
リアン様は本気だ。
その事はもうこの一ヶ月で十分に理解している。
何故なら私はこのお屋敷で過ごしてきた日々の中で、リアン様から幾度となく愛を囁かれ、身体を求められ続けてきたのだから。もちろん、身体だけは許していないけれど。
「そんな……もしこんな事が王女様に伝わればうちは一体どうなってしまうの……? それに……」
ミゼリアお義母様が愕然とした表情で青ざめている。
「それとこの際だから僕の方からはっきり言わせてもらおう。今後ルフェに意地悪をするのはこの僕が許さない。わかったね、ミゼリアお母様」
「リ、リアン? あなた、一体何のことを言っているのかしら?」
「隠さなくていい。僕やヴァン兄様はとっくに気づいていた。兄様はどういうつもりか知らないが僕はあえて黙っていた。お母様のストレス吐け口にルフェルミアを使っていたのだろう? そんなことは今後一切許さない。侍女たちもよく聞け。例えお母様に命令されたとしてもルフェを虐めるようなことは決して許さない。いいな? 彼女はもう僕のものなのだからね」
ミゼリアお義母様はますます顔面蒼白となり、その命令下にいたと思われる侍女たちの数名も目を背けてバツが悪そうにしている。
すると今度はドウェインお義父様がリアン様に声をかけてきた。
「ミゼリアがルフェルミアを虐めていた、だと? それは本当なのかリアン?」
「ち、違うのよあなた! それはね……」
「少し黙れミゼリア。私はリアンに聞いている」
割って入ってきたミゼリアお義母様を鋭い眼光で瞬時に黙らせるのは、さすがだと私は感心した。
「どうなんだ?」
「お父様は何も知らなかったでしょうが、お母様は毎日ルフェを虐めて、痛ぶった遊んでいました。僕がそれをずっと見てみぬふりをしてきたのは、ルフェがヴァン兄様の婚約者だったからです。ところがヴァン兄様ときたらルフェのことを何ひとつ気にかけず、守ってやらず、庇ってやらず……ルフェはいつもひとりで陰で泣いていたんだッ!」
ダンッと怒り任せにテーブルを強く叩く音が響く。
リアン様は本当にお怒りになられている。この私の為に。
「それは本当なのか、ヴァン」
ドウェイン様は今度はヴァン様に尋ねた。
「……さあ。どうだろうな」
しかし相変わらずヴァン様は多くを語ろうとはしない。その様子にドウェイン様も首を振って半ば呆れている。
「……おい、ミゼリア。何故そんなことをした? ルフェルミアは我が家系の魔力タイプの相性適性の合う希少な存在だと言っていたのはお前だろう?」
「そ、それは……」
言い淀むミゼリアお義母様に対してドウェイン様は溜め息をつきながら、今度は一番近くにいた侍女へと視線を移した。
「おい、エレナ。お前は侍女頭だ。この件についてこの場で一切の嘘偽りなくこれまでのことをありのまま話せ」
エレナと呼ばれた侍女たちのまとめ役にそう言いつけた。
「は、はい。その……ミゼリア奥様は、リアン様の仰られている通りルフェルミア様を虐めておりました」
「エレナ、あなた……!」
「黙れミゼリア!」
「そうだよドウェインお父様。その女性こそ他でもない彼女。ルフェルミアだ」
そう、全てはこの為に。
私もこの出会いを、この機会を逃さない為にここまで来たんだから。
私はリアン様に愛され、彼からの信頼を全て勝ち取る為に、このお屋敷でヴァン様の婚約者のふりをし続けてきたのだから。
「そ、そうしたら王女様にはなんて言うつもりなの!? 王家の顔に泥を塗ったらグレアンドル家の沽券にかかわるわよ!?」
「だが自分の心に嘘はつけない。そんな不誠実な真似で王女様の傍らにいるよりは、きちんと気持ちを伝えるべきだ。僕は王女様の申し出を何があっても断るつもりだよ」
リアン様は本気だ。
その事はもうこの一ヶ月で十分に理解している。
何故なら私はこのお屋敷で過ごしてきた日々の中で、リアン様から幾度となく愛を囁かれ、身体を求められ続けてきたのだから。もちろん、身体だけは許していないけれど。
「そんな……もしこんな事が王女様に伝わればうちは一体どうなってしまうの……? それに……」
ミゼリアお義母様が愕然とした表情で青ざめている。
「それとこの際だから僕の方からはっきり言わせてもらおう。今後ルフェに意地悪をするのはこの僕が許さない。わかったね、ミゼリアお母様」
「リ、リアン? あなた、一体何のことを言っているのかしら?」
「隠さなくていい。僕やヴァン兄様はとっくに気づいていた。兄様はどういうつもりか知らないが僕はあえて黙っていた。お母様のストレス吐け口にルフェルミアを使っていたのだろう? そんなことは今後一切許さない。侍女たちもよく聞け。例えお母様に命令されたとしてもルフェを虐めるようなことは決して許さない。いいな? 彼女はもう僕のものなのだからね」
ミゼリアお義母様はますます顔面蒼白となり、その命令下にいたと思われる侍女たちの数名も目を背けてバツが悪そうにしている。
すると今度はドウェインお義父様がリアン様に声をかけてきた。
「ミゼリアがルフェルミアを虐めていた、だと? それは本当なのかリアン?」
「ち、違うのよあなた! それはね……」
「少し黙れミゼリア。私はリアンに聞いている」
割って入ってきたミゼリアお義母様を鋭い眼光で瞬時に黙らせるのは、さすがだと私は感心した。
「どうなんだ?」
「お父様は何も知らなかったでしょうが、お母様は毎日ルフェを虐めて、痛ぶった遊んでいました。僕がそれをずっと見てみぬふりをしてきたのは、ルフェがヴァン兄様の婚約者だったからです。ところがヴァン兄様ときたらルフェのことを何ひとつ気にかけず、守ってやらず、庇ってやらず……ルフェはいつもひとりで陰で泣いていたんだッ!」
ダンッと怒り任せにテーブルを強く叩く音が響く。
リアン様は本当にお怒りになられている。この私の為に。
「それは本当なのか、ヴァン」
ドウェイン様は今度はヴァン様に尋ねた。
「……さあ。どうだろうな」
しかし相変わらずヴァン様は多くを語ろうとはしない。その様子にドウェイン様も首を振って半ば呆れている。
「……おい、ミゼリア。何故そんなことをした? ルフェルミアは我が家系の魔力タイプの相性適性の合う希少な存在だと言っていたのはお前だろう?」
「そ、それは……」
言い淀むミゼリアお義母様に対してドウェイン様は溜め息をつきながら、今度は一番近くにいた侍女へと視線を移した。
「おい、エレナ。お前は侍女頭だ。この件についてこの場で一切の嘘偽りなくこれまでのことをありのまま話せ」
エレナと呼ばれた侍女たちのまとめ役にそう言いつけた。
「は、はい。その……ミゼリア奥様は、リアン様の仰られている通りルフェルミア様を虐めておりました」
「エレナ、あなた……!」
「黙れミゼリア!」
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