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15話 ヴァンの起こしてきた行動
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にわかには信じ難い。
自分で言うのもなんだが、私はイルドレッド家の中でも優秀な能力の持ち主だ。
それがただの一般人程度にあっさり殺されるはずなんてない。
「例えばだ。お前が先日、ダイニングで俺にグラスを投げつけただろう? あの瞬間にお前の背後にいた侍女が音もなく近寄り、殺意もなく唐突に包丁で背中をめった刺しにしてきたら、いくらお前でも死ぬと思わないか?」
「そ、そりゃあ……っていうかなんで侍女が私を殺そうとしてくるのよ?」
「例えだ。そういう、本来ありえない、全く想定外のところからお前は殺される。しかも決まった日に。だから俺もどうやればお前が助かるのかわからなかった」
何よそれ、何よそれ、何よそれ!
それじゃまるで、私は生きてちゃいけないみたいじゃない……。
「だが、唯一その日にお前が死ぬことを回避できる方法があった。何度も夢の中で試した結果、それが俺との婚約破棄だった。俺との婚約をあのような形で破棄し、お前がリアンと婚約関係になる今のこの状態の場合のみ、お前は今日ここまで生存した。現にそうだろう?」
「な、何言ってるのよ! そんなの結果論じゃない! だいたい婚約破棄は私が誘導してさせたのよ! 私の狙いは元からリアン様だったんだから!」
「違う。そうなるように俺が仕向けた」
「は、はああ!?」
思わず私は布団をはいで、ヴァンの顔を見た。
いい加減心も落ち着いたのか、なんとか普通に彼の顔を窺えた。そんな私の杞憂など知らずに、彼の方は至って真面目な表情で淡々と話を続けていく。
「……ミゼリアお母様が多くの借金を隠れてしていることを知っているか?」
「もちろんよ」
とはいうものの、知ったのはつい先日。
リアン様が私に全てを話してくれた時だ。
どうもミゼリア・グレアンドルが薄暗い犯罪に手を染めている原因は金銭目的なのだとか。
リアン様からの情報によると、実はミゼリアはドウェイン様に内緒で他の貴族たちから多額の借金を背負っているらしく、その返済の為に裏で犯罪まがいのことを行っているらしい。
その情報の断片が我がイルドレッド家にも届き、とある上流貴族から依頼を受けて、今回私が潜入捜査に入ったわけだ。
リアン様の話によればミゼリアは数年前からギャンブルと酒と派手なアクセサリー収集にのめり込み、それに散財するようになって借金を背負ったのだとか。なんとも情けない話である。
「その原因は俺だ」
と、ヴァン・グレアンドルはあっさり告げた。
「は?」
「俺がお母様を酒とギャンブル漬けにした。派手な装飾品が好きなのは元からだが」
「は、え? ちょっとすみません、意味がわからないのですが」
本当に意味がわからなくて思わずこの私も、何故か敬語になってしまいましたわ。
いや、こいつは本当に何を言っているんだ?
「俺は考えた。どうすれば俺とお前が無事婚約を破棄し、そしてお前がリアンに好かれるようになるかを。そして予知夢の中で試した。ミゼリアお母様に軽犯罪を犯させればお前とリアンがくっつく。幾度ものパターンのうち、この方法だけが唯一、お前が今日まで生き残れることが確定していた。だから俺がお母様をギャンブルと酒に溺れさせてやったのだ」
うん。
なんかしれっと凄いこと言ってないこの人?
「あ、あなたね! それじゃああなたのせいでいらぬ犯罪が増えたようなものじゃない! あなたがお義母様を犯罪者に仕立てあげたなんて……!」
「気にするな。こうしないとミゼリアお母様はもっと悪いことをしでかしてた」
「ど、どういうことよ……?」
「ミゼリアお母様は元々気性の激しい人でな。一応侯爵家の娘だったが友人が悪かったのだろう。若い頃は娼婦や美人局みたいなヤクザな仕事で生計を成り立てていたらしい。色々あって運良くグレアンドル家へ嫁入りできて、あれでも相当におとなしくなったのだ」
自分で言うのもなんだが、私はイルドレッド家の中でも優秀な能力の持ち主だ。
それがただの一般人程度にあっさり殺されるはずなんてない。
「例えばだ。お前が先日、ダイニングで俺にグラスを投げつけただろう? あの瞬間にお前の背後にいた侍女が音もなく近寄り、殺意もなく唐突に包丁で背中をめった刺しにしてきたら、いくらお前でも死ぬと思わないか?」
「そ、そりゃあ……っていうかなんで侍女が私を殺そうとしてくるのよ?」
「例えだ。そういう、本来ありえない、全く想定外のところからお前は殺される。しかも決まった日に。だから俺もどうやればお前が助かるのかわからなかった」
何よそれ、何よそれ、何よそれ!
それじゃまるで、私は生きてちゃいけないみたいじゃない……。
「だが、唯一その日にお前が死ぬことを回避できる方法があった。何度も夢の中で試した結果、それが俺との婚約破棄だった。俺との婚約をあのような形で破棄し、お前がリアンと婚約関係になる今のこの状態の場合のみ、お前は今日ここまで生存した。現にそうだろう?」
「な、何言ってるのよ! そんなの結果論じゃない! だいたい婚約破棄は私が誘導してさせたのよ! 私の狙いは元からリアン様だったんだから!」
「違う。そうなるように俺が仕向けた」
「は、はああ!?」
思わず私は布団をはいで、ヴァンの顔を見た。
いい加減心も落ち着いたのか、なんとか普通に彼の顔を窺えた。そんな私の杞憂など知らずに、彼の方は至って真面目な表情で淡々と話を続けていく。
「……ミゼリアお母様が多くの借金を隠れてしていることを知っているか?」
「もちろんよ」
とはいうものの、知ったのはつい先日。
リアン様が私に全てを話してくれた時だ。
どうもミゼリア・グレアンドルが薄暗い犯罪に手を染めている原因は金銭目的なのだとか。
リアン様からの情報によると、実はミゼリアはドウェイン様に内緒で他の貴族たちから多額の借金を背負っているらしく、その返済の為に裏で犯罪まがいのことを行っているらしい。
その情報の断片が我がイルドレッド家にも届き、とある上流貴族から依頼を受けて、今回私が潜入捜査に入ったわけだ。
リアン様の話によればミゼリアは数年前からギャンブルと酒と派手なアクセサリー収集にのめり込み、それに散財するようになって借金を背負ったのだとか。なんとも情けない話である。
「その原因は俺だ」
と、ヴァン・グレアンドルはあっさり告げた。
「は?」
「俺がお母様を酒とギャンブル漬けにした。派手な装飾品が好きなのは元からだが」
「は、え? ちょっとすみません、意味がわからないのですが」
本当に意味がわからなくて思わずこの私も、何故か敬語になってしまいましたわ。
いや、こいつは本当に何を言っているんだ?
「俺は考えた。どうすれば俺とお前が無事婚約を破棄し、そしてお前がリアンに好かれるようになるかを。そして予知夢の中で試した。ミゼリアお母様に軽犯罪を犯させればお前とリアンがくっつく。幾度ものパターンのうち、この方法だけが唯一、お前が今日まで生き残れることが確定していた。だから俺がお母様をギャンブルと酒に溺れさせてやったのだ」
うん。
なんかしれっと凄いこと言ってないこの人?
「あ、あなたね! それじゃああなたのせいでいらぬ犯罪が増えたようなものじゃない! あなたがお義母様を犯罪者に仕立てあげたなんて……!」
「気にするな。こうしないとミゼリアお母様はもっと悪いことをしでかしてた」
「ど、どういうことよ……?」
「ミゼリアお母様は元々気性の激しい人でな。一応侯爵家の娘だったが友人が悪かったのだろう。若い頃は娼婦や美人局みたいなヤクザな仕事で生計を成り立てていたらしい。色々あって運良くグレアンドル家へ嫁入りできて、あれでも相当におとなしくなったのだ」
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