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第一部
2話 魔力提供【マジックサーバー】
成人となる16歳までの二年間、ダリアス様と共に生活しなさいと命じられ、言われた通り一年ほど彼の屋敷で共に過ごしてきたが、ハッキリ言ってうんざりだった。
ダリアス様は非常に乱暴者だし、スケベだし、馬鹿だし、横柄だし、馬鹿だし、性格悪いし、馬鹿だし、スケベだし、何より脂ぎったあのお顔と潰れた豚のような鼻が生理的に受け付けない気持ちの悪い顔をしていたからだ。
その上、人には馬鹿にする癖に本人は貴族の嗜みである上位魔法をたったのひとつしか使えなかったのである。
この世界における貴族の序列は家系の魔力適性値と呼ばれる要素が非常に大きい。
適性値が高い者ほど多くの上位魔法を使え、並の貴族なら子爵程度の者でも16歳にもなればだいたい平均5~6種類くらいの上位魔法が扱えるのだが、ダリアス様は侯爵家の生まれの癖にひとつしか扱えない。ハッキリ言ってポンコツ中のポンコツだ。
ポンコツな癖に、マクシムス家の両親がそれなりに偉大な魔導師であったせいか、彼も態度だけは無駄にでかくなってしまったのである。
私のお父様は「何があってもダリアス様につくし、彼を立てなさい」と諭していたので、大人しく言うことを聞いていたが、彼の横柄さは我慢ならないものだった。
しかしそれでも私はアルカード領の事を想い、お父様の言葉に従い、どんな時も彼に逆らおうとはしなかった。
そんな私がダリアス様の傍にいて、常日頃から差し上げてきた行為。
それは【魔力提供】と言う少し特殊な魔法だった。
この魔法は名前の通り、対象の相手へと魔力を与え続ける魔法であり、この魔法の効力のおかげでダリアス様は突然多くの上位魔法を次々と扱えるようになった。
【魔力提供】は月日を掛けるほど効力は乗算的に増幅していき、私とダリアス様は一年ほど共に過ごした事によって、ダリアス様の魔力を飛躍的に向上せしめた。
魔力の底上げが成されれば、上位魔法を覚えていくキャパシティも単純に増える。
私の【魔力提供】のおかげで、彼はポンコツ魔導師から天才魔導師と呼ばれるほどに魔法に卓越した上流貴族の仲間入りを果たしたのだ。
「ダリアス。お前の最近の成長は目覚ましいな。つい先日、成人したとはいえ、その歳で上位魔法をすでに10種も扱えるとは、この私でさえも恐れ入ったぞ!」
そう彼を讃えるのは、ダリアス様の魔法の師であり、お父上でもあられるギリアム・マクシムス侯爵閣下だ。
「っは、父上。これも私の日々の訓練の賜物です」
よく言うな、と毎回遠目で眺めていた。
彼はなんの訓練も修行もしていない。
ただ私の【魔力提供】で体内保有魔力が増幅されていただけなのに。
「私の今の魔力ですと、おそらく契約さえ結べば、後2つほどは上位魔法を習得できそうです」
「おお! それは素晴らしい! 私でさえお前と同じくらいの頃にはせいぜい8つの上位魔法を覚えるのが限界であった。さすがは我が息子だ!」
ギリアム閣下は何故ダリアス様が急激に成長した事を疑問に思わないのだろう、と不思議で仕方なかった。自慢の息子だから、ただの『天才』でかたづけてしまったんでしょうけれど。
「ねえ、リフィルさん」
そんなダリアス様の様子を陰ながら見守っていた私へ、不意に彼のお母上であられるライラ様が声をかけて来た。
「貴女はいつも羨ましそうにあの子を眺めているけれど、いい加減貴女も少しは鍛錬を積み重ねなさいね? 貴女も来年16で成人でしょう? ダリアスとの結婚を控えているのだから、せめて最低でも【宝石変換】の初歩くらいは扱えるようになりなさい」
毎日これだった。
私は何もしていないわけではないのだが、パッと見ではそう見えてしまうのも仕方がない。
しかしそれでも私はお父様の言われた言葉を真摯に守り通していたのだ。
だが、ダリアス様の住むこの王都では、貴族間の交流が非常に盛んだ。
その交流会でライラ様の仰る通り、【宝石変換】は非常に使用頻度の高い、貴族間では常識中の常識とも言われるその上位魔法を頻繁に使う事になる。
それが私にはできないのである。
何故なら、私がダリアス様へと魔力を差し出し続けている間、私の魔力キャパシティは著しく低下した状態のままとなる為、上位魔法はおろか、一般魔法ですら満足に扱えない状態になってしまうし、そもそも私は自分のキャパシティ的にも他の魔法を覚える余裕がない。
つまり【宝石変換】自体、まず覚えていないのである。
ゆえに貴族間でのお披露目夜会などで、互いに精錬された魔法の見せ合いの場では、私は出る幕がなかった。
「あら? リフィルさんはもしかしてこれ、できませんの?」
魔法のお披露目夜会は上流貴族の嗜み。
その中でも貴族婦人や令嬢たちがこぞって見せ合うのが、石ころを宝石に変える魔法だ。
上位魔法のひとつで【宝石変換】と呼ばれるその魔法は、小粒大ほどの石を何らかの宝石に変換させる事ができる。
多くの女性貴族は習得する上位魔法のひとつに必ずと言って言いほどコレを選択する。
より大きく、より希少価値の高い宝石に変換させる事こそが、その者の存在価値すら決めてしまうほどにこの魔法はこの世界においてのヒエラルキーと言えた。
しかし。
「……私にはできません」
「あら? 初歩的なやつでも覚えられなかったんですの?」
そもそも【宝石変換】自体覚えていないし、現在もなお私はダリアス様へと【魔力提供】をし続けているのだ。覚えられるわけがない。
本当ならそれを止めてしまえばもしかしたら初歩的な【宝石変換】くらいは覚えられたのかもしれなかったが、それをしてしまうとダリアス様がいざ魔法をお披露目する時に恥をかかせてしまうかもしれない。
そうなってしまっては申し訳ないと思い、代わりに私はお披露目会では他の女性たちから後ろ指を刺され続けた。
ダリアス様は非常に乱暴者だし、スケベだし、馬鹿だし、横柄だし、馬鹿だし、性格悪いし、馬鹿だし、スケベだし、何より脂ぎったあのお顔と潰れた豚のような鼻が生理的に受け付けない気持ちの悪い顔をしていたからだ。
その上、人には馬鹿にする癖に本人は貴族の嗜みである上位魔法をたったのひとつしか使えなかったのである。
この世界における貴族の序列は家系の魔力適性値と呼ばれる要素が非常に大きい。
適性値が高い者ほど多くの上位魔法を使え、並の貴族なら子爵程度の者でも16歳にもなればだいたい平均5~6種類くらいの上位魔法が扱えるのだが、ダリアス様は侯爵家の生まれの癖にひとつしか扱えない。ハッキリ言ってポンコツ中のポンコツだ。
ポンコツな癖に、マクシムス家の両親がそれなりに偉大な魔導師であったせいか、彼も態度だけは無駄にでかくなってしまったのである。
私のお父様は「何があってもダリアス様につくし、彼を立てなさい」と諭していたので、大人しく言うことを聞いていたが、彼の横柄さは我慢ならないものだった。
しかしそれでも私はアルカード領の事を想い、お父様の言葉に従い、どんな時も彼に逆らおうとはしなかった。
そんな私がダリアス様の傍にいて、常日頃から差し上げてきた行為。
それは【魔力提供】と言う少し特殊な魔法だった。
この魔法は名前の通り、対象の相手へと魔力を与え続ける魔法であり、この魔法の効力のおかげでダリアス様は突然多くの上位魔法を次々と扱えるようになった。
【魔力提供】は月日を掛けるほど効力は乗算的に増幅していき、私とダリアス様は一年ほど共に過ごした事によって、ダリアス様の魔力を飛躍的に向上せしめた。
魔力の底上げが成されれば、上位魔法を覚えていくキャパシティも単純に増える。
私の【魔力提供】のおかげで、彼はポンコツ魔導師から天才魔導師と呼ばれるほどに魔法に卓越した上流貴族の仲間入りを果たしたのだ。
「ダリアス。お前の最近の成長は目覚ましいな。つい先日、成人したとはいえ、その歳で上位魔法をすでに10種も扱えるとは、この私でさえも恐れ入ったぞ!」
そう彼を讃えるのは、ダリアス様の魔法の師であり、お父上でもあられるギリアム・マクシムス侯爵閣下だ。
「っは、父上。これも私の日々の訓練の賜物です」
よく言うな、と毎回遠目で眺めていた。
彼はなんの訓練も修行もしていない。
ただ私の【魔力提供】で体内保有魔力が増幅されていただけなのに。
「私の今の魔力ですと、おそらく契約さえ結べば、後2つほどは上位魔法を習得できそうです」
「おお! それは素晴らしい! 私でさえお前と同じくらいの頃にはせいぜい8つの上位魔法を覚えるのが限界であった。さすがは我が息子だ!」
ギリアム閣下は何故ダリアス様が急激に成長した事を疑問に思わないのだろう、と不思議で仕方なかった。自慢の息子だから、ただの『天才』でかたづけてしまったんでしょうけれど。
「ねえ、リフィルさん」
そんなダリアス様の様子を陰ながら見守っていた私へ、不意に彼のお母上であられるライラ様が声をかけて来た。
「貴女はいつも羨ましそうにあの子を眺めているけれど、いい加減貴女も少しは鍛錬を積み重ねなさいね? 貴女も来年16で成人でしょう? ダリアスとの結婚を控えているのだから、せめて最低でも【宝石変換】の初歩くらいは扱えるようになりなさい」
毎日これだった。
私は何もしていないわけではないのだが、パッと見ではそう見えてしまうのも仕方がない。
しかしそれでも私はお父様の言われた言葉を真摯に守り通していたのだ。
だが、ダリアス様の住むこの王都では、貴族間の交流が非常に盛んだ。
その交流会でライラ様の仰る通り、【宝石変換】は非常に使用頻度の高い、貴族間では常識中の常識とも言われるその上位魔法を頻繁に使う事になる。
それが私にはできないのである。
何故なら、私がダリアス様へと魔力を差し出し続けている間、私の魔力キャパシティは著しく低下した状態のままとなる為、上位魔法はおろか、一般魔法ですら満足に扱えない状態になってしまうし、そもそも私は自分のキャパシティ的にも他の魔法を覚える余裕がない。
つまり【宝石変換】自体、まず覚えていないのである。
ゆえに貴族間でのお披露目夜会などで、互いに精錬された魔法の見せ合いの場では、私は出る幕がなかった。
「あら? リフィルさんはもしかしてこれ、できませんの?」
魔法のお披露目夜会は上流貴族の嗜み。
その中でも貴族婦人や令嬢たちがこぞって見せ合うのが、石ころを宝石に変える魔法だ。
上位魔法のひとつで【宝石変換】と呼ばれるその魔法は、小粒大ほどの石を何らかの宝石に変換させる事ができる。
多くの女性貴族は習得する上位魔法のひとつに必ずと言って言いほどコレを選択する。
より大きく、より希少価値の高い宝石に変換させる事こそが、その者の存在価値すら決めてしまうほどにこの魔法はこの世界においてのヒエラルキーと言えた。
しかし。
「……私にはできません」
「あら? 初歩的なやつでも覚えられなかったんですの?」
そもそも【宝石変換】自体覚えていないし、現在もなお私はダリアス様へと【魔力提供】をし続けているのだ。覚えられるわけがない。
本当ならそれを止めてしまえばもしかしたら初歩的な【宝石変換】くらいは覚えられたのかもしれなかったが、それをしてしまうとダリアス様がいざ魔法をお披露目する時に恥をかかせてしまうかもしれない。
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