【連載版】婚約破棄? 私が能無しのブスだから? ありがとうございます。これで無駄なサービスは終了致しました。

ごどめ

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第一部

4話 無慈悲のダリアス

「いいかい、リフィル。この魔法を選べば今現在のキミのキャパシティから見ても、他の魔法は何一つ覚えることはできない。それを充分わかっているんだね?」

「ええ、わかっておりますわ」

「この魔法は上位魔法の中でも禁呪と言われるほどに強力だ。けれど相応の対価もある。その対価はキミに魔法を取得させてからしか説明ができない。それでもいいんだね?」

「私の四肢が不自由になったり、命が取られたり、凄く痛い思いをするのではないのでしょう?」

「うん、そうだね。これはあくまで制約だ。キミの今ある自由を奪うものではないよ」

「それなら全然良いですわ。私、他に覚えたい魔法なんてありませんもの」

「そっか、わかった。では我がテロメアの名において契約主リフィル・アルカードに新たな力を授けよう」

 そう言うと、精霊の森の主であるテロメア様が私の顔に向けて手をかざす。

 眩い光に包まれ、何かが私の中に入り込んでくるのがわかる。

 これが――魔法。



        ●○●○●



「……ッ」

 ガタン、と揺れる馬車の振動で私は目を覚ます。

 どうやら昔の夢を見ていたようだ。

 私が唯一使える上位魔法【魔力提供マジックサーバー】。

 この魔法は確かに精霊テロメア様の言う通り、とても強力無比だ。

 現にあのポンコツ侯爵令息であるダリアス様でさえ、あの目覚ましい成長っぷりを見せている。

 もしもダリアス様がシュバルツ様だったなら、私はどんなに幸せだっただろう。

 シュバルツ様……もう会う事は多分、ない。

 彼は魔法の才能に関してはダリアス様と同じくらい。上位魔法も一つしか使えないし、剣の腕も高くはない。

 でも彼はそんな事で自分を卑下しないし、それどころか私のような弱者に対する配慮も優れている。

 彼みたいな人が私の婚約者だったら良かったのに。

 この一年、王都で過ごして来たけれどロクな思い出はないのに、シュバルツ様との思い出だけは輝いて思い返される。

 ほとんど夜会の時にしかお会いできなかったけれど、たくさんのお話をした。

 彼はとても聞き上手でもあった。

 私の公けに出せない遠回しな愚痴を、いつも深く深く共感して頷いてくれていた。

 背も私よりスラッと高くて、幼いけれど整った顔立ちをしていて、サラサラなのに少しだけ癖っ毛の蒼い髪の毛と琥珀色の瞳がとても美しかった。

 得意な事は意外にもジャグリングと、投げナイフというちょっと変わった趣向を持っていたけれど、その投げナイフの遊び方を興奮気味に話す彼が凄く可愛かった。

 自分を卑下するような事はしないけれど、逆に自分の良いところを誇示するような事もしない。

 困ってる人がいれば、すぐに気がついて何か手を打つ。

 彼の魅力は魔法を除くならいくらでも見出せる気がする。

 心許せる人なんて、シュバルツ様以外にいなかった。

 また会いたい。

 彼に会いたい。

 まるで走馬灯のようにこの一年を思い返す。

 ダリアス様とずっと一緒にいたはずなのに、出てくるのはシュバルツ様の事ばかり。

 せめて最後にもう一度だけ、彼の姿を見る事ができたなら……。

 私はそう思い、馬車の窓のカーテンを開き、王都の方を見ようとした。

「え?」

 私は困惑した。

 今、私が連れられているここは、王都を遥か眼下に望む場所。

 そう、ここは私の田舎、アルカードへの道ではなく正反対の山道の崖だったのである。

「ちょ、ちょっと! 何をしているんですの!?」

 私が慌てて前方の窓を開き御者へそう尋ねると、同時に馬車は停止し、御者は馬の手綱から手を離した。

「ちょっと! あなた、ここはアルカードではありませんわ!?」

 私がそう問い掛けるも、御者は私の言葉など無視して、そのまま奥の森へと走り去ってしまった。

「……一体どういう」

 私が訝しげにしながら馬車からひとり降りると、

「おー、いたいた」

「ひゅーーー。悪くないじゃん」

「ぜんっぜんブスじゃねえ。ラッキー!」

 御者が消えて行った森から、今度は下卑た声の見知らぬ男たちが三人現れる。

「なんですの? 貴方たちは?」

「なんですの? だってよぉー! かっわいー!」

 ケラケラと笑いながら男どもはジリジリと私に近づく。

「俺たちゃあ、単なる野盗ですよ、おじょーさま? あんたと楽しい、楽しい事をしようと馳せ参上したんだわ」

「まーだ処女だってんじゃあ、さぞかし男を知らねえんだろうな? 泣き叫ぶ姿を想像したらたまらねぇー!」

「馬鹿な女だぜ。世の中、強えもんには巻かれろって言葉を知らねえんだろうな。素直に田舎に帰れるとでも思ったのか」

 なるほど、納得。

 これはもしかしなくとも、ダリアス様の手先だ。

 先の御者もダリアス様に命じられていたのだろう。

 全く……。おそらく私がダリアス様にこうべを垂れないから、こうやって辱めてやろうという浅はかな計略。

 やはり彼は底無しのクズだと思った。

「さあお嬢様、覚悟はいいかい? ここは人気ひとけも、逃げ場もねえんだからな。大人しくしていた方が、てめぇも痛い目に合わずに案外楽しめるかもしれねぇぞ?」

 ギャハハ、と三人が大笑いする。

 しかし困ったのは事実困った。

 私にこの男たちを倒して逃げる力など当然ない。


 一体どうすれば……。



 
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