12 / 70
第一部
11話 ただいま
「皆様、大旦那様がお目覚めになられました」
そう言ってメイドさんに車椅子で連れられてきたのは、
「お父様ッ!!」
私が声を上げる。
「うんうん、おかえり、リフィル。お前が元気そうで良かったよ」
お父様は相変わらず優しい笑顔で私を迎えてくれた。
「みんなの楽しそうな声が響いてきて、やっと起きたよ。全く、起こしてくれたら良かったのに」
お父様は少し淋しそうに言った。
「何言ってんだ、お父様。身体に触るだろうから寝かしておいたんだよ。もう起きて平気なのか?」
ルーフェンが尋ねると、
「うむ、ありがとうルーフェン。今日はだいぶ体調も良い」
そんな会話のやりとりを聞いて私は不安感を覚える。
「え……お、お父様、どこかお身体の具合が悪いのですか……?」
「うむ、まぁな……」
そんな……。確かになんだか妙にやつれてしまっているし、お父様、もしかして重いご病気に……!?
「ね、ねえルーフェン。お父様は……」
「ああ、お父様は……病気だ」
ルーフェンは苦虫を噛み潰したような顔をした。
「ど、どんなご病気ですの!? どうして教えてくれなかったんですの!? 隠しておくなんて水くさいんじゃないんですの!?」
私が必死な剣幕で問い詰めると、
「いや、リフィル。お前は気にしなくて良い事だ」
「そんな! 嫌ですわッ! 私だけ知らないなんて……ッ! だって、ルーフェンだけじゃなくルーラも知っているのでしょう!?」
「うん、ルーラも知ってるー。だけどルーラ、馬鹿だからあんまりよくわかんないですッ!」
「よくわかんないって……ルーラ! 今は真面目な話なんですのよ!? 私たちのお父様に何かあったら私は……ッ」
私が涙目になりながら声を荒げていると、
「フリックさんったら、最近ずーっと頑張りすぎちゃって、満身創痍なのよ、リフィルちゃん」
と、ニコニコ顔でお母様が言った。
「え?」
私が困惑顔をすると、
「フリックさん、最近またあっちの方が元気になっちゃったのよぉ。母様はおかげで、肌艶がなんだかよくなっちゃったけどね! んっふふー」
「は?」
「リフィルちゃん、わからない? フリックさん……貴女の父様はね? まるで盛りのついた犬猫みたいに毎晩母様を――」
「「やめろ、お母様!」」
お父様とルーフェンが同時に声を荒げた。
「あらー? どうして? 父様と母様が仲良しなのは家族みんな嬉しい事でしょう?」
「そうだけど、それをこんな、メイドさんたちもたくさんいる場所で言うもんじゃないだろ……」
「うむ……ルーフェンの言う通りだリアナ。そういうのは貴族婦人たるもの、伏せておくものだ。それにリフィルにはまだ少し刺激が強いかもしれんし」
と、ルーフェンとお父様が恥ずかしげに言った。
「……もしかして、ただそれをし過ぎたから疲れてるってだけの話、だったりするんですの?」
「……そうだよ。だから別にお父様は、下半身が動かせない以外別に健康体だ」
「ある意味、フリックさんの下半身は一部だけすーっごい元気だけどねー!」
「「お母様ッ!!」」
呆れた。
ただの性欲お化けなだけ、という話だったわけだ。
全く、お父様もお母様も……。
それにルーラもルーフェンも……。
みんな、みんな……。
「リ、リフィルちゃん!?」
「ど、どうしたリフィル!?」
「姉様!? なんで泣いてるんです!?」
お母様とお父様とルーラがびっくりした顔で私に近寄る。
私は自然と涙が溢れて。
「……ひっく……ふぐ……ぐす」
感情が次々に込み上げてきて、涙が止まらなくなっていた。
「ご、ごめんなさいリフィルちゃん! 母様ったらリフィルちゃんの苦労の事を考えてあげずにこんな馬鹿な事言って……」
「すまないリフィル! 驚かすつもりはなかったんだ。ただ父様はお前にはまだ刺激の強い話だと思って言うべきではないと……」
「姉様、もしかしてルーラが勝手に大人になっちゃったの、不味かったです!? 姉様より身長もおっぱいも大きくなっちゃったから……」
違う。
みんながこの一年ですっごい変わってしまっているのに、実は全然変わっていなかった事に凄く、凄く安心したんですの。
ダリアス様のお屋敷にいたこの一年、楽しいことなんてちっともなかった。笑った事なんて、多分一度もない。
シュバルツ様にお会いできる夜会の日以外で、心温まる日なんて全くなかったんですの。
それがここにはあった。
みんな変わってしまったけれど、でもやっぱり変わらない家族の絆がここにはしっかりあって……。
シュバルツ様に助けて頂けなければ、下手をすれば私は今日、どうなっていたんだろう。
それを想像した上で、私の大好きなアルカードに私は無事帰って来れたのだと思ったら、急に涙が溢れて。
「ほれ、これで拭いとけ」
ルーフェンがぶっきらぼうに、ハンカチを私へと差し出す。
私は涙を拭って、
「お父様、お母様、ルーフェン、ルーラ。それにメイドさんたち、みんな……」
顔を上げて。
「ただいま、ですわ」
そう言ってメイドさんに車椅子で連れられてきたのは、
「お父様ッ!!」
私が声を上げる。
「うんうん、おかえり、リフィル。お前が元気そうで良かったよ」
お父様は相変わらず優しい笑顔で私を迎えてくれた。
「みんなの楽しそうな声が響いてきて、やっと起きたよ。全く、起こしてくれたら良かったのに」
お父様は少し淋しそうに言った。
「何言ってんだ、お父様。身体に触るだろうから寝かしておいたんだよ。もう起きて平気なのか?」
ルーフェンが尋ねると、
「うむ、ありがとうルーフェン。今日はだいぶ体調も良い」
そんな会話のやりとりを聞いて私は不安感を覚える。
「え……お、お父様、どこかお身体の具合が悪いのですか……?」
「うむ、まぁな……」
そんな……。確かになんだか妙にやつれてしまっているし、お父様、もしかして重いご病気に……!?
「ね、ねえルーフェン。お父様は……」
「ああ、お父様は……病気だ」
ルーフェンは苦虫を噛み潰したような顔をした。
「ど、どんなご病気ですの!? どうして教えてくれなかったんですの!? 隠しておくなんて水くさいんじゃないんですの!?」
私が必死な剣幕で問い詰めると、
「いや、リフィル。お前は気にしなくて良い事だ」
「そんな! 嫌ですわッ! 私だけ知らないなんて……ッ! だって、ルーフェンだけじゃなくルーラも知っているのでしょう!?」
「うん、ルーラも知ってるー。だけどルーラ、馬鹿だからあんまりよくわかんないですッ!」
「よくわかんないって……ルーラ! 今は真面目な話なんですのよ!? 私たちのお父様に何かあったら私は……ッ」
私が涙目になりながら声を荒げていると、
「フリックさんったら、最近ずーっと頑張りすぎちゃって、満身創痍なのよ、リフィルちゃん」
と、ニコニコ顔でお母様が言った。
「え?」
私が困惑顔をすると、
「フリックさん、最近またあっちの方が元気になっちゃったのよぉ。母様はおかげで、肌艶がなんだかよくなっちゃったけどね! んっふふー」
「は?」
「リフィルちゃん、わからない? フリックさん……貴女の父様はね? まるで盛りのついた犬猫みたいに毎晩母様を――」
「「やめろ、お母様!」」
お父様とルーフェンが同時に声を荒げた。
「あらー? どうして? 父様と母様が仲良しなのは家族みんな嬉しい事でしょう?」
「そうだけど、それをこんな、メイドさんたちもたくさんいる場所で言うもんじゃないだろ……」
「うむ……ルーフェンの言う通りだリアナ。そういうのは貴族婦人たるもの、伏せておくものだ。それにリフィルにはまだ少し刺激が強いかもしれんし」
と、ルーフェンとお父様が恥ずかしげに言った。
「……もしかして、ただそれをし過ぎたから疲れてるってだけの話、だったりするんですの?」
「……そうだよ。だから別にお父様は、下半身が動かせない以外別に健康体だ」
「ある意味、フリックさんの下半身は一部だけすーっごい元気だけどねー!」
「「お母様ッ!!」」
呆れた。
ただの性欲お化けなだけ、という話だったわけだ。
全く、お父様もお母様も……。
それにルーラもルーフェンも……。
みんな、みんな……。
「リ、リフィルちゃん!?」
「ど、どうしたリフィル!?」
「姉様!? なんで泣いてるんです!?」
お母様とお父様とルーラがびっくりした顔で私に近寄る。
私は自然と涙が溢れて。
「……ひっく……ふぐ……ぐす」
感情が次々に込み上げてきて、涙が止まらなくなっていた。
「ご、ごめんなさいリフィルちゃん! 母様ったらリフィルちゃんの苦労の事を考えてあげずにこんな馬鹿な事言って……」
「すまないリフィル! 驚かすつもりはなかったんだ。ただ父様はお前にはまだ刺激の強い話だと思って言うべきではないと……」
「姉様、もしかしてルーラが勝手に大人になっちゃったの、不味かったです!? 姉様より身長もおっぱいも大きくなっちゃったから……」
違う。
みんながこの一年ですっごい変わってしまっているのに、実は全然変わっていなかった事に凄く、凄く安心したんですの。
ダリアス様のお屋敷にいたこの一年、楽しいことなんてちっともなかった。笑った事なんて、多分一度もない。
シュバルツ様にお会いできる夜会の日以外で、心温まる日なんて全くなかったんですの。
それがここにはあった。
みんな変わってしまったけれど、でもやっぱり変わらない家族の絆がここにはしっかりあって……。
シュバルツ様に助けて頂けなければ、下手をすれば私は今日、どうなっていたんだろう。
それを想像した上で、私の大好きなアルカードに私は無事帰って来れたのだと思ったら、急に涙が溢れて。
「ほれ、これで拭いとけ」
ルーフェンがぶっきらぼうに、ハンカチを私へと差し出す。
私は涙を拭って、
「お父様、お母様、ルーフェン、ルーラ。それにメイドさんたち、みんな……」
顔を上げて。
「ただいま、ですわ」
あなたにおすすめの小説
外れ伯爵家の三女、領地で無双する
森のカフェしっぽっぽ
ファンタジー
十三歳の少女アイリス・アルベールは、人生を決める「祝福の儀」で“ゴミスキル”と蔑まれる《アイテムボックス》を授かってしまう。戦えず、稼げず、価値もない――そう断じた家族は、彼女を役立たずとして家から追放する。さらに、優秀なスキルであれば貴族に売り渡すつもりだったという冷酷な真実まで明かされ、アイリスはすべてを失う。
だが絶望の中、彼女は気付く。この世界が、自分がかつてやり込んだVRMMORPG『メデア』そのものであることに。
そして思い出す――
《アイテムボックス》には、ある“致命的なバグ”が存在することを。
市場で偶然を装いながらアイテムを出し入れし、タイミングをずらすことで発生する“複製バグ”。それは、あらゆる物資を無限に増やす禁断の裏技だった。
食料も、装備も、資金も――すべてが無限。
最底辺から一転、誰にも真似できないチートを手にしたアイリスは、冒険者として歩み始める。だがその力はやがて、経済を歪め、権力者の目に留まり、そして世界の“仕様そのもの”に干渉していくことになる。
これは――
ゴミと呼ばれた少女が、“世界の裏側”を掌握する物語。
無能勇者の黙示録~勝手に召喚されて勝手に追放されたので勝手に旅に出ます~
枯井戸
ファンタジー
力も強くない、足も速くない、魔法も使えないし、頭も大してよくない、どこにでもいるちょっとオタク趣味の主人公・東雲真緒が白雉国に勇者として転生する。
同期の勇者はそれぞれ力が強かったり、魔法が使えたり、回復ができたりと各々の才能を開花させ頭角を現していくのだが、真緒に与えられた才能は異世界転生モノでよく見る〝ステータスオープン〟のみだった。
仲間には使えないと蔑まれ、ギルドには落第勇者の烙印を押され、現地人には殺害されかけ、挙句の果てに大事な人を亡くし、見ず知らずの土地の最底辺で生きていくことになった真緒だったが、彼女はまだ〝ステータスオープン〟の可能性に気づいていないだけだった。
─────────────
※投稿時間は多少前後しますが毎日投稿は続けていくつもりです。
※タイトルは予告なしにガラリと変わる場合があるのでご了承ください。
※表紙は現在の主人公のイメージ図です。もしまた別の国へ行く場合、彼女の装いも変化するかもしれません。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?
タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。
白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。
しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。
王妃リディアの嫉妬。
王太子レオンの盲信。
そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。
「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」
そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。
彼女はただ一言だけ残した。
「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」
誰もそれを脅しとは受け取らなかった。
だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。
企業再生のプロ、倒産寸前の貧乏伯爵に転生する
namisan
ファンタジー
数々の倒産寸前の企業を立て直してきた敏腕コンサルタントの男は、過労の末に命を落とし、異世界で目を覚ます。
転生先は、帝国北部の辺境にあるアインハルト伯爵家の若き当主、アレク。
しかし、そこは「帝国の重荷」と蔑まれる、借金まみれで領民が飢える極貧領地だった。
凍える屋敷、迫りくる借金取り、絶望する家臣たち。
詰みかけた状況の中で、アレクは独自のユニーク魔法【構造解析(アナライズ)】に目覚める。
それは、物体の構造のみならず、組織の欠陥や魔法術式の不備さえも見抜き、再構築(クラフト)するチート能力だった。
「問題ない。この程度の赤字、前世の案件に比べれば可愛いものだ」
前世の経営知識と規格外の魔法で、アレクは領地の大改革に乗り出す。
痩せた土地を改良し、特産品を生み出し、隣国の経済さえも掌握していくアレク。
そんな彼の手腕に惹かれ、集まってくるのは一癖も二癖もある高貴な美女たち。
これは、底辺から這い上がった若き伯爵が、最強の布陣で自領を帝国一の都市へと発展させ、栄華を極める物語。
魔物に嫌われる「レベル0」の魔物使い。命懸けで仔犬を助けたら―実は神域クラスしかテイムできない規格外でした
たつき
ファンタジー
魔物使いでありながらスライム一匹従えられないカイルは、3年間尽くしたギルドを「無能」として追放される。 同世代のエリートたちに「魔物避けの道具」として危険な遺跡に連れ出され、最後は森の主(ヌシ)を前に囮として見捨てられた。
死を覚悟したカイルが崩落した壁の先で見つけたのは、今にも息絶えそうな一匹の白い仔犬。 「自分と同じように、理不尽に見捨てられたこの子だけは助けたい」 自分の命を顧みず、カイルが全魔力を込めて「テイム」を試みた瞬間、眠っていた真の才能が目覚める。
無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから――
※ 他サイトでも投稿中