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第一部
27話 天才の圧勝
「な……!? ま、まさか【空宙遊泳】ですって!?」
セシリアや取り巻きの婦人たちが声を荒げた。
私もシュバルツ様も驚いている。【空宙遊泳】といえば、上位魔法の中でも【同時詠唱】と同等以上に高難度な魔法。その制約の強さもあって、取得する人も使用する人も実に少ない魔法だ。
一体ルーフェンはいくつもの魔法を扱えるのか、我が弟ながらその実力は底知れないと思った。
「それだけじゃあねえぜ? 今日みたいな日の為に、最近覚えたのが役に立つんだわ。えっと、ちょっと待ってろよ……ん、んん。ゴホンゴホンッ!」
ルーフェンが宙に浮かんだまま、右手を自分の喉に当て、軽く咳払いをすると、
『貴女なんてあの穢らわしい男どもに一生性奴隷として飼われてしまえば良かったんですわ。それをダリアス様も心から願っておりましたわよ?』
と、先程セシリアが話していた言葉を、その声色を完全にセシリアと同じに変えて発した。
「「え、ええ!?」」
セシリアたちが再び、狼狽える。
「よし、できたな。これが最近俺がわざわざ覚えた上位魔法、【声帯模倣】だ。なんかの芸の肥やしにしかならない魔法かと思いきや、こういう事に使えると思ってな。この魔法、知っている奴なら意味を理解できると思うんだが、模倣するにはまず、模倣される当人がそのワードを発していないと駄目だという制約があるのを知っているか?」
セシリアが青ざめる。
「そ、それはつまり……」
ルーフェンが笑って、
「そゆこと。あんたがこれを言ったっていう100%の証拠だってこったな」
そう言い放った。
「そ、それでなんなんですの!? 私を脅しているつもりですの!? そんなもの、ダリアス様に掛かれば簡単に揉み消して……ッ!」
と、そこまで言ってセシリアはハッとした表情で口を抑える。
「おーおー。更にありがとさん。んで、なんだって? もっと聞かせてくれよ。お前が俺に聞かせてくれた言葉は全て、俺が模倣できるんだからなあ。本人がそれを言っていたという完全なる証拠として、な」
「セ、セシリアさん……もうやめましょうよ……」
「そうですわ。このままだと私たちまで……」
取り巻きの女たちも自分たちの不利さを痛感し始めている。
「確かにダリアスなら俺のコレをネタにしても、王国裁判では不正に奴が勝っちまうだろう。だが、これを王都中に俺が空中でしゃべりまくったらどうだろうな? 貴族らは口裏合わせできても、民衆全員まではそうはいかないだろうなあ? そうなりゃあダリアスを支持する奴もいなくなって、お前らは晴れて悪者扱い。王都にはいられなくなって、国外追放ってか?」
ルーフェンがニヤニヤしながら次々に言葉を捲し立てて、セシリアを追い詰めていく。
「陛下たちもさすがに民衆全員を敵に回すくらいなら、マクシムス家とマーガレット家を潰す方を間違いなく選ぶだろうな」
「……そ、そんな」
「お前とダリアスがどうしようもねえクソッタレだってのはわかってる。けど、ここは優しい俺が簡単な条件でコレを公表するのをやめてやってもいいんだぜ? お前がその条件を飲むんならな?」
「じょ、条件ってなんですの……?」
「なに、死ぬほど簡単さ。今後一切リフィル姉様とシュバルツ殿にちょっかいを出さない事。そしてそれをダリアスにも上手く伝えるって事だ。理由はそうだな……リフィル姉様がとてつもなく不幸になって自分はもう充分満足したからちょっかいを出すのはやめましょう、とでもダリアスに言うとか、だな」
「わ、わかりましたわ。私はもうリフィルさんたちに手を出したり致しませんわ。でもダリアス様は……その……言う事を聞いてくださるかは……」
「そりゃあお前次第だろ。お前がうまくダリアスを丸め込むんだよ。できなけりゃお前らはおしまいだ」
「う……わわ、わかりましたわ! やりますわ! だからその、さっきのを王都で言いふらすのはどうかご勘弁願えますでしょうか……?」
「……よし、いいだろう。じゃ、お前らはさっさと散れ。ちなみにここで起きた事、誰にも口外するなよ? 俺はお前ら全員の悪口全て覚えてるからな。口外してる奴がいる事がわかったら、俺は容赦なくさっき言った事をやるぞ。わかったな?」
「「は、はいッ!」」
ルーフェンがそこまで言って、セシリアたちはまるで逃げるようにその場から立ち去って行った。
本当にルーフェンには助けられてばかりだ。
でも、これでシュバルツ様も、もう彼女に嫌味な事をされたりはしないはず……。
ありがとうルーフェン……。
「リ、リフィルさん! リフィルさんッ!? しっかりするんだ!? リフィルさんーッ!」
私はそう思ったまま、意識を失ったのだった。
セシリアや取り巻きの婦人たちが声を荒げた。
私もシュバルツ様も驚いている。【空宙遊泳】といえば、上位魔法の中でも【同時詠唱】と同等以上に高難度な魔法。その制約の強さもあって、取得する人も使用する人も実に少ない魔法だ。
一体ルーフェンはいくつもの魔法を扱えるのか、我が弟ながらその実力は底知れないと思った。
「それだけじゃあねえぜ? 今日みたいな日の為に、最近覚えたのが役に立つんだわ。えっと、ちょっと待ってろよ……ん、んん。ゴホンゴホンッ!」
ルーフェンが宙に浮かんだまま、右手を自分の喉に当て、軽く咳払いをすると、
『貴女なんてあの穢らわしい男どもに一生性奴隷として飼われてしまえば良かったんですわ。それをダリアス様も心から願っておりましたわよ?』
と、先程セシリアが話していた言葉を、その声色を完全にセシリアと同じに変えて発した。
「「え、ええ!?」」
セシリアたちが再び、狼狽える。
「よし、できたな。これが最近俺がわざわざ覚えた上位魔法、【声帯模倣】だ。なんかの芸の肥やしにしかならない魔法かと思いきや、こういう事に使えると思ってな。この魔法、知っている奴なら意味を理解できると思うんだが、模倣するにはまず、模倣される当人がそのワードを発していないと駄目だという制約があるのを知っているか?」
セシリアが青ざめる。
「そ、それはつまり……」
ルーフェンが笑って、
「そゆこと。あんたがこれを言ったっていう100%の証拠だってこったな」
そう言い放った。
「そ、それでなんなんですの!? 私を脅しているつもりですの!? そんなもの、ダリアス様に掛かれば簡単に揉み消して……ッ!」
と、そこまで言ってセシリアはハッとした表情で口を抑える。
「おーおー。更にありがとさん。んで、なんだって? もっと聞かせてくれよ。お前が俺に聞かせてくれた言葉は全て、俺が模倣できるんだからなあ。本人がそれを言っていたという完全なる証拠として、な」
「セ、セシリアさん……もうやめましょうよ……」
「そうですわ。このままだと私たちまで……」
取り巻きの女たちも自分たちの不利さを痛感し始めている。
「確かにダリアスなら俺のコレをネタにしても、王国裁判では不正に奴が勝っちまうだろう。だが、これを王都中に俺が空中でしゃべりまくったらどうだろうな? 貴族らは口裏合わせできても、民衆全員まではそうはいかないだろうなあ? そうなりゃあダリアスを支持する奴もいなくなって、お前らは晴れて悪者扱い。王都にはいられなくなって、国外追放ってか?」
ルーフェンがニヤニヤしながら次々に言葉を捲し立てて、セシリアを追い詰めていく。
「陛下たちもさすがに民衆全員を敵に回すくらいなら、マクシムス家とマーガレット家を潰す方を間違いなく選ぶだろうな」
「……そ、そんな」
「お前とダリアスがどうしようもねえクソッタレだってのはわかってる。けど、ここは優しい俺が簡単な条件でコレを公表するのをやめてやってもいいんだぜ? お前がその条件を飲むんならな?」
「じょ、条件ってなんですの……?」
「なに、死ぬほど簡単さ。今後一切リフィル姉様とシュバルツ殿にちょっかいを出さない事。そしてそれをダリアスにも上手く伝えるって事だ。理由はそうだな……リフィル姉様がとてつもなく不幸になって自分はもう充分満足したからちょっかいを出すのはやめましょう、とでもダリアスに言うとか、だな」
「わ、わかりましたわ。私はもうリフィルさんたちに手を出したり致しませんわ。でもダリアス様は……その……言う事を聞いてくださるかは……」
「そりゃあお前次第だろ。お前がうまくダリアスを丸め込むんだよ。できなけりゃお前らはおしまいだ」
「う……わわ、わかりましたわ! やりますわ! だからその、さっきのを王都で言いふらすのはどうかご勘弁願えますでしょうか……?」
「……よし、いいだろう。じゃ、お前らはさっさと散れ。ちなみにここで起きた事、誰にも口外するなよ? 俺はお前ら全員の悪口全て覚えてるからな。口外してる奴がいる事がわかったら、俺は容赦なくさっき言った事をやるぞ。わかったな?」
「「は、はいッ!」」
ルーフェンがそこまで言って、セシリアたちはまるで逃げるようにその場から立ち去って行った。
本当にルーフェンには助けられてばかりだ。
でも、これでシュバルツ様も、もう彼女に嫌味な事をされたりはしないはず……。
ありがとうルーフェン……。
「リ、リフィルさん! リフィルさんッ!? しっかりするんだ!? リフィルさんーッ!」
私はそう思ったまま、意識を失ったのだった。
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