【連載版】婚約破棄? 私が能無しのブスだから? ありがとうございます。これで無駄なサービスは終了致しました。

ごどめ

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第一部

29話 新たな力

 それにしても、元気なく俯くシュバルツ様を見上げて私はどうやって彼に新たな力が備わっている事を伝えるべきか悩んでいる。

 私の魔法の制約、禁忌に触れてしまわないように上手く何か考えなくてはならない。

「……っくそ、俺も【声帯模倣イミテイション】を覚えちまったばかりだから魔力キャパシティが足らねえ。上位魔法の【聖なる癒しセイクリッドヒール】でも覚えておけばよかったッ。そうすりゃ姉様の火傷なんか速攻で治してやれたっつのに……ッ!」

「ルーフェン殿。リフィルさんの火傷はを治すのに、一般魔法の【癒しヒール】では、ダメなのか?」

「ああ。この火傷自体はすぐ治るだろうが、傷跡が残る。女性にとって顔に大きな火傷痕が残るなんて、かわいそすぎんだろ……」

「そうなのか……私にも、もっと魔法の才があれば……っく……」

 と、そこで私は思い出した。

 良い物を私は持っていた事に!

 私はベッドの横にあるテーブルに置かれていた私のバッグに手を伸ばし、

「えっと……確か私のバッグの中の小物入れに……あ、ありましたわ」

 そしてそれを取り出す。

「シュバルツ様! コレをお飲みくださいッ!」

 そう言って私が差し出したのは小さな希少石。そう、昼間、ルーフェンから手渡された魔鉱石の濃縮核である。

「こ、これは確かルーフェン殿がリフィルさんに手渡していた……」

「なんだよ姉様。それ、まだ飲んでなかったのか」

「だって、私、新しく覚えたい魔法はないのですわ。【宝石変換ジュエルコンバータ】も特別興味ないですし。それに他の魔法を仮に覚えても私は馬鹿だから、ルーフェンみたいに上手く魔法を応用したりできませんし……」

 そうなのだ。

 ルーフェンは私が肩身の狭い思いをしているのを気にかけてくれたが、そもそも【宝石変換ジュエルコンバータ】ができたところで、私は貴族間のああいう交流会が楽しいとはどうしても思えない。

 だったら。

「だから、コレ、シュバルツ様に差し上げます! コレですっごい魔法を覚えてくださいッ!」

 今、おそらくシュバルツ様は現段階でも私からの【魔力提供マジックサーバー】によって、大幅に魔力の底上げがなされている。

 そこに加えて魔鉱石の濃縮核も摂取すれば、きっと彼は更なる成長を遂げるはずだ。

「本当にいいのか、姉様?」

「ええ。私は何もかもシュバルツ様に捧げるって決意したんですもの。シュバルツ様が魔法を覚えてくださって、皆さんに認められる方が私には何倍も嬉しいんですわ」

「ま、リフィル姉様がそれでいいなら俺ぁ構わねえさ。って事でシュバルツ殿、そいつ、遠慮なくもらってやってくれ」

「む、むう……本当に私なんかがもらってしまって良いのか……」

「良いのですッ! むしろ私からのお願いですわッ! シュバルツ様、コレを飲んでどうかご自分に自信を持ってくださいませッ!」

 私が強い口調でそう言うと、

「……わかったリフィルさん、ルーフェン殿。ありがたく頂戴しよう」

 シュバルツ様はそれを快く受け取ったのだった。



        ●○●○●



 それからその宿で療養も兼ねて私はもう一泊する事に決めた。

 後で聞いたところによると、実はルーフェンとルーラはずっと私とシュバルツ様をつけていたらしい。ダリアス様から何か嫌がらせをされないか心配して、護衛してくれていたのだとか。

 つまりそれはエリシオンタワーでの出来事も含めているわけで。

 それを聞いて少し経ってから私はルーフェンの、

「相思相愛なのは結構だが、人前ではあまりやりすぎるな。その……見ててこっちが小っ恥ずかしい」

 という言葉の意味を更に深掘りして理解し、顔面から火を吹くかと思った。

 とにかく、王都からアルカードに帰るまで、ルーフェンとルーラは私たちと行動を共にすると言っていた。

 が、今は宿に私一人だ。

「……ただベッドで寝ているのも飽きてしまいましたわ」

 怪我という怪我は、セシリアと揉めた時の軽い打ち身や引っ掻き傷、それと頬の火傷くらいしかないので、そこまで大したものではない。

 けれど心配性のルーフェンやシュバルツ様がもう一日だけここでゆっくりしようと提案したので私はここで大人しくしている。

 ちなみに今、シュバルツ様はルーフェンたちと共に出掛けている。

 その行き先とはマナスポット。

 この王都エリシオンには、その中心部に大神殿と呼ばれる聖なる力が充満している建物がある。

 私の地元であるアルカード領では精霊の森がそうであったように、ここではその大神殿こそがマナスポットなのだ。

 新たなる魔法を覚える為に、その大神殿へとシュバルツ様たちは出向いているのである。

「多分、もうそろそろ帰ってきてもよろしいはずですわね……」

 私がそう呟いていると同時に、私の部屋のドアがコンコン、とノックされた。

「リフィルさん、戻ったよ。入っていいかい?」

 シュバルツ様だ!

「はい! おかえりなさいませッ」

 なんだか夫婦のやりとりみたいで嬉しい。

 なんて、舞い上がった私は勢いよくドアを開いて出迎えると、

「あいたッ」

 ゴンっと、また先日と同じ過ちを繰り返す。

「シュ、シュバルツ様ッ! ご、ごご、ごめんなさいー……ッ! 私ったらまた……」

「い、いや、私がまた不用意に近づき過ぎたのだ、すまない」

 そう言って彼はまた優しく笑ってくれた。

「あ! た、大変……シュバルツ様、おでこから血が……」

 今度は大丈夫ではなかった。

 怪我をさせてしまった。

 私はおろおろと慌てふためいていると、

「なに、問題はない。見ててくれ」

 彼はそう言って、自身の手のひらを額に当て、

「【癒しヒール】」

 と言って、回復魔法を自身に掛けた。

 するとあっという間におでこの傷が癒やされ、元通りになってしまった。

「凄いですシュバルツ様! 【癒しヒール】の魔法を習得されたのですねッ!」

「これは一般魔法だから小さな傷しか癒せないがね。キミが怪我をしてもすぐ治せるように、まずはコレを覚えようと思ったんだ」

「シュバルツ様……」

 私は頬を赤らめて、彼の目を見る。

「それより、本命はこっちだ。リフィルさん、お顔を失礼するよ」

「あ……」

 シュバルツ様が私の頬に触れた。

 それだけで心臓がまたドキドキと高鳴る。

「聖なる加護よ、ここに大いなる再生と癒しを。【聖なる癒しセイクリッドヒール】」

 彼がそう唱えると、私の頬は淡い光に包まれ、まだ少しジンジンとしていた痛みは完全に引き、

「よし、上手くいったぞ! リフィルさん、ほら!」

 彼はそう言って、手鏡を私へと手渡す。

「わあ……ッ!」

 左頬にあった大きな火傷痕は、完全に消え去り、元通りになっていたのである。

「シュバルツ様、覚えられたのですね! 上位魔法! ありがとうございますわッ!」

「うむ。全てキミのおかげだよ、リフィルさん」

「ううん、シュバルツ様の潜在的な強さがあってこそですわ」

「リフィルさん……」

「シュバルツ様……」

 私たちは気づけばまた、互いの目を見つめ合っていた。

「ぅおーーっほん! ごほん、げふんげふんッ!!」

 直後、わざとらしすぎる咳払いがシュバルツ様の背後から響き、私たちは慌ててまた距離を取る。

「あー……リフィル姉様。とりあえず治って良かったな」

「お、おお、おかえりなさいルーフェン!」

「……おう。っつーか昼間からはよしとけって。窓から見られないとも限らねえだろ」

「「……~~ッッ!!」」

 私たちは真っ赤になってまた顔を伏せた。

「んな事より、姉様。ちっと大事な話がある」
 
「大事な話、ですの?」



「ああ。シュバルツ殿について、だ」



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