【連載版】婚約破棄? 私が能無しのブスだから? ありがとうございます。これで無駄なサービスは終了致しました。

ごどめ

文字の大きさ
31 / 70
第一部

30話 覚醒

「シュバルツ様について?」

「ああ。とりあえず俺も中に入れてくれ……」

「あ、す、すまないルーフェン殿」

 シュバルツ様が慌ててルーフェンを部屋の中へと招き入れた。

「あれ? ルーラはどうしたんですの?」

 私が尋ねると、

「ルーラは仕事だ。あいつ、メインの仕事はこの王都で傭兵みたいな依頼ばかり引き受けてるんだ。稼ぎがいいからってな」

「そうなんですのね」

 あの子の強さはよくわかっていますけれど、それでも少し子供っぽいところが抜けてないので心配ですわね……。

「さて、と。ちょっと大真面目な話をするぞ」

 そう言ってルーフェンは真剣な表情で語り始める。

「信じ難いんだが、シュバルツ殿は今、『覚醒』状態に入ってる」

「か、覚醒状態……?」

 私が怪訝な顔で答えると、シュバルツ様はルーフェンの言葉に頷く。

「うむ。自分でも信じられないが……私は今、とてつもない魔力を帯びているようなのだ」

 それってもしかして、もしかしなくても私の【魔力提供マジックサーバー】の効力ですわね!

「俺もこんな形で『覚醒』する御仁は初めて見た。が、間違いなくシュバルツ殿は今、それが始まってるとしか思えん」

「私もそうだとしか考えられない。そうでなければこんな……」

 シュバルツ様はごくんと喉を鳴らし、自分の溢れんばかりの力を確かめるように両手を見ている。

「ちょ、ちょっとお待ちになって! か、かくせい? とは一体なんの事なんですの?」

「ん? なんだ姉様、知らねえのか?」

「ふむ? 普通は学院の必須科目である魔法科で習うはずだが……」

「あ、そうか。俺は自分で勉強してるから当たり前だと思っていたが、姉様は学院には行ってねえから知らねえのか」

「む? ルーフェン殿、そうなのか?」

「ああ。ウチには王都から通い付けの家庭教師ガヴァネスも来ていたし、王都までは遠いからってんでお父様が通わなくても良いって言ってたんだよ。でもそうか、家庭教師ガヴァネスからは教わらなかったんだな」

 それもそのはず。

 我が家に来ていた家庭教師ガヴァネスに、私は魔法に興味がないからそのお勉強はしたくないと断固わがままを押し通していたからである。

 それよりも家庭教師ガヴァネスとは、いっつも恋話ばかりに華を咲かせていたのだ。何故なら彼女も、恋多き乙女だったので、私と波長が合っていたからだ。

 おかげで魔法に関する事はとても疎くなってしまった。

「……で、なんなんですの? その覚醒とは?」

「姉様、魔法に関してマジで疎いからな。ふう、それじゃあイチからおさらいも兼ねて説明してやるよ」

 溜め息を吐きつつも、ルーフェンは語り出した。

「まず魔法ってのは大雑把に分けて、三系統に別れるのは知っているな?」

 そのくらいは私もわかる、と頷く。

 一般魔法、上位魔法、そして最上位魔法だ。

「そうだ。一般魔法は生活にちょっと便利で役に立つような簡単なもの。例えば簡単な回復魔法、小さな光を出す魔法や、小さな害虫を駆除できる魔法とかだな」

 一般魔法は効力は小さいものの、魔力のキャパシティを大きく奪わないので、貴族ではない平民の家系でもある程度覚える事ができる。

「で、上位魔法ってのは、主に特殊なものやそれ単体でも脅威的な影響力を及ぼすものを指す。生物に対して有効な攻撃魔法全般や、貴族婦人共が好む【宝石変換ジュエルコンバータ】とか、少し変わったものだと俺やルーラが覚えている【声帯模倣イミテイション】とか【空間転移トランスポート】とかだな。反面、デメリットとして様々な制約も課されるがな」

 それもなんとなくわかる。

 攻撃魔法は全部上位魔法だって事くらいまでは家庭教師ガヴァネスに教わった。

 それ以外の、なんか凄そうなのはだいたい上位魔法、って感じだったかしら。この辺は曖昧でしたけれど。

「ま、上位魔法ってのは思いの数だけ無数にあるとも言われてるから、俺含め、誰一人全てを把握している奴なんていないだろうがな」

 なるほど。ではやはり私の【魔力提供マジックサーバー】は、ほとんど知られていないのかもしれませんわね。

「で、最後に最上位魔法と呼ばれるものがあって、これは普通に身につける事は不可能だ。既存の上位魔法を自分なりに改変、改良を加え切磋琢磨した先に自然と開花される」

「うむ。ルーフェン殿の【先駆者ザ・パイオニア】や【同時詠唱ダブルマジック】、それに【合成魔法コンポジッション】などは最上位魔法だ。これらは基礎の上位魔法を自己流で極めて開花させなければ習得できん。それを三つも扱える時点でルーフェン殿は世界でも指折りの天才魔導師と言える」

 と、シュバルツ様も魔法の説明に混ざってくださった。

「説明がめんどくさかったから、前にリフィル姉様に話した時は俺の【先駆者ザ・パイオニア】については上位魔法、とだけしか言わなかったがな。ま、最上位魔法なんてどうせ姉様に言ったってわかんねーだろうしな」

 言われてみれば確かに以前ルーフェンは私に、【先駆者ザ・パイオニア】の事を上位魔法だと話していた。

 でも私だって最上位魔法くらい知っていますわ!

 シュバルツ様の【ライトニングボルト】とか……あと、【ファイアボール】の最上位魔法は【ファイアスプラッシュ】だとか……。

「ちなみに攻撃魔法に関する最上位魔法は、ガキでも知ってる当然の事だし、そんなの知らない方が異常だが、リフィル姉様は馬鹿だから一応話しておくぞ」

 なんなのルーフェン? 私の心でも読んでるの?

 っていうかまた馬鹿にしてッ!

 確かに攻撃魔法以外の最上位魔法なんて知らないけど!

「この前見せてもらったシュバルツ殿の【サンダーボルト】なんだが、ありゃあすでに最上位魔法の【ライトニングボルト】になりかけてた。つまり最上位魔法へと進化し始めていたって事なんだ」

 ルーフェンの言葉通り、シュバルツ様のあの【サンダーボルト】はその威力を大幅に改善していた。

 それは間違いなく私の【魔力提供マジックサーバー】によるものだろう。

「だが、ここでひとつ気になる答えがシュバルツ殿から返ってきた。それは、彼がここ最近魔法の鍛錬をしたわけでもないのに、突然少し前から魔力が膨れ上がる事があったってな」

 それはおそらく私が初めて彼に【魔力提供マジックサーバー】をした時だ、とすぐに察する。

「……うむ。私も魔法の鍛錬をいつも全くしていないわけではないが、少なくともここ数日間は所用もあって、鍛錬や訓練に時間を割いた覚えはないのだ」

「それなのにシュバルツ殿は魔力の増幅、そして進化が見え始めてる。これは間違いなく『覚醒』している証拠だ」

「覚醒……ですの?」

「そうだ。『覚醒』とは人の成長期に合わせて発現し、突然魔力の増幅、キャパシティの増加が始まる。多くの場合、それは第二次成長期と言われる10歳から13歳までの間に起こる」

 ルーフェンの言葉にシュバルツ様が頷き、

「ルーフェン殿の言葉に付け加えると、『覚醒』はごく稀にしか発現しない、極めてレアな成長ケースだ。普通の天才と呼ばれる者たちは、そのような成長の仕方ではなく、長年に渡って日々確実に魔力が上がり続けていくのだ。ルーフェン殿のようにな」

 と、説明を付け加えた。

「シュバルツ殿の場合、何が特殊かって、その『覚醒』が成人した後に起きている事だ。こんなケースは俺も初めて見た」

 なるほど。

 つまりは私の【魔力提供マジックサーバー】によるシュバルツ様の魔力増幅を、そのように解釈した、という事ですわね。

「ただ、更にそこで気になるのはダリアスだ。奴も下手をすると『』状態なのかもしれんという事。俺はさっきこんな年齢になってからの覚醒は初めて見たと言ったが、ダリアスについても同じ事が言える」

 不味いですわ。

 おそらくその全ての原因は私。

 でもだからといってそれを説明できない。どうしましょう……と、思っていたらシュバルツ様が私に目配せをしている。

 もしかしてシュバルツ様……。

「いや、ルーフェン殿。ダリアスについては放っておこう。ここで考えても仕方あるまい。昨晩の件もあるし、もうこれ以上リフィルさんにちょっかいを出す事もないであろう」

「まあ……それもそうか。でもなんか気になるんだよな……急成長したダリアスに、ここ数日で突然『』したシュバルツ殿……二人とも本来ならありえない第二次成長期以降に発現しているという共通点……うーん」

 ルーフェンは一度気になりだすとしつこい性格だったのを忘れていましたわ。

 でも幸い、昨晩の私の嘘をシュバルツ様が信じてくれたので、その後もダリアス様についてはシュバルツ様がなんとなく濁してくれましたけれど……。

感想 3

あなたにおすすめの小説

外れ伯爵家の三女、領地で無双する

森のカフェしっぽっぽ
ファンタジー
十三歳の少女アイリス・アルベールは、人生を決める「祝福の儀」で“ゴミスキル”と蔑まれる《アイテムボックス》を授かってしまう。戦えず、稼げず、価値もない――そう断じた家族は、彼女を役立たずとして家から追放する。さらに、優秀なスキルであれば貴族に売り渡すつもりだったという冷酷な真実まで明かされ、アイリスはすべてを失う。 だが絶望の中、彼女は気付く。この世界が、自分がかつてやり込んだVRMMORPG『メデア』そのものであることに。 そして思い出す―― 《アイテムボックス》には、ある“致命的なバグ”が存在することを。 市場で偶然を装いながらアイテムを出し入れし、タイミングをずらすことで発生する“複製バグ”。それは、あらゆる物資を無限に増やす禁断の裏技だった。 食料も、装備も、資金も――すべてが無限。 最底辺から一転、誰にも真似できないチートを手にしたアイリスは、冒険者として歩み始める。だがその力はやがて、経済を歪め、権力者の目に留まり、そして世界の“仕様そのもの”に干渉していくことになる。 これは―― ゴミと呼ばれた少女が、“世界の裏側”を掌握する物語。

無能勇者の黙示録~勝手に召喚されて勝手に追放されたので勝手に旅に出ます~

枯井戸
ファンタジー
力も強くない、足も速くない、魔法も使えないし、頭も大してよくない、どこにでもいるちょっとオタク趣味の主人公・東雲真緒が白雉国に勇者として転生する。 同期の勇者はそれぞれ力が強かったり、魔法が使えたり、回復ができたりと各々の才能を開花させ頭角を現していくのだが、真緒に与えられた才能は異世界転生モノでよく見る〝ステータスオープン〟のみだった。 仲間には使えないと蔑まれ、ギルドには落第勇者の烙印を押され、現地人には殺害されかけ、挙句の果てに大事な人を亡くし、見ず知らずの土地の最底辺で生きていくことになった真緒だったが、彼女はまだ〝ステータスオープン〟の可能性に気づいていないだけだった。 ───────────── ※投稿時間は多少前後しますが毎日投稿は続けていくつもりです。 ※タイトルは予告なしにガラリと変わる場合があるのでご了承ください。 ※表紙は現在の主人公のイメージ図です。もしまた別の国へ行く場合、彼女の装いも変化するかもしれません。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?

タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。 白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。 しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。 王妃リディアの嫉妬。 王太子レオンの盲信。 そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。 「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」 そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。 彼女はただ一言だけ残した。 「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」 誰もそれを脅しとは受け取らなかった。 だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。

企業再生のプロ、倒産寸前の貧乏伯爵に転生する 

namisan
ファンタジー
数々の倒産寸前の企業を立て直してきた敏腕コンサルタントの男は、過労の末に命を落とし、異世界で目を覚ます。  転生先は、帝国北部の辺境にあるアインハルト伯爵家の若き当主、アレク。  しかし、そこは「帝国の重荷」と蔑まれる、借金まみれで領民が飢える極貧領地だった。  凍える屋敷、迫りくる借金取り、絶望する家臣たち。  詰みかけた状況の中で、アレクは独自のユニーク魔法【構造解析(アナライズ)】に目覚める。  それは、物体の構造のみならず、組織の欠陥や魔法術式の不備さえも見抜き、再構築(クラフト)するチート能力だった。  「問題ない。この程度の赤字、前世の案件に比べれば可愛いものだ」  前世の経営知識と規格外の魔法で、アレクは領地の大改革に乗り出す。  痩せた土地を改良し、特産品を生み出し、隣国の経済さえも掌握していくアレク。  そんな彼の手腕に惹かれ、集まってくるのは一癖も二癖もある高貴な美女たち。 これは、底辺から這い上がった若き伯爵が、最強の布陣で自領を帝国一の都市へと発展させ、栄華を極める物語。

魔物に嫌われる「レベル0」の魔物使い。命懸けで仔犬を助けたら―実は神域クラスしかテイムできない規格外でした

たつき
ファンタジー
魔物使いでありながらスライム一匹従えられないカイルは、3年間尽くしたギルドを「無能」として追放される。 同世代のエリートたちに「魔物避けの道具」として危険な遺跡に連れ出され、最後は森の主(ヌシ)を前に囮として見捨てられた。 死を覚悟したカイルが崩落した壁の先で見つけたのは、今にも息絶えそうな一匹の白い仔犬。 「自分と同じように、理不尽に見捨てられたこの子だけは助けたい」 自分の命を顧みず、カイルが全魔力を込めて「テイム」を試みた瞬間、眠っていた真の才能が目覚める。

無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから―― ※ 他サイトでも投稿中

愚かな者たちは国を滅ぼす【完結】

春の小径
ファンタジー
婚約破棄から始まる国の崩壊 『知らなかったから許される』なんて思わないでください。 それ自体、罪ですよ。 ⭐︎他社でも公開します