【連載版】婚約破棄? 私が能無しのブスだから? ありがとうございます。これで無駄なサービスは終了致しました。

ごどめ

文字の大きさ
45 / 70
第一部

44話 冷酷なる悪魔と愚者

 私が幼き頃、リアナお母様から絵本と共に教えられた物語のひとつ。

 冷酷なる闇の悪魔、というお話がある。

 冷酷なる闇の悪魔は魔界にしか生息できない魔物だが、悪意と憎悪の深い心を持った者が自身を生贄に捧げた時、この世界に呼び出す事ができると言われていた。

 ひとたびこの魔物が呼び出されれば、その魔力か命が尽きるまで、目に入ったありとあらゆる生物を根絶やしにしてしまうらしい。

 リアナお母様が聞かせてくれた物語では、そのグレーターデーモンを呼び出されたとある国は、たった数日で壊滅させられてしまったのだとか。

「おいおい、冗談じゃねえぜ……。マンティコアといい、あんな伝説級の化け物を呼び出すなんざ、ルヴァイク共和国はイカれてやがんのか!?」

 ルーフェンが大量の冷や汗を流しながら、激しく警戒を高めているのがわかる。

「アレはシャレにならないレベルです。ルーラもおふざけ無しでやります」

 ルーラでさえ、あの悪魔を見据えて戦闘態勢を整える。

「ヤツは危険だ! 力のある者以外は全員下がれっ!」

 シュバルツ様も叫ぶ。

 そして私は。

「シュバルツ様!」

「リフィルさ……ん!?」

 私は少しでもシュバルツ様に力を与えたくて、彼の唇を強引に奪ってキスをした。

「必ず、死なないでください! 約束ですッ!」

 私の声に彼は笑顔でこくんと頷く。

「や、やべえ! ヤロウ、なんか始めるぞ!?」

 ルーフェンがグレーターデーモンの所作に気づく。

「全員そこから離れろぉ!!」

 と叫ぶと同時にグレーターデーモンは右手を天へとかざし、

「……【バースト・ワルツ爆裂乃舞】」

 と、唱え右手をその頭上から地面へと降り下ろす。

「不味い! 全員俺の後ろで身体を小さくしろ!!」

 ルーフェンが叫び、

「【同時詠唱ダブルマジック】ッ! 【魔法障壁マジックバリア】、【衝撃吸収ショックアブソーバー】ッ!!」

 とすぐさま詠唱し、両手を前へとかざす。

 淡い青と緑の障壁がルーフェンの手の平から広範囲を護るように展開された。

「私も手伝うッ! 【魔力抵抗レデュースマジック】ッ!」

 ほぼ同時にシュバルツが自身を中心にして、魔法から身を守る力を上昇させる魔法を展開。

 直後。

「衝撃に備えろッ!」

 ルーフェンが叫ぶと同時に、

 ズォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!

 と、かつてない振動と熱波が私たちを襲った。

「「きゃあああああああああああーーーーッ!」」

 あまりの衝撃に、私はシュバルツ様の背中にギュッと強く抱きついた。

「ゔぐぐぐ……な、なんつー威力だ! 俺とシュバルツ兄様のコレでもこのプレッシャーかよッ! クソッタレがぁ! フルパワーだ、オルァーッ!」

 ルーフェンが苦しそうな表情で更に守護系魔法の出力を引き上げる。

 そしてしばらくして、ようやくグレーターデーモンの魔法の効力が沈静化した頃。

「はあッ……はあッ……」

 ルーフェンが肩で息をさながら、ギリっと奥歯を噛み締めて、

「なんて……こった……」

 ルーフェンらしからぬ絶望の表情で、グレーターデーモンの居たその場所を見ていた。

 そしてルーフェンとシュバルツ様の背後で護られた私たちは、全員同じように目を見開き、そして絶句した。

 何故ならグレーターデーモンの周辺は、跡形もなく何もかもを消滅させてしまっていたからである。

「う、嘘……みんな、死んでしまったんですの!?」

 信じられないような光景だった。

 ルーフェンとシュバルツ様の背後で護られていた私たち数十人は無事であったが、それ以外の騎士様や衛兵、他戦士たちは皆、その存在自体も無くなってしまったのである。

 そして更に最悪な事に、その近くの城塞外壁すらも衝撃の余波で破壊してしまっていたのだ。

「こ、こんな状態でマジックデトネイター魔力起爆剤どもまで押し寄せてきたら……王都は……終わりだ……」

 言葉に力を無くしながら、ガクっと、ルーフェンは膝をついた。

 しかし絶望の足音は更に私たちへ追い打ちを掛けてくる。

「……コロス、コロス」

 ゾクっと、背筋が凍るような不気味な声が響く。

 それは先程の爆発を引き起こしたグレーターデーモンから発せられていた。

 あの魔物は、殺意をたぎらせて私たちの方へヒタヒタと歩み寄ってきているのである。

「全員逃げろ……こんな状態でアレと戦っても勝ち目はねえ。すぐに陛下たちに連絡して……」

 ルーフェンが警戒心を高めつつ、そう言った時。

「私に任せよッ!!」

 そう言って私たちの前へと歩み出たのは、まさかのダリアス様だった。

「ダリアス! キミでは無理だ!」

 シュバルツ様がそう引き止めるが、

「ふん! たかが少し魔力が上がったからと調子に乗りおって! 能無し貴族が私に指図するんじゃあないッ!」

 ダリアス様はシュバルツ様に助けられたというのに、強気の姿勢を崩さず、そう言い放つ。

「……やめとけダリアス。てめぇじゃ殺されて終わりだ」

 ルーフェンもそう説得するが、

「みくびるな! 私を誰だと思っているッ! マクシムス家、最高にして最強の魔導師、ダリアス・マクシムスであるぞッ! あのような下等な魔物、私の魔法ですぐに蹴散らしてくれるわッ!」

「やめろ! 迂闊に手を出すんじゃねえ!」

「うるさい! 黙って見ておれッ!」

 そう言うとダリアス様は魔力を練成し、

「喰らえ! 我が最大の火炎魔法、【ファイアボール】ッ!!」

 グレーターデーモンへと大きな火球を発射させる。

 私から離れ、魔力が落ち始めているはずとはいえ、まだ上位魔法が扱えるのには驚かされた。

 が。

 それを避けようとすらもせず、グレーターデーモンは火球に包まれた。

「はーっはっはっは! 見たか! 奴め、よけきれずに燃え尽きおったわッ! 我が火炎魔法は並の魔導師とは速さも威力も比べ物にならんのだぁッ!」

 と、勝ち誇るダリアス様だったが、私ですらわかる。

 あの程度の攻撃魔法ではグレーターデーモンに傷ひとつ付ける事すら叶わないという事に。

「はーっはっは……はえ?」

 ダリアス様が違和感に気付いた直後。

 ピシュンッ! と高速な何かが、ダリアス様が放った火炎に包まれているグレーターデーモンのいる方向から打ち出された。

 そしてそれはドシュッと、ダリアス様の右肩を一瞬で貫いたのである。

「ぎぃやぁぁぁぁあああああーーッ! い、いでぇええええええ!!」

 肩に小さな風穴を空けられたダリアス様は、地べたに転がりのたうち回る。

「いでぇよぉおおおおおッ! うぐぁぁああああッ! 死ぬぅううううッ!! だ、誰か助けろぉおおお!」

 あまりに下品な叫び声にその場にいた全員が彼を、残念そうに見下ろしていた。

「……【聖なる癒しセイクリッドヒール】」

 そんな中、シュバルツ様だけが彼の肩に手を当て、魔法で彼の傷を癒した。

「い、痛みが引いて……」

「ダリアス、よく聞け」

 シュバルツ様が真面目な顔でダリアス様の目を見据えて、

「アレはグレーターデーモン。魔界の中でも最強種の魔族なのだ。上位魔法程度では傷をつける事などほぼ不可能だ」

「そ、そんな化け物が何故、急にこんな場所に……!?」

「おそらく私が捕らえたあの召喚師が、自らの命を犠牲にして呼び出した最強にして最後の一手なのだろう」

「そ、そそ、それでは全て貴様のせいではないかッ! この能無し貴族めがッ! 全部貴様のせいだッ!」

 そんなダリアス様の言葉についに、私は我慢の限界となり、

 パァンッ!

 と彼の頬を力一杯ひっぱたいた。

「ダリアス様ッ! 貴方はどこまで愚かなのですか! 誰も貴方の事なんて見ておりませんッ! 助けようとすらしておりませんッ! そんな中、シュバルツ様だけは貴方のような方の傷ですら、癒してくれたというのにッ!!」

 私の言葉を聞き、ダリアス様は辺りを見回す。セシリア含め、誰一人としてダリアス様に手を差し伸べようとした者などいなかった事を、皆の視線や距離感から、ようやく愚かで大馬鹿なダリアス様でも気づいたようだ。

「……」

 おかげでようやく彼は静かになった。

「そんな馬鹿は放っておけ! 全員早く逃げろッ!」

 ルーフェンが声を荒げる。

「くるぞッ!」

 ルーフェンの言葉通り、グレーターデーモンは私たちに向かって突撃してきた。

「やれるだけやるっきゃねえ! 戦えるやつぁ、ありったけの魔法で奴を足止めしろぉッ!」

「「おおーッ!!」」


 ルーフェンの合図と共に、その場にいた魔導師や騎士様たちは、持てる力の全てでグレーターデーモンに攻撃魔法をぶつけたのだった。



感想 3

あなたにおすすめの小説

外れ伯爵家の三女、領地で無双する

森のカフェしっぽっぽ
ファンタジー
十三歳の少女アイリス・アルベールは、人生を決める「祝福の儀」で“ゴミスキル”と蔑まれる《アイテムボックス》を授かってしまう。戦えず、稼げず、価値もない――そう断じた家族は、彼女を役立たずとして家から追放する。さらに、優秀なスキルであれば貴族に売り渡すつもりだったという冷酷な真実まで明かされ、アイリスはすべてを失う。 だが絶望の中、彼女は気付く。この世界が、自分がかつてやり込んだVRMMORPG『メデア』そのものであることに。 そして思い出す―― 《アイテムボックス》には、ある“致命的なバグ”が存在することを。 市場で偶然を装いながらアイテムを出し入れし、タイミングをずらすことで発生する“複製バグ”。それは、あらゆる物資を無限に増やす禁断の裏技だった。 食料も、装備も、資金も――すべてが無限。 最底辺から一転、誰にも真似できないチートを手にしたアイリスは、冒険者として歩み始める。だがその力はやがて、経済を歪め、権力者の目に留まり、そして世界の“仕様そのもの”に干渉していくことになる。 これは―― ゴミと呼ばれた少女が、“世界の裏側”を掌握する物語。

無能勇者の黙示録~勝手に召喚されて勝手に追放されたので勝手に旅に出ます~

枯井戸
ファンタジー
力も強くない、足も速くない、魔法も使えないし、頭も大してよくない、どこにでもいるちょっとオタク趣味の主人公・東雲真緒が白雉国に勇者として転生する。 同期の勇者はそれぞれ力が強かったり、魔法が使えたり、回復ができたりと各々の才能を開花させ頭角を現していくのだが、真緒に与えられた才能は異世界転生モノでよく見る〝ステータスオープン〟のみだった。 仲間には使えないと蔑まれ、ギルドには落第勇者の烙印を押され、現地人には殺害されかけ、挙句の果てに大事な人を亡くし、見ず知らずの土地の最底辺で生きていくことになった真緒だったが、彼女はまだ〝ステータスオープン〟の可能性に気づいていないだけだった。 ───────────── ※投稿時間は多少前後しますが毎日投稿は続けていくつもりです。 ※タイトルは予告なしにガラリと変わる場合があるのでご了承ください。 ※表紙は現在の主人公のイメージ図です。もしまた別の国へ行く場合、彼女の装いも変化するかもしれません。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?

タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。 白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。 しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。 王妃リディアの嫉妬。 王太子レオンの盲信。 そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。 「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」 そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。 彼女はただ一言だけ残した。 「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」 誰もそれを脅しとは受け取らなかった。 だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。

企業再生のプロ、倒産寸前の貧乏伯爵に転生する 

namisan
ファンタジー
数々の倒産寸前の企業を立て直してきた敏腕コンサルタントの男は、過労の末に命を落とし、異世界で目を覚ます。  転生先は、帝国北部の辺境にあるアインハルト伯爵家の若き当主、アレク。  しかし、そこは「帝国の重荷」と蔑まれる、借金まみれで領民が飢える極貧領地だった。  凍える屋敷、迫りくる借金取り、絶望する家臣たち。  詰みかけた状況の中で、アレクは独自のユニーク魔法【構造解析(アナライズ)】に目覚める。  それは、物体の構造のみならず、組織の欠陥や魔法術式の不備さえも見抜き、再構築(クラフト)するチート能力だった。  「問題ない。この程度の赤字、前世の案件に比べれば可愛いものだ」  前世の経営知識と規格外の魔法で、アレクは領地の大改革に乗り出す。  痩せた土地を改良し、特産品を生み出し、隣国の経済さえも掌握していくアレク。  そんな彼の手腕に惹かれ、集まってくるのは一癖も二癖もある高貴な美女たち。 これは、底辺から這い上がった若き伯爵が、最強の布陣で自領を帝国一の都市へと発展させ、栄華を極める物語。

魔物に嫌われる「レベル0」の魔物使い。命懸けで仔犬を助けたら―実は神域クラスしかテイムできない規格外でした

たつき
ファンタジー
魔物使いでありながらスライム一匹従えられないカイルは、3年間尽くしたギルドを「無能」として追放される。 同世代のエリートたちに「魔物避けの道具」として危険な遺跡に連れ出され、最後は森の主(ヌシ)を前に囮として見捨てられた。 死を覚悟したカイルが崩落した壁の先で見つけたのは、今にも息絶えそうな一匹の白い仔犬。 「自分と同じように、理不尽に見捨てられたこの子だけは助けたい」 自分の命を顧みず、カイルが全魔力を込めて「テイム」を試みた瞬間、眠っていた真の才能が目覚める。

無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから―― ※ 他サイトでも投稿中

愚かな者たちは国を滅ぼす【完結】

春の小径
ファンタジー
婚約破棄から始まる国の崩壊 『知らなかったから許される』なんて思わないでください。 それ自体、罪ですよ。 ⭐︎他社でも公開します