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第一部
46話 落ちぶれゆく者。最後の抗い
「問題はここからだ」
ルーフェンの言葉に、シュバルツ様やルーラたち含め、生き残ったこの場にいる全員が頷く。
それもそのはず。
もう間もなく召喚師が呼び出した大量のマジックデトネイター付きの魔物たちが大群で押し寄せてくるのだから。
「参ったぜ。こっちはただでさえさっきのグレーターデーモンに大勢の仲間がやられちまって、戦力ガタ落ちだってのに、これから大群がやってきちまうとはな……。早いところ陛下たちの方から援軍が来てくれれば良いが……」
ルーフェンはグレーターデーモンが現れる前に、一人の騎士様にこの緊急事態を陛下へと伝えさせ、至急応援を寄越してもらうように依頼している。
ルヴァイクの召喚師が呼び出したマジックデトネイターたちは、数百にも及ぶ。
それらを可能な限り、ここで食い止めなければならない。
その為には多くの力が必要だ。
「ふ、ふふ。今度こそ私の番だな」
すると、そう声をあげたのはダリアス様。
「あん? ダリアス、てめえ馬鹿の癖になんか策があんのか?」
ルーフェンは仮にも侯爵令息であるダリアス様相手に、もはや敬意を払うつもりは皆無のようである。
「マジックデトネイター付きの魔物は、単体単体は非常に弱い魔物ばかりだ! だったら王都に近づけさせる前に一気に片付けてしまえば問題はなかろう!?」
「そりゃあそうだが……」
「私の数ある上位魔法の一つ、爆破系魔法の【フィルバースト】ならば、一発の威力は低くても広範囲に渡って雑魚どもを蹴散らせるッ! これならば奴らが王都に辿り着く前に片付けられるであろう!?」
「まぁそりぁそうだが、てめえなんぞに南の森から波状で広がりながら進軍してくる魔物ども全部をカバーするほどの力があんのかよ?」
「ふん。みくびるなよ! 【フィルバースト】は、私が最も得意とする魔法だぞ! 数百程度の魔物など、瞬殺である!」
ふふんと、偉そげにダリアス様は胸を張る。
「キャー! さすがはダリアス様ですわ! やっぱりこの王都を救う勇者様はダリアス様に他なりませんわぁーッ!」
さっきまでシュバルツ様の凄さに圧巻の表情をしていたセシリアは、再びダリアス様を持ち上げ出した。
「……ちょっとあっちに向かって試し打ちしてみろ」
ルーフェンが何もない平原の方を指差し、ダリアス様にそう命じた。
「ふん、やはり気になるようだな!? ではその眼をしかと見開き、刮目せよ! はあぁぁぁぁぁぁ……」
ダリアス様は全身に魔力を行き渡らせ、
「万物よ爆ぜろッ! 【フィルバースト】ォォオッ!」
そう叫んで何もない平原方面に向けて手のひらをかざした。
……。
……。
……?
全員がその結果を眺めていたが、爆発はおろか、なんの魔法も発動される様子はない。
「やっぱりな」
「な、何故だ!? 何故私の魔法は発動せん!?」
「てめぇよぉ、さっきグレーターデーモンに【ファイアボール】を撃ったよな。アレがてめぇには限界だったんだよ」
「ま、まさか魔力切れ……だと……!? そ、そんなはずはない! 私には膨大な魔力が……ッ!」
「そんなのは知らねえ。だが、てめえは今日、試練でも魔力を馬鹿みたいに使ってんだろ? そんな奴が膨大な魔力を使う【フィルバースト】なんざ、使えるわけねえんだよ。だいたい【フィルバースト】は賢者級の魔導師の魔力がフルパワーでも一発撃てるかどうかって魔法だ。てめぇなんかに撃てるもんかよ」
「だ、だが以前は確かにできたのだッ!」
「そんなのは知らねえっつってんだろ。そもそも俺ですら【フィルバースト】なんて高難易度で高キャパシティのコスパの悪い魔法なんか習得してねえってのに、よくもてめぇなんかが取得できたもんだ。シュバルツ兄様ぐれぇ魔力がありゃあ話は別かもしれねえがな?」
「……ぐ、く」
「ハッキリ言うがな? そもそもさっきてめぇがグレーターデーモンに撃ったあの【ファイアボール】の威力からお察しなんだわ。あんなの、覚えたての雑魚魔導師が使う程度の威力さ。それすらも自分でわからなかったのか?」
「わ、私が……雑魚だと……」
「てめぇみたいな三下じゃ、話にもならねえ。邪魔だから、大人しくすっこんでろ」
ルーフェンの捨て台詞に、ダリアス様は言い返す事なく俯いた。
「おい! ここにはダリアスより魔法力がある奴はまだいるだろう! やれるやつは、可能な限り迎撃に参加してくれッ!」
しかしルーフェンの呼び掛けにすぐに応じる者はほとんどいない。
皆、先程のグレーターデーモンに恐れ慄き、そのほとんどが逃げ去ってしまったからである。
「こんな数じゃ、とてもじゃねえが……」
ルーフェンが困り果てた顔でそう呟くと。
「ルーフェン殿」
シュバルツ様がルーフェンに声を掛けた。
「私の最後の賭け、乗ってもらえるだろうか?」
●○●○●
大正門前で生き残った人々のほとんどは、今や王都の外壁内に避難している。
しかしそれ以外にも多くの人らが外壁の上から固唾を飲んでシュバルツ様たちを見守っていた。
結局マジックデトネイターたちが一斉に王都内部へと流れ込めば、どこにいても大きな被害を被るのは避けようがない。
だからこそ、最後の勝負に出る、と言ったシュバルツ様を見守る事にしたのである。
「シュバルツ兄様、本当にできんのか?」
ルーフェンが隣で尋ねる。
「わからぬ。だが、やるしかない」
「それもそうか。……で、なんで姉様もいるんだよ?」
この場に残ったのはシュバルツ様とルーフェンと私だけ。
ルーラも執拗に残ると言っていたが、彼女にはもしもの時の為に、外壁上部から私たちを見守っていてほしいと頼んでおいた。いざとなれば、彼女の【空間転移】が少しでも皆の役に立つかもしれないと考えたからだ。
もしもこれが成功しなかった時、可能な限り街の人を助けてもらう為に。
「私はもう何があってもシュバルツ様から離れません。それは彼を愛しているからでもあり、皆の為でもあるからです」
「皆の為……ってのは、どういう……?」
「ルーフェン殿! 来たぞッ!」
シュバルツ様が声をあげた。
森の方は目をやると、無数の小さな大群が見える。
「やるっきゃねえな。で、シュバルツ兄様、俺ぁ何をすりゃいいんだ?」
「ルーフェン殿、風魔法は極められているか?」
「つまり【エアロブラスト】の最上位、【エアリアルストーム】の事を言ってるんだな? もちろん使えるぜ」
「さすがだ。それをこの王都の外壁沿い、両サイドに目一杯展開する事は可能か?」
「できるな。だが、それで奴らの方へとストームを押し寄せたところで、風魔法に殺傷能力はねえ。奴らを仕留めるのは不可能だぜ?」
「充分だ。それで両サイドからやや中央に奴らを集めてくれさえすれば、敵は私が全て撃ち漏らしなく片付けて見せよう」
「片付けるっつったって、シュバルツ兄様にそんな広範囲の魔法が撃てたか?」
「……結局私は最初から最後まで、最も得意なのは電撃魔法だ。だから使うのは【ライトニングボルト】だ」
「だがそれじゃ、俺の風魔法で中央に寄せたところで、ほとんど潰せねえんじゃ……」
「ひとつ、試したいのだ。【ライトニングボルト】を更に昇華させた魔法を」
「更に……?」
「もう時間がない。ルーフェン殿、まずは任せたッ!」
「わかった、やってやるぜ!」
ついに押し寄せるマジックデトネイター付きの魔物たちが、こちらに向かって襲ってきた。
私はそんな魔物たちよりも、ただひたすらにシュバルツ様に寄り添い、そして彼だけを見上げていた。
シュバルツ様のその顔に諦めの表情は微塵もない。
だから私は信じてる。
「リフィルさん、怖いか?」
彼は大群の魔物たちから目を逸らさず、私へ気遣いの言葉を掛けてくれた。
私は顔を横に振り、
「ちっとも。だって、隣で貴方がいてくださいますから」
「そうか。うん、私もだ。リフィルさん、キミが横にいてくれるだけで、私には無限の力が湧き出る」
「シュバルツ様」
「リフィルさん」
私たちは共に愛する者の名を呼び、
「「いつまでもあなたを愛しています」」
ルーフェンの言葉に、シュバルツ様やルーラたち含め、生き残ったこの場にいる全員が頷く。
それもそのはず。
もう間もなく召喚師が呼び出した大量のマジックデトネイター付きの魔物たちが大群で押し寄せてくるのだから。
「参ったぜ。こっちはただでさえさっきのグレーターデーモンに大勢の仲間がやられちまって、戦力ガタ落ちだってのに、これから大群がやってきちまうとはな……。早いところ陛下たちの方から援軍が来てくれれば良いが……」
ルーフェンはグレーターデーモンが現れる前に、一人の騎士様にこの緊急事態を陛下へと伝えさせ、至急応援を寄越してもらうように依頼している。
ルヴァイクの召喚師が呼び出したマジックデトネイターたちは、数百にも及ぶ。
それらを可能な限り、ここで食い止めなければならない。
その為には多くの力が必要だ。
「ふ、ふふ。今度こそ私の番だな」
すると、そう声をあげたのはダリアス様。
「あん? ダリアス、てめえ馬鹿の癖になんか策があんのか?」
ルーフェンは仮にも侯爵令息であるダリアス様相手に、もはや敬意を払うつもりは皆無のようである。
「マジックデトネイター付きの魔物は、単体単体は非常に弱い魔物ばかりだ! だったら王都に近づけさせる前に一気に片付けてしまえば問題はなかろう!?」
「そりゃあそうだが……」
「私の数ある上位魔法の一つ、爆破系魔法の【フィルバースト】ならば、一発の威力は低くても広範囲に渡って雑魚どもを蹴散らせるッ! これならば奴らが王都に辿り着く前に片付けられるであろう!?」
「まぁそりぁそうだが、てめえなんぞに南の森から波状で広がりながら進軍してくる魔物ども全部をカバーするほどの力があんのかよ?」
「ふん。みくびるなよ! 【フィルバースト】は、私が最も得意とする魔法だぞ! 数百程度の魔物など、瞬殺である!」
ふふんと、偉そげにダリアス様は胸を張る。
「キャー! さすがはダリアス様ですわ! やっぱりこの王都を救う勇者様はダリアス様に他なりませんわぁーッ!」
さっきまでシュバルツ様の凄さに圧巻の表情をしていたセシリアは、再びダリアス様を持ち上げ出した。
「……ちょっとあっちに向かって試し打ちしてみろ」
ルーフェンが何もない平原の方を指差し、ダリアス様にそう命じた。
「ふん、やはり気になるようだな!? ではその眼をしかと見開き、刮目せよ! はあぁぁぁぁぁぁ……」
ダリアス様は全身に魔力を行き渡らせ、
「万物よ爆ぜろッ! 【フィルバースト】ォォオッ!」
そう叫んで何もない平原方面に向けて手のひらをかざした。
……。
……。
……?
全員がその結果を眺めていたが、爆発はおろか、なんの魔法も発動される様子はない。
「やっぱりな」
「な、何故だ!? 何故私の魔法は発動せん!?」
「てめぇよぉ、さっきグレーターデーモンに【ファイアボール】を撃ったよな。アレがてめぇには限界だったんだよ」
「ま、まさか魔力切れ……だと……!? そ、そんなはずはない! 私には膨大な魔力が……ッ!」
「そんなのは知らねえ。だが、てめえは今日、試練でも魔力を馬鹿みたいに使ってんだろ? そんな奴が膨大な魔力を使う【フィルバースト】なんざ、使えるわけねえんだよ。だいたい【フィルバースト】は賢者級の魔導師の魔力がフルパワーでも一発撃てるかどうかって魔法だ。てめぇなんかに撃てるもんかよ」
「だ、だが以前は確かにできたのだッ!」
「そんなのは知らねえっつってんだろ。そもそも俺ですら【フィルバースト】なんて高難易度で高キャパシティのコスパの悪い魔法なんか習得してねえってのに、よくもてめぇなんかが取得できたもんだ。シュバルツ兄様ぐれぇ魔力がありゃあ話は別かもしれねえがな?」
「……ぐ、く」
「ハッキリ言うがな? そもそもさっきてめぇがグレーターデーモンに撃ったあの【ファイアボール】の威力からお察しなんだわ。あんなの、覚えたての雑魚魔導師が使う程度の威力さ。それすらも自分でわからなかったのか?」
「わ、私が……雑魚だと……」
「てめぇみたいな三下じゃ、話にもならねえ。邪魔だから、大人しくすっこんでろ」
ルーフェンの捨て台詞に、ダリアス様は言い返す事なく俯いた。
「おい! ここにはダリアスより魔法力がある奴はまだいるだろう! やれるやつは、可能な限り迎撃に参加してくれッ!」
しかしルーフェンの呼び掛けにすぐに応じる者はほとんどいない。
皆、先程のグレーターデーモンに恐れ慄き、そのほとんどが逃げ去ってしまったからである。
「こんな数じゃ、とてもじゃねえが……」
ルーフェンが困り果てた顔でそう呟くと。
「ルーフェン殿」
シュバルツ様がルーフェンに声を掛けた。
「私の最後の賭け、乗ってもらえるだろうか?」
●○●○●
大正門前で生き残った人々のほとんどは、今や王都の外壁内に避難している。
しかしそれ以外にも多くの人らが外壁の上から固唾を飲んでシュバルツ様たちを見守っていた。
結局マジックデトネイターたちが一斉に王都内部へと流れ込めば、どこにいても大きな被害を被るのは避けようがない。
だからこそ、最後の勝負に出る、と言ったシュバルツ様を見守る事にしたのである。
「シュバルツ兄様、本当にできんのか?」
ルーフェンが隣で尋ねる。
「わからぬ。だが、やるしかない」
「それもそうか。……で、なんで姉様もいるんだよ?」
この場に残ったのはシュバルツ様とルーフェンと私だけ。
ルーラも執拗に残ると言っていたが、彼女にはもしもの時の為に、外壁上部から私たちを見守っていてほしいと頼んでおいた。いざとなれば、彼女の【空間転移】が少しでも皆の役に立つかもしれないと考えたからだ。
もしもこれが成功しなかった時、可能な限り街の人を助けてもらう為に。
「私はもう何があってもシュバルツ様から離れません。それは彼を愛しているからでもあり、皆の為でもあるからです」
「皆の為……ってのは、どういう……?」
「ルーフェン殿! 来たぞッ!」
シュバルツ様が声をあげた。
森の方は目をやると、無数の小さな大群が見える。
「やるっきゃねえな。で、シュバルツ兄様、俺ぁ何をすりゃいいんだ?」
「ルーフェン殿、風魔法は極められているか?」
「つまり【エアロブラスト】の最上位、【エアリアルストーム】の事を言ってるんだな? もちろん使えるぜ」
「さすがだ。それをこの王都の外壁沿い、両サイドに目一杯展開する事は可能か?」
「できるな。だが、それで奴らの方へとストームを押し寄せたところで、風魔法に殺傷能力はねえ。奴らを仕留めるのは不可能だぜ?」
「充分だ。それで両サイドからやや中央に奴らを集めてくれさえすれば、敵は私が全て撃ち漏らしなく片付けて見せよう」
「片付けるっつったって、シュバルツ兄様にそんな広範囲の魔法が撃てたか?」
「……結局私は最初から最後まで、最も得意なのは電撃魔法だ。だから使うのは【ライトニングボルト】だ」
「だがそれじゃ、俺の風魔法で中央に寄せたところで、ほとんど潰せねえんじゃ……」
「ひとつ、試したいのだ。【ライトニングボルト】を更に昇華させた魔法を」
「更に……?」
「もう時間がない。ルーフェン殿、まずは任せたッ!」
「わかった、やってやるぜ!」
ついに押し寄せるマジックデトネイター付きの魔物たちが、こちらに向かって襲ってきた。
私はそんな魔物たちよりも、ただひたすらにシュバルツ様に寄り添い、そして彼だけを見上げていた。
シュバルツ様のその顔に諦めの表情は微塵もない。
だから私は信じてる。
「リフィルさん、怖いか?」
彼は大群の魔物たちから目を逸らさず、私へ気遣いの言葉を掛けてくれた。
私は顔を横に振り、
「ちっとも。だって、隣で貴方がいてくださいますから」
「そうか。うん、私もだ。リフィルさん、キミが横にいてくれるだけで、私には無限の力が湧き出る」
「シュバルツ様」
「リフィルさん」
私たちは共に愛する者の名を呼び、
「「いつまでもあなたを愛しています」」
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