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第一部
47話 女神の祝福(エターナル・ラヴァー)
「シュバルツ兄様を信じるぜ! いくぞ!」
ルーフェンが声を上げ、
「ありったけの魔力を注ぎ込んでやるッ! 最大出力だ! 【エアリアルストーム】ッ!」
その両手を真横に広げ、巨大な暴風を王都を包む外壁沿いに発生させる。
「ぅ、ぉ、ぉおおおおおおおおッッッ!」
ルーフェンの凄まじい魔力で生み出された巨大な暴風は、彼の操作によって次第に前方へと押し出されていく。
「さすがだ、ルーフェン殿。では私も頑張らねば」
「大丈夫です。シュバルツ様なら必ず!」
シュバルツ様は私の言葉を聞いて、一目私を見た後笑顔でこくんと頷いた。
そしてシュバルツ様は電撃魔力を練成。
いまだかつてないほどの魔力をその両手に込めた。
「これが私の、私たちの魔力だッ! 【ライトニングボルト】ッ!!」
そう魔法を唱え、天から神の雷とも例えられるほどの巨大な電撃を、遠方から襲い来る魔物たちの中心部に向けて放つ。
その電撃を受けた魔物たちは自爆コアを誘発し、次々に爆発を起こしていく。
「さすがはシュバルツ兄様だ、すげぇ威力の【ライトニングボルト】だぜ……。けど……」
ルーフェンの言う通り、その範囲はやはり知れている。
誘爆を引き起こして全て壊滅させようという考えだったのかもしれないが、それも魔物たちが距離を取るようになり、さほど誘爆しきれず、処理できた数は数十匹程度でしかない。
これではとてもじゃないが、魔物たちのほとんどはこの王都付近にまで辿り着いてしまう。
「私の本懐はここからだッ! 【ライトニング・スパーク】ッ!」
そう叫んだシュバルツ様は、【ライトニングボルト】の効果によって倒されバラバラになった残骸にバチバチと火花を散らし続けている電撃の残り香から、まるで感染させるかのように新たな電撃を次々と生み出し、近くの物体、魔物に飛び火させていく。
「な!? と、とんでもねえ事をしやがる! まさか『魔法の残滓から、更に魔法を発動』させるなんて芸当をするなんて……だから【ライトニング・スパーク】かッ!」
ルーフェンが感嘆したように声をあげた。
「す、すごいです、シュバルツ様! 魔物たちがどんどん電撃につられて誘爆していきます!」
私もルーフェン同様に声をあげた。
だが、そのシュバルツ様は。
「ぅぐッく、お、お、ぉおおおおおおおおおッ!!」
私やルーフェンの声など届かないほどに、今も尚、放ち続けている【ライトニング・スパーク】に全神経を集中させている。
「ルーフェン! シュバルツ様のお顔が……ッ!」
彼の顔色は真っ赤に染まり、浮き出した血管が今にもはち切れんばかりであり、とても見ていられない。
「そ、そりゃあそうもなるぜ……。シュバルツ兄様がやってんのは、言うなれば【ライトニングボルト】の絶え間ない連発みてえなもんだ。こんな芸当、俺にすら……いや、誰一人できやしねえ……」
シュバルツ様は待て余していた魔力を今、まさに全力で振り絞っている。
私から与えられた力で、全てを守る為に。
「シュバルツ……様……」
私は彼の苦しそうな表情を見て、思わず涙を零しそうになる。
けれど。
(泣かないッ! ここで私が泣いてどうするんですのッ!)
そう強く思い、涙を堪えた。
「ぐぅうぅぅううううぅうううぅううッ!!!」
シュバルツ様はひたすらに【ライトニングボルト】を絶え間なく生み出す【ライトニング・スパーク】を発動し続けた。
その効果は絶大で、無数に見えていた魔物の大群はみるみるうちに数を激減させていく。
「いいぞ! シュバルツ兄様! 半分以上は蹴散らしたッ!」
しかしルーフェンの言葉にシュバルツ様は反応する余裕すらない。
代わりに、
「ルーフェン! 貴方は【エアリアルストーム】で、散り散りになっている魔物たちが中央に集まるように、しっかりコントロールして差し上げてッ!」
私がルーフェンへとそう指示を出す。
「わかってるぜ姉様! うぉりゃぁあああっ!」
ルーフェンの【エアリアルストーム】で追いやられた魔物が、シュバルツ様の【ライトニング・スパーク】に被弾し、そして爆発。
ひたすらにその繰り返しだったが、確実にマジックデトネイター付きの魔物たちは減らしている。
「よし! あと一息だ! シュバルツ兄様、あの集団を蹴散らしちまえば……ッ!」
ルーフェンがそう言うと同時に。
ドサリ、と、私の隣で奮闘していたシュバルツ様がその場で倒れ込んだ。
「シュバルツ様ぁッ!?」
「シュバルツ兄様!? く、くそ! 限界かッ!」
「……す、すま、ない。ちょ、っと……だけ、気を抜いた……だけだ」
シュバルツ様はすぐに体を起こし、膝を震えさせながら立ちあがろうとした。
駄目だ。
シュバルツ様はもう限界。身体中は無理やり引き出した魔力のせいで焼けるように熱く暴走し、顔の血管や鼻からも出血している。
このままじゃ彼は本当に死んでしまう。
どうすれば……どうしたらいいの!?
「ラ……ライトニング……」
シュバルツ様が再び魔法を唱えようと試みる。
が、しかし。
「ぅ、ぐぅうッ!?」
彼は頭を押さえて苦痛の表情を浮かべた。
「無理だ……シュバルツ兄様の身体はもう限界だ。あり得ねえぐらいに魔力を急激放出させすぎた。それ以上は命に関わる……」
ルーフェンは残念そうに呟く。
魔力さえ……彼にもっと、もっとたくさんの魔力さえ差し上げられればッ!
私は当然今も【魔力提供】は行ない続けている。
でも、これだけじゃ足らないッ!
もっと、もっと、もっと彼に魔力を!
力を!
彼を、皆を助ける為の力が欲しいッ!!
私がそう強く願い思わず、
「私の力でシュバルツ様を、皆を助けたいのッ! 私に宿っているこの魔……ッ!」
そこまで叫んだ瞬間。
ズゥゥゥゥゥン……と静かに世界は暗転した。
ああ、また禁忌、か。
『リフィル』
懐かしい声。テロメア様の声だ。この全てが静止した世界でテロメア様の声が響くなんて初めてだ。
『聞こえているね、リフィル。キミはまた禁忌を犯そうとした。だからいい加減、魔法をキミに授けた主として警告に来たんだ』
警告……まさか私からこの魔法を奪うつもりだろうか。
「魔法の制約はその効果によって比例して強くなる。キミの【魔力提供】はそれだけでも驚異的な魔法だ。その分、他言を禁じる制約がある。それは何故かわかるかい?」
わかるわけもない。
私がコレを伝えられればこれまでももっともっと、楽に事が進められたはずなのに。
『それは世界の秩序を保つ為だ。制約とは一定の秩序を保つ為にある。それが世のことわりだからだ』
そうなんですのね。でも、そんな事今更告げられましても私には……。
『だから制約を破ろうとし続ける者には罰が与えられる事がある』
やはり今回のコレは私への罰なんですわね。
『だが、キミの想いは酷く滑稽で酷く単純で、そして美しいほどに純粋だった。だから罰の代わりにひとつだけ、チャンスをあげるよ』
チャンス?
『このまま【魔力提供】を使えるけれど他言をできない今のままを選ぶか、それとも人生でたった一度きりしか使えないけれど、【魔力提供】の更なる最上位魔法【女神の祝福】に進化させるか、どちらかひとつだけ選んで良い。ただし、前者を選んだ場合、キミには一定時間現実世界に戻れないという簡単な罰を与える事にはなるけれどね』
エターナル……ラヴァー?
『もし【女神の祝福】を選んだなら、それはキミの人生においてたったの一度きりしか使えない。そしてその対象もひとりだけだ。ただしそれは、いまだかつてないほどの強大で絶大な魔力を提供する事が可能になるだろう』
つまり、このまま様々な対象へとずっと使える【魔力提供】か、生涯で一度しか使えない【女神の祝福】という上位魔法に進化させるかを選べ、と。
『さあ、選ぶんだリフィル。キミに残された時間は少ない』
そんなの、悩むまでもない。
私が選ぶのは――。
●○●○●
「……ぉ、い! おい! リフィル姉様! どうしたってんだよ!?」
ルーフェンの必死な声が聞こえる。
「あ!? 良かった、目覚めたか! 一体リフィル姉様まで何があったって……」
ルーフェンの言葉をよそに、私は隣で苦しそうにしているシュバルツ様の背に手を当てる。
「ルーフェン。もう少しだけ、シュバルツ様を信用して、頑張ってくださる?」
「な、何を……!? もうシュバルツ兄様は……」
私はそう言うと、ルーフェンにニコっと笑顔を向けた後、今度はシュバルツ様を正面から一度抱きしめ、
「シュバルツ様、愛しております」
「リ、リフィ……」
私の名を呼ぼうとした彼の顔を両手で包みこむようにし、キスをした。
(これが、私の全力)
彼を想い、そう思い、私は彼へ【女神の祝福】を注ぎ込む。
そして彼と私のその全身は、神々しいまでの黄金の光に包まれたのだった。
ルーフェンが声を上げ、
「ありったけの魔力を注ぎ込んでやるッ! 最大出力だ! 【エアリアルストーム】ッ!」
その両手を真横に広げ、巨大な暴風を王都を包む外壁沿いに発生させる。
「ぅ、ぉ、ぉおおおおおおおおッッッ!」
ルーフェンの凄まじい魔力で生み出された巨大な暴風は、彼の操作によって次第に前方へと押し出されていく。
「さすがだ、ルーフェン殿。では私も頑張らねば」
「大丈夫です。シュバルツ様なら必ず!」
シュバルツ様は私の言葉を聞いて、一目私を見た後笑顔でこくんと頷いた。
そしてシュバルツ様は電撃魔力を練成。
いまだかつてないほどの魔力をその両手に込めた。
「これが私の、私たちの魔力だッ! 【ライトニングボルト】ッ!!」
そう魔法を唱え、天から神の雷とも例えられるほどの巨大な電撃を、遠方から襲い来る魔物たちの中心部に向けて放つ。
その電撃を受けた魔物たちは自爆コアを誘発し、次々に爆発を起こしていく。
「さすがはシュバルツ兄様だ、すげぇ威力の【ライトニングボルト】だぜ……。けど……」
ルーフェンの言う通り、その範囲はやはり知れている。
誘爆を引き起こして全て壊滅させようという考えだったのかもしれないが、それも魔物たちが距離を取るようになり、さほど誘爆しきれず、処理できた数は数十匹程度でしかない。
これではとてもじゃないが、魔物たちのほとんどはこの王都付近にまで辿り着いてしまう。
「私の本懐はここからだッ! 【ライトニング・スパーク】ッ!」
そう叫んだシュバルツ様は、【ライトニングボルト】の効果によって倒されバラバラになった残骸にバチバチと火花を散らし続けている電撃の残り香から、まるで感染させるかのように新たな電撃を次々と生み出し、近くの物体、魔物に飛び火させていく。
「な!? と、とんでもねえ事をしやがる! まさか『魔法の残滓から、更に魔法を発動』させるなんて芸当をするなんて……だから【ライトニング・スパーク】かッ!」
ルーフェンが感嘆したように声をあげた。
「す、すごいです、シュバルツ様! 魔物たちがどんどん電撃につられて誘爆していきます!」
私もルーフェン同様に声をあげた。
だが、そのシュバルツ様は。
「ぅぐッく、お、お、ぉおおおおおおおおおッ!!」
私やルーフェンの声など届かないほどに、今も尚、放ち続けている【ライトニング・スパーク】に全神経を集中させている。
「ルーフェン! シュバルツ様のお顔が……ッ!」
彼の顔色は真っ赤に染まり、浮き出した血管が今にもはち切れんばかりであり、とても見ていられない。
「そ、そりゃあそうもなるぜ……。シュバルツ兄様がやってんのは、言うなれば【ライトニングボルト】の絶え間ない連発みてえなもんだ。こんな芸当、俺にすら……いや、誰一人できやしねえ……」
シュバルツ様は待て余していた魔力を今、まさに全力で振り絞っている。
私から与えられた力で、全てを守る為に。
「シュバルツ……様……」
私は彼の苦しそうな表情を見て、思わず涙を零しそうになる。
けれど。
(泣かないッ! ここで私が泣いてどうするんですのッ!)
そう強く思い、涙を堪えた。
「ぐぅうぅぅううううぅうううぅううッ!!!」
シュバルツ様はひたすらに【ライトニングボルト】を絶え間なく生み出す【ライトニング・スパーク】を発動し続けた。
その効果は絶大で、無数に見えていた魔物の大群はみるみるうちに数を激減させていく。
「いいぞ! シュバルツ兄様! 半分以上は蹴散らしたッ!」
しかしルーフェンの言葉にシュバルツ様は反応する余裕すらない。
代わりに、
「ルーフェン! 貴方は【エアリアルストーム】で、散り散りになっている魔物たちが中央に集まるように、しっかりコントロールして差し上げてッ!」
私がルーフェンへとそう指示を出す。
「わかってるぜ姉様! うぉりゃぁあああっ!」
ルーフェンの【エアリアルストーム】で追いやられた魔物が、シュバルツ様の【ライトニング・スパーク】に被弾し、そして爆発。
ひたすらにその繰り返しだったが、確実にマジックデトネイター付きの魔物たちは減らしている。
「よし! あと一息だ! シュバルツ兄様、あの集団を蹴散らしちまえば……ッ!」
ルーフェンがそう言うと同時に。
ドサリ、と、私の隣で奮闘していたシュバルツ様がその場で倒れ込んだ。
「シュバルツ様ぁッ!?」
「シュバルツ兄様!? く、くそ! 限界かッ!」
「……す、すま、ない。ちょ、っと……だけ、気を抜いた……だけだ」
シュバルツ様はすぐに体を起こし、膝を震えさせながら立ちあがろうとした。
駄目だ。
シュバルツ様はもう限界。身体中は無理やり引き出した魔力のせいで焼けるように熱く暴走し、顔の血管や鼻からも出血している。
このままじゃ彼は本当に死んでしまう。
どうすれば……どうしたらいいの!?
「ラ……ライトニング……」
シュバルツ様が再び魔法を唱えようと試みる。
が、しかし。
「ぅ、ぐぅうッ!?」
彼は頭を押さえて苦痛の表情を浮かべた。
「無理だ……シュバルツ兄様の身体はもう限界だ。あり得ねえぐらいに魔力を急激放出させすぎた。それ以上は命に関わる……」
ルーフェンは残念そうに呟く。
魔力さえ……彼にもっと、もっとたくさんの魔力さえ差し上げられればッ!
私は当然今も【魔力提供】は行ない続けている。
でも、これだけじゃ足らないッ!
もっと、もっと、もっと彼に魔力を!
力を!
彼を、皆を助ける為の力が欲しいッ!!
私がそう強く願い思わず、
「私の力でシュバルツ様を、皆を助けたいのッ! 私に宿っているこの魔……ッ!」
そこまで叫んだ瞬間。
ズゥゥゥゥゥン……と静かに世界は暗転した。
ああ、また禁忌、か。
『リフィル』
懐かしい声。テロメア様の声だ。この全てが静止した世界でテロメア様の声が響くなんて初めてだ。
『聞こえているね、リフィル。キミはまた禁忌を犯そうとした。だからいい加減、魔法をキミに授けた主として警告に来たんだ』
警告……まさか私からこの魔法を奪うつもりだろうか。
「魔法の制約はその効果によって比例して強くなる。キミの【魔力提供】はそれだけでも驚異的な魔法だ。その分、他言を禁じる制約がある。それは何故かわかるかい?」
わかるわけもない。
私がコレを伝えられればこれまでももっともっと、楽に事が進められたはずなのに。
『それは世界の秩序を保つ為だ。制約とは一定の秩序を保つ為にある。それが世のことわりだからだ』
そうなんですのね。でも、そんな事今更告げられましても私には……。
『だから制約を破ろうとし続ける者には罰が与えられる事がある』
やはり今回のコレは私への罰なんですわね。
『だが、キミの想いは酷く滑稽で酷く単純で、そして美しいほどに純粋だった。だから罰の代わりにひとつだけ、チャンスをあげるよ』
チャンス?
『このまま【魔力提供】を使えるけれど他言をできない今のままを選ぶか、それとも人生でたった一度きりしか使えないけれど、【魔力提供】の更なる最上位魔法【女神の祝福】に進化させるか、どちらかひとつだけ選んで良い。ただし、前者を選んだ場合、キミには一定時間現実世界に戻れないという簡単な罰を与える事にはなるけれどね』
エターナル……ラヴァー?
『もし【女神の祝福】を選んだなら、それはキミの人生においてたったの一度きりしか使えない。そしてその対象もひとりだけだ。ただしそれは、いまだかつてないほどの強大で絶大な魔力を提供する事が可能になるだろう』
つまり、このまま様々な対象へとずっと使える【魔力提供】か、生涯で一度しか使えない【女神の祝福】という上位魔法に進化させるかを選べ、と。
『さあ、選ぶんだリフィル。キミに残された時間は少ない』
そんなの、悩むまでもない。
私が選ぶのは――。
●○●○●
「……ぉ、い! おい! リフィル姉様! どうしたってんだよ!?」
ルーフェンの必死な声が聞こえる。
「あ!? 良かった、目覚めたか! 一体リフィル姉様まで何があったって……」
ルーフェンの言葉をよそに、私は隣で苦しそうにしているシュバルツ様の背に手を当てる。
「ルーフェン。もう少しだけ、シュバルツ様を信用して、頑張ってくださる?」
「な、何を……!? もうシュバルツ兄様は……」
私はそう言うと、ルーフェンにニコっと笑顔を向けた後、今度はシュバルツ様を正面から一度抱きしめ、
「シュバルツ様、愛しております」
「リ、リフィ……」
私の名を呼ぼうとした彼の顔を両手で包みこむようにし、キスをした。
(これが、私の全力)
彼を想い、そう思い、私は彼へ【女神の祝福】を注ぎ込む。
そして彼と私のその全身は、神々しいまでの黄金の光に包まれたのだった。
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