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第一部
49話 婚約破棄、本当にありがとうございました!
――そんな大事件となった英傑選から、あっという間に日々は過ぎ去り、一年後。
あの後、私とシュバルツ様はすぐに結婚式を挙げた。
シュバルツ様は王国暦最強とまで褒め称えられた英傑の称号を授与されたばかりだった為、多くの人たちが私たちの挙式には集まってくれ、それは盛大なセレモニーとなった。
私はそのままシュバルツ様のお屋敷に住む事になり、その後も英傑選の事や、ダリアス様に関する事情聴取、更にはシュバルツ様に関する今後の身の振り方など様々な事が重なり、結局アルカードへは中々帰れずにいた。
そして今日。一年ぶりに故郷であるアルカード領へと久々の里帰りをしたのである。
「よお! リフィル姉様にシュバルツ兄様! 久しぶりッ!」
「リフィル姉様ぁー! シュバルツ兄様ぁーッ!」
アルカード領、カラム村にて。
馬車でやってきた私とシュバルツ様をルーフェンとルーラが出迎えてくれた。
「久しぶりですわね、ルーフェン、ルーラ。良かったですわ、今回は二人共あんまり変わっていなくて」
「いや、そんな事はないよリフィルさん。ルーフェン殿は更に魔力も向上し、ルーラさんは美しさに磨きがかかっているよ」
「わあ! ありがとうなのです、シュバルツ兄様ッ!」
「っへ。やっぱわかるか? さすがはシュバルツ兄様だぜ」
そんな会話を見ながら、シュバルツ様は相変わらずお人好しだなぁと微笑ましく眺めていた。
「ま、積もる話は屋敷に帰ってからにしようぜ。今回の帰省はシュバルツ兄様もしばらくこっちにいれるんだろ?」
「うむ。ようやくまとまった休みをもらえたのでな」
「そりゃそうだよなぁ。なんてったって今や、エリシオン王国最強の近衛騎士団長様! だけに留まらず、最強の宮廷魔導師に加え、更には魔法学院の特別講師までやってるんだって? よく体がもつぜ。俺ならとっくに逃げ出してるな」
と言って笑うルーフェンだが、実際は南部のルヴァイク共和国とのいざこざやら、アルカード領の事やらでルーフェンとルーラも相当に忙しくしているのは、私たちも知っていた。
「よーし、それじゃ進化したルーラの転移魔法でひとっとび、ですッ!」
彼女の言葉通り、私たち全員はルーラの魔法でアルカードのお屋敷まで転移させてもらったのだった。
●○●○●
屋敷に戻ると、フリックお父様とリアナお母様、それにメイドさんたちも私たちを快く出迎えてくれた。
「やあ、シュバルツくん、リフィル、おかえり。いつも娘が大変にお世話になっているね」
「リフィルちゃぁぁあんッ! すっかり……すっかり人妻になっちゃったわねぇええぇ……」
フリックお父様とリアナお母様は相変わらずの様子だった。
「今キミは陛下直属の近衛騎士団長だけに留まらないで、陛下や殿下、更には太后様たちの相談役とかもこなしているそうだね。さすがはシュバルツくんの人柄と言ったところかな」
「シュバルツさん、とってもお優しいですもの! 私も安心してリフィルちゃんを任せられますわ。そんな優しい雰囲気の癖に、きっと夜は激しめなんでしょう? 母様、そういうのはすぐわかるんですからねー」
「「お母様ッ!!」」
リアナお母様の毎回の下ネタトークに、シュバルツ様は嫌な顔ひとつせず笑っていた。
それから皆で応接間に集まり、最近流行りの紅茶とお菓子を嗜みながら、皆で日が暮れるまで雑談を愉しんだ。
「なあ、兄様。あれからダリアスはどうなったんだ? 俺たちこっちに戻ってから特に何も聞いてなくてな」
ルーフェンが話のネタに尽き始めた頃、そんな事をシュバルツ様に尋ねると、
「うむ、ダリアスは先月、釈放された。だがその後から散々な目に遭っているようだ」
「へえ? そいつぁ面白ぇ話だな。おい、ルーラ、俺の部屋にある極上のワインを一本持ってこいよ。シュバルツ兄様の話が良い酒のつまみになりそうだぜ」
くっくっくと笑いながらルーフェンはまるで、昔の悪戯小僧に戻ったかのような表情をした。
ダリアスがエリシオン王国裁判にて有罪を申し渡され釈放された後、彼はマクシムス家の敷居をまたごうとするも、マクシムス家の衛兵に止められた。何故なら彼は、実の父上であるギリアム様に勘当されてしまっていたからであった。
散々に暴れたダリアスだったがギリアム様は取り合う様子がなかった為、仕方なく彼は妻であるセシリアの屋敷、マーガレット家を尋ねるも、そこでも門前払いとされる。
どうやらマーガレット家もダリアスとは縁を切っていたようで、セシリアはすでにダリアスとの夫婦関係を解消していた。
そんなセシリアも、元夫であったダリアスがあのような不始末を起こしたり、貴族としての名誉も地位も剥奪されたとあり、貴族間では相当に白い目で見られるようになってしまったらしい。
他の貴族婦人らから話を聞いたところ、
「シュバルツなんかがどうしてあんなに凄く……。ダリアスなんかに騙されなければ私だって今頃……悔しいーーーッ! リフィルなんかにシュバルツをあげなきゃ良かったぁあッ! うわぁぁぁーーーんッ!!」
などという愚痴とも絶叫ともわからないおたけびが、夜な夜な毎晩のように屋敷から響いてくるのだとか。
そしてダリアス本人は、王都に居場所など当然無くなり、とある日からパッタリとその行方を眩ましたらしい。
噂によれば南部のルヴァイク共和国に亡命したかもしれないと聞くが、真相はわからない。
どちらにしても魔力もすでに元通りとなり、あの傲慢な性格が変わらなければダリアスにロクな居場所などないだろう。
彼の輝かしいはずの未来は、私の当初の目論見通り完全に閉ざされたのである。
そんな話をルーフェンとルーラは、実に楽しそうにゲラゲラと笑いながら聞いていた。
「でもあれだな、リフィル姉様、ほんっとーに良かったな! ダリアスのクソ野郎に婚約破棄されたおかげで今、姉様も、俺たちもめちゃくちゃ幸せなんだからよお」
ルーフェンの言う通り、私だけでなく私の家族やアルカード領の皆もとても裕福になった。
それというのも全て、英傑として輝かしい功績を残したシュバルツ様のおかげだ。
近衛騎士団長の座に就いた後も、その柔らかい物腰は変わらず、多くの人に好かれ、愛されており、様々な任務や依頼をこなし、シュバルツ様の信頼はとどまる事を知らずに向上。同時にエリシオン王国からのアルカード領への支援も比例して増加していったからである。
ただ、幸せになれた一番の要因はもちろん他にもある。
「それに兄様、更に強くなってるしな」
ルーフェンの言う通り、シュバルツ様はまだまだ成長を続けていた。
「リフィルさんのおかげだよ。彼女が私にいつでも力をくれるんだ」
「「はいはい! ごちそうさま!!」」
と、ルーフェンとルーラがまた茶化していたが、シュバルツ様は本気でそう思っている。
「そういうのは姉様たち二人きりになったら充分に語り合えよ!」
そう言われて私とシュバルツ様は、私の部屋へと移動する事にした。
私は今、なんの魔法も使えない。
テロメア様から告げられ、【魔力提供】が【女神の祝福】へと進化したが、その魔法は一度きりしか使えないという制約があった。
更に後日、精霊の森にてテロメア様に確認したところ、こう告げられた。
『あの魔法は特別中の特別だ。本来ならキミ程度の魔力ではまだ上位進化する事など不可能だったけれど、あの時は特別にキミを贔屓し、恩赦を与えたんだよ。その代わりにキミからはとても大きな代償を貰ったけどね』
その代償とは、私が今後生み出す魔力全てをテロメア様に捧げる事。
つまり、私はもう一切の魔法を覚える事も使う事もできないのである。
それがあの魔法をあの時使わせてもらう条件だった、と後から説明をされた。
でも私は全く後悔していない。
何故ならテロメア様がこう言ったからだ。
『だけどあの魔法は名前の通り、未来永劫、キミが愛した、ただひとりの存在に膨大な魔力を付与し続ける。それが消滅する条件はその相手との関係が破断した場合だけだ』
つまり、シュバルツ様と別れるような事がない限り、私の魔法の効果で永遠にシュバルツ様は強く強くなれるのである。
私の愛が続く限り。
もちろんこんな事、シュバルツ様には話していない。制約でこれも話せないのだが、話す必要性などないと私は思っているからだ。
何故なら――。
「リフィルさん、やはりキミの家族はとても暖かいね」
シュバルツ様が私の部屋で、私と寄り添いながらそう呟く。
「それはシュバルツ様がとても信頼できるお方だからですわ。それにシュバルツ様の人柄が皆に伝播しているんですわ」
「いや、キミの人柄だと私は思うよ」
「ふふ、シュバルツ様って結婚されてからも私にずっとお優しいですわよね」
「当たり前だろう? 私は毎日、毎朝キミを見るたび、いつでも恋し直すくらいに、キミを愛おしく感じているのだから」
「シュバルツ様……凄く、嬉しいです……」
でもそれは私も同じ。
彼の事を見るたびに、毎日彼を愛する感情が生まれ続ける。
これほどまでに人を愛する事ができるのだと、自分でも驚かされるくらいに。
「私の力は本当にキミから授けられたものだ。だから、キミの為に使い続けるとこの心臓に誓っている」
「ありがとうございますわ。私、とても幸せです。貴方と出逢えたあの日から、私は生まれ変われました」
「ある意味ダリアスには礼を言いたいくらいさ。キミの事をふってくれてね」
「まあ。でも当時ダリアス様に暴言を吐かれていた時は、毎日お腹も痛くてロクな人生じゃないと思っていたんですのよ?」
「でも、彼がいなければ私はキミに出逢えなかった。だから、彼にも一応感謝はしているんだ」
「ふふ、どこまでもお人好しですわね」
「彼も反省してくれただろうか」
「ダリアス様に限って、ないですわよ」
「はは、リフィルさんは手厳しいな」
「でも、ダリアス様に婚約破棄されて、本当に良かったです。あの時、本当に心からありがとうございますわ、と思っていましたから。そこから全て始まりましたもの」
そう、シュバルツ様とこうして私を取り囲む環境全てが幸せな世界に進んでいけたのは、ダリアス様の婚約破棄がきっかけ。
だから本当はちょっぴりだけ、ダリアス様に感謝していなくもない。
だから次会う時はこう言ってやりたい。
「婚約破棄してくれて、本当にありがとうございました」
と。
あの後、私とシュバルツ様はすぐに結婚式を挙げた。
シュバルツ様は王国暦最強とまで褒め称えられた英傑の称号を授与されたばかりだった為、多くの人たちが私たちの挙式には集まってくれ、それは盛大なセレモニーとなった。
私はそのままシュバルツ様のお屋敷に住む事になり、その後も英傑選の事や、ダリアス様に関する事情聴取、更にはシュバルツ様に関する今後の身の振り方など様々な事が重なり、結局アルカードへは中々帰れずにいた。
そして今日。一年ぶりに故郷であるアルカード領へと久々の里帰りをしたのである。
「よお! リフィル姉様にシュバルツ兄様! 久しぶりッ!」
「リフィル姉様ぁー! シュバルツ兄様ぁーッ!」
アルカード領、カラム村にて。
馬車でやってきた私とシュバルツ様をルーフェンとルーラが出迎えてくれた。
「久しぶりですわね、ルーフェン、ルーラ。良かったですわ、今回は二人共あんまり変わっていなくて」
「いや、そんな事はないよリフィルさん。ルーフェン殿は更に魔力も向上し、ルーラさんは美しさに磨きがかかっているよ」
「わあ! ありがとうなのです、シュバルツ兄様ッ!」
「っへ。やっぱわかるか? さすがはシュバルツ兄様だぜ」
そんな会話を見ながら、シュバルツ様は相変わらずお人好しだなぁと微笑ましく眺めていた。
「ま、積もる話は屋敷に帰ってからにしようぜ。今回の帰省はシュバルツ兄様もしばらくこっちにいれるんだろ?」
「うむ。ようやくまとまった休みをもらえたのでな」
「そりゃそうだよなぁ。なんてったって今や、エリシオン王国最強の近衛騎士団長様! だけに留まらず、最強の宮廷魔導師に加え、更には魔法学院の特別講師までやってるんだって? よく体がもつぜ。俺ならとっくに逃げ出してるな」
と言って笑うルーフェンだが、実際は南部のルヴァイク共和国とのいざこざやら、アルカード領の事やらでルーフェンとルーラも相当に忙しくしているのは、私たちも知っていた。
「よーし、それじゃ進化したルーラの転移魔法でひとっとび、ですッ!」
彼女の言葉通り、私たち全員はルーラの魔法でアルカードのお屋敷まで転移させてもらったのだった。
●○●○●
屋敷に戻ると、フリックお父様とリアナお母様、それにメイドさんたちも私たちを快く出迎えてくれた。
「やあ、シュバルツくん、リフィル、おかえり。いつも娘が大変にお世話になっているね」
「リフィルちゃぁぁあんッ! すっかり……すっかり人妻になっちゃったわねぇええぇ……」
フリックお父様とリアナお母様は相変わらずの様子だった。
「今キミは陛下直属の近衛騎士団長だけに留まらないで、陛下や殿下、更には太后様たちの相談役とかもこなしているそうだね。さすがはシュバルツくんの人柄と言ったところかな」
「シュバルツさん、とってもお優しいですもの! 私も安心してリフィルちゃんを任せられますわ。そんな優しい雰囲気の癖に、きっと夜は激しめなんでしょう? 母様、そういうのはすぐわかるんですからねー」
「「お母様ッ!!」」
リアナお母様の毎回の下ネタトークに、シュバルツ様は嫌な顔ひとつせず笑っていた。
それから皆で応接間に集まり、最近流行りの紅茶とお菓子を嗜みながら、皆で日が暮れるまで雑談を愉しんだ。
「なあ、兄様。あれからダリアスはどうなったんだ? 俺たちこっちに戻ってから特に何も聞いてなくてな」
ルーフェンが話のネタに尽き始めた頃、そんな事をシュバルツ様に尋ねると、
「うむ、ダリアスは先月、釈放された。だがその後から散々な目に遭っているようだ」
「へえ? そいつぁ面白ぇ話だな。おい、ルーラ、俺の部屋にある極上のワインを一本持ってこいよ。シュバルツ兄様の話が良い酒のつまみになりそうだぜ」
くっくっくと笑いながらルーフェンはまるで、昔の悪戯小僧に戻ったかのような表情をした。
ダリアスがエリシオン王国裁判にて有罪を申し渡され釈放された後、彼はマクシムス家の敷居をまたごうとするも、マクシムス家の衛兵に止められた。何故なら彼は、実の父上であるギリアム様に勘当されてしまっていたからであった。
散々に暴れたダリアスだったがギリアム様は取り合う様子がなかった為、仕方なく彼は妻であるセシリアの屋敷、マーガレット家を尋ねるも、そこでも門前払いとされる。
どうやらマーガレット家もダリアスとは縁を切っていたようで、セシリアはすでにダリアスとの夫婦関係を解消していた。
そんなセシリアも、元夫であったダリアスがあのような不始末を起こしたり、貴族としての名誉も地位も剥奪されたとあり、貴族間では相当に白い目で見られるようになってしまったらしい。
他の貴族婦人らから話を聞いたところ、
「シュバルツなんかがどうしてあんなに凄く……。ダリアスなんかに騙されなければ私だって今頃……悔しいーーーッ! リフィルなんかにシュバルツをあげなきゃ良かったぁあッ! うわぁぁぁーーーんッ!!」
などという愚痴とも絶叫ともわからないおたけびが、夜な夜な毎晩のように屋敷から響いてくるのだとか。
そしてダリアス本人は、王都に居場所など当然無くなり、とある日からパッタリとその行方を眩ましたらしい。
噂によれば南部のルヴァイク共和国に亡命したかもしれないと聞くが、真相はわからない。
どちらにしても魔力もすでに元通りとなり、あの傲慢な性格が変わらなければダリアスにロクな居場所などないだろう。
彼の輝かしいはずの未来は、私の当初の目論見通り完全に閉ざされたのである。
そんな話をルーフェンとルーラは、実に楽しそうにゲラゲラと笑いながら聞いていた。
「でもあれだな、リフィル姉様、ほんっとーに良かったな! ダリアスのクソ野郎に婚約破棄されたおかげで今、姉様も、俺たちもめちゃくちゃ幸せなんだからよお」
ルーフェンの言う通り、私だけでなく私の家族やアルカード領の皆もとても裕福になった。
それというのも全て、英傑として輝かしい功績を残したシュバルツ様のおかげだ。
近衛騎士団長の座に就いた後も、その柔らかい物腰は変わらず、多くの人に好かれ、愛されており、様々な任務や依頼をこなし、シュバルツ様の信頼はとどまる事を知らずに向上。同時にエリシオン王国からのアルカード領への支援も比例して増加していったからである。
ただ、幸せになれた一番の要因はもちろん他にもある。
「それに兄様、更に強くなってるしな」
ルーフェンの言う通り、シュバルツ様はまだまだ成長を続けていた。
「リフィルさんのおかげだよ。彼女が私にいつでも力をくれるんだ」
「「はいはい! ごちそうさま!!」」
と、ルーフェンとルーラがまた茶化していたが、シュバルツ様は本気でそう思っている。
「そういうのは姉様たち二人きりになったら充分に語り合えよ!」
そう言われて私とシュバルツ様は、私の部屋へと移動する事にした。
私は今、なんの魔法も使えない。
テロメア様から告げられ、【魔力提供】が【女神の祝福】へと進化したが、その魔法は一度きりしか使えないという制約があった。
更に後日、精霊の森にてテロメア様に確認したところ、こう告げられた。
『あの魔法は特別中の特別だ。本来ならキミ程度の魔力ではまだ上位進化する事など不可能だったけれど、あの時は特別にキミを贔屓し、恩赦を与えたんだよ。その代わりにキミからはとても大きな代償を貰ったけどね』
その代償とは、私が今後生み出す魔力全てをテロメア様に捧げる事。
つまり、私はもう一切の魔法を覚える事も使う事もできないのである。
それがあの魔法をあの時使わせてもらう条件だった、と後から説明をされた。
でも私は全く後悔していない。
何故ならテロメア様がこう言ったからだ。
『だけどあの魔法は名前の通り、未来永劫、キミが愛した、ただひとりの存在に膨大な魔力を付与し続ける。それが消滅する条件はその相手との関係が破断した場合だけだ』
つまり、シュバルツ様と別れるような事がない限り、私の魔法の効果で永遠にシュバルツ様は強く強くなれるのである。
私の愛が続く限り。
もちろんこんな事、シュバルツ様には話していない。制約でこれも話せないのだが、話す必要性などないと私は思っているからだ。
何故なら――。
「リフィルさん、やはりキミの家族はとても暖かいね」
シュバルツ様が私の部屋で、私と寄り添いながらそう呟く。
「それはシュバルツ様がとても信頼できるお方だからですわ。それにシュバルツ様の人柄が皆に伝播しているんですわ」
「いや、キミの人柄だと私は思うよ」
「ふふ、シュバルツ様って結婚されてからも私にずっとお優しいですわよね」
「当たり前だろう? 私は毎日、毎朝キミを見るたび、いつでも恋し直すくらいに、キミを愛おしく感じているのだから」
「シュバルツ様……凄く、嬉しいです……」
でもそれは私も同じ。
彼の事を見るたびに、毎日彼を愛する感情が生まれ続ける。
これほどまでに人を愛する事ができるのだと、自分でも驚かされるくらいに。
「私の力は本当にキミから授けられたものだ。だから、キミの為に使い続けるとこの心臓に誓っている」
「ありがとうございますわ。私、とても幸せです。貴方と出逢えたあの日から、私は生まれ変われました」
「ある意味ダリアスには礼を言いたいくらいさ。キミの事をふってくれてね」
「まあ。でも当時ダリアス様に暴言を吐かれていた時は、毎日お腹も痛くてロクな人生じゃないと思っていたんですのよ?」
「でも、彼がいなければ私はキミに出逢えなかった。だから、彼にも一応感謝はしているんだ」
「ふふ、どこまでもお人好しですわね」
「彼も反省してくれただろうか」
「ダリアス様に限って、ないですわよ」
「はは、リフィルさんは手厳しいな」
「でも、ダリアス様に婚約破棄されて、本当に良かったです。あの時、本当に心からありがとうございますわ、と思っていましたから。そこから全て始まりましたもの」
そう、シュバルツ様とこうして私を取り囲む環境全てが幸せな世界に進んでいけたのは、ダリアス様の婚約破棄がきっかけ。
だから本当はちょっぴりだけ、ダリアス様に感謝していなくもない。
だから次会う時はこう言ってやりたい。
「婚約破棄してくれて、本当にありがとうございました」
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