【連載版】婚約破棄? 私が能無しのブスだから? ありがとうございます。これで無駄なサービスは終了致しました。

ごどめ

文字の大きさ
57 / 70
第二部

56話 終わりの始まるきっかけ

 ――私がシュバルツ様に公然の場である舞踏会場にて離婚話を突きつけられ、私がアルカードへと帰る事になる少し前の事。

「……っち、もう数日後か」

 珍しくあのルーフェンが眉間にシワを寄せて頭をくしゃくしゃと掻き乱している。

「こんな唐突にやって来て、一体どうかしたのルーフェン?」

「ああ。どうにも厄介な問題が発生しちまってな……」

 王都エリシオンにあるタウンハウス、フレスベルグ邸の応接間にて。
 ルーフェンは王都新聞に目を通しながら困った顔をしていた。

「念の為、久々に王都に来てみて正解だったかもな」

「ルーフェン、ちっとも話が見えませんわ。一体なんだって言いますの?」

「いやな、おそらく近々ルヴァイクからの大使がエリシオンへ来るんだが、その時にちっと不味い事になりそうなんだ」

 私は愛する旦那様の為に、彼のお母様であるマリーナお義母様から、フレスベルグ家に伝わる家庭料理を教わっていた時。

 突然ルーフェンがフレスベルグ邸に単身でやってきて、藪から棒に「今朝の王都新聞の新刊を見せてくれ」と言ってきたのだ。

 私はルーフェンを応接間へと案内し、フレスベルグ邸のメイドさんに新聞を持って来てもらうとルーフェンはしばらく黙ったままそれを読んでいた。

「なあ、リフィル姉様。今日シュバルツ兄様とリドル卿はいつ帰ってくるんだ?」 

 日中はシュバルツ様もリドルお義父様も王宮へとお仕事に出ているので、今お屋敷にいるのは私とマリーナお義母様だけだ。

「いつもなら夕方くらいになればお二人ともお帰りになるけれど……」

「そうか。そんじゃあ兄様たちが戻って来たらまとめて話すわ。それまでちっとばかし俺は王都をぶらついてくるわ。アルカードじゃ手に入らねえ素材とか、魔導具とか買っておきたかったしな」

「え? ちょ、ちょっとルーフェン!?」

 そう言い残してルーフェンは落ち着きなく、フレスベルグ邸から出て行ってしまった。

 一体なんだと言うのだろう。

 なんだか嫌な予感がする。




        ●○●○●



 それからしばらくして。

 ルーフェンは素材でパンパンに詰め込まれた皮袋を背負って戻って来たその少し後に、シュバルツ様とリドルお義父様もお仕事から戻られたので、私たちは全員で食堂に集まり、夕食がてらルーフェンの話を聞く事にした。

「三ヶ月ぶりだな、ルーフェン殿。元気そうでなによりだが、なにやら不穏なニュースを抱えていると見える」

「ああ、その通りだシュバルツ兄様。ちっとばかしめんどくせえ話をしなくちゃならねえ」

 ルーフェンの顔が苦々しく歪む。

 一体何があったと言うのだろう。

「およそ一年とちょっと前。王都エリシオンで開催された英傑選のあった日。ルヴァイク共和国の召喚師がとんでもねえ化け物を召喚して、この王都エリシオンを脅かしたあの事件があったろ?」

「ああ。もう一年以上前だとは思えないほど、あの時の記憶はよく残っている」

 シュバルツ様の言葉に同じく、私も当時記憶は色濃く残っている。

 はっきり言って、私もシュバルツ様もルーフェンもルーラも、いえ、それだけじゃない。王都に住む多くの人たちがあの事件によって死んでしまってもおかしくはないほどの騒動。

 ルヴァイク共和国からの報復として、邪悪な召喚師がマジックデトネイター魔力起爆剤付きの魔物の大群を呼び寄せてエリシオン王国の中心部である王都エリシオンを襲った事件は、飛躍的に進化したシュバルツ様の力によって大事に至らずに済んだ。

 その栄光を讃えられシュバルツ様は英傑の称号を取得し、このエリシオン王国最強と名高い騎士団長へと昇進した。

 あの事件を経て、エリシオン国王であるビスマルク陛下は早急に緊急宮廷会議を開き、ルヴァイク共和国に対し通告を出す事を決めた。

 その通告内容は、報復の意思表示だ。

 ビスマルク陛下はあの事件に対して詳細な説明をルヴァイク共和国に求めた。そしてその内容如何によっては、ルヴァイク共和国に全面戦争を仕掛けざるを得ないと意思表示した。

 ルヴァイク共和国はこれに対し、あの事件はアルベスタに住む召喚師の単独行動であり、決してルヴァイクの意思ではないと主張。

 その誠意としてルヴァイクはエリシオン王国の南部、つまりはアルカード領の最南端の先、国境を越えた先にある前線基地を撤収させた。

 抵抗の意思を下げた事により、ビスマルク陛下はルヴァイク共和国の最北端にあたる小さな領地、アルベスタという地域をエリシオン王国の一部とする事をルヴァイクへ伝え、ルヴァイクもこれに応じた。

 こうしてエリシオン王国はその領土を広げたのである。

「アルベスタ領はエリシオン王国の領地となり、領主のドレイアム・アルベスタ伯爵もビスマルク陛下に忠誠を誓った。そうしてしばらくは両国の諍いも大人しくなっていたんだが、最近になって妙な動きが出てきてるんだよ」

 ルーフェンが言うには、アルベスタ領内において不審な動きが見られているのだそうだ。

 ルーフェンが治めるアルカード領の最南端にはグレイス孤児院と呼ばれる施設がある。

 そこには多くの戦争孤児が流れ着いているのだが、ある日を境にその孤児たちを引き取ろうとする者が増えたのだとか。

 それがアルベスタ領内に住む者たちなのだそうだ。

「それは戦争が落ち着いたからアルベスタ領の方々が孤児院の子供たちを身請けしてくださってるのではなくて?」

 私の問い掛けにルーフェンは首を横に振った。

「俺も当初はそう思った。だが、よくよく調べてみるとアルベスタに孤児たちを身請けするほど裕福な貴族はそう多くねえんだ。それなのに、ここ最近、僅かの間になんと20人もの孤児たちが引き取られていったんだよ」

「20人も……それは確かに多いな」

 シュバルツ様も怪訝な表情をしてみせる。

「ああ。孤児院にいる孤児を引き取ろうなんて奴はそう多くない。それで怪しんだ俺は諜報員を数名アルベスタ領へと送った。するとな、妙な事がわかった」

「妙な事、ですの?」

「ああ。引き取られた20人の子供らは全員、領主であるドレイアムに保護されたっていうんだ」

 ドレイアム・アルベスタ伯爵はエリシオン王国の管理下のもとアルベスタ領を引き続き管轄する領主。

 しかし長年に渡るエリシオン王国とルヴァイク共和国の小競り合いを前線で引き受け続けてきたせいで、領内は各地で荒れ、税収もままならず、はっきり言って以前のアルカードよりも貧乏な貴族だ。

 定期的に始まるエリシオン王国とルヴァイク共和国の小規模戦争は、アルカードの南部とアルベスタの国境付近で行われたが、その際、実はアルカード領からの出兵はほとんどしていない。

 元々アルカード領はエリシオン王国の中でも特に開発の進んでいない僻地であり、人口密度も高くなく村々も点々としている。アルカードのお屋敷があるカラム村みたいな農産を主軸に生活を営む村ばかりで、戦士や騎士なんてそう多くはいない。

 ビスマルク国王陛下もそれをよく理解しており、ルヴァイクとの小競り合いの際にはアルカードの村人たちに徴兵せよとは命じず、王都エリシオンの兵士たちで小隊を作りアルカード南部にある前線基地でアルベスタと交戦していた。

「ビスマルク陛下は国民の事を第一に考えてくれる賢王だ。俺たちアルカード民に戦争の負担が及ばないようにそう配慮してくれたからこそ、俺もお父様もアルカード領をなんとかきりもりしてこれた。しかしルヴァイク共和国は違う。あそこは共和国とは謳っているが、実質は共和国中央部に位置する首都ルヴァイクの一部の特権階級が実権を握る言うなれば独裁国家だ」

 ビスマルク国王陛下がルヴァイクを攻めて領地を奪おうとしている原因がこれだ。

 ルヴァイク共和国の独裁政権によって様々な非人道的扱いを受けている不幸な人々を少しでも救いたいと考えたビスマルク陛下は、独裁政権を止めて国を見直せとルヴァイクに対し幾度も警告しそして協議したが、ルヴァイクは一向に耳を貸さなかったからである。

「だからルヴァイクはエリシオン王国からの攻撃を牽制しつつもアルベスタをいつでも切り離せるように最低限の物資しか送らなかったし、戦争時における兵士たちもアルベスタの領民だけで出兵させられていたらしいからな」

 そうなればアルベスタ領民が疲弊し、領地がどんどんと荒んでいくのは当然だった。

「そんな中、例の英傑選でのイカれた召喚師が起こしたあの事件をきっかけに、ルヴァイクもアルベスタを明け渡してしばらくは小康状態となった。とはいえたった一年ちょっとでアルベスタが急激に裕福になるわけがねぇ」

「なるほど、それなのに20人もの孤児たちを一気に身請けするというのは少し……いえ、相当におかしいですわね」

「ああ、そうだ。そんでもってこんな書簡がつい先日、俺のもとに届いた」

 ルーフェンはそういうと一通の書簡を取り出して、食卓の上に広げてみせる。

『アルカード領、領主ルーフェン卿。貴殿の妹君であられるルーラ・アルカード嬢を我が息子の妻として迎えたいと考えている。まずは折を見て一度そちらへお伺いするので、その際に詳しい話をさせて欲しい』

 そしてその書簡の送り主はドレイアム・アルベスタ、と綴られていた。
 
「ええ!? ルーラを!?」

 私は思わず声を荒げてしまった。

 そんなまさか……どうしてルーラを?

感想 3

あなたにおすすめの小説

外れ伯爵家の三女、領地で無双する

森のカフェしっぽっぽ
ファンタジー
十三歳の少女アイリス・アルベールは、人生を決める「祝福の儀」で“ゴミスキル”と蔑まれる《アイテムボックス》を授かってしまう。戦えず、稼げず、価値もない――そう断じた家族は、彼女を役立たずとして家から追放する。さらに、優秀なスキルであれば貴族に売り渡すつもりだったという冷酷な真実まで明かされ、アイリスはすべてを失う。 だが絶望の中、彼女は気付く。この世界が、自分がかつてやり込んだVRMMORPG『メデア』そのものであることに。 そして思い出す―― 《アイテムボックス》には、ある“致命的なバグ”が存在することを。 市場で偶然を装いながらアイテムを出し入れし、タイミングをずらすことで発生する“複製バグ”。それは、あらゆる物資を無限に増やす禁断の裏技だった。 食料も、装備も、資金も――すべてが無限。 最底辺から一転、誰にも真似できないチートを手にしたアイリスは、冒険者として歩み始める。だがその力はやがて、経済を歪め、権力者の目に留まり、そして世界の“仕様そのもの”に干渉していくことになる。 これは―― ゴミと呼ばれた少女が、“世界の裏側”を掌握する物語。

無能勇者の黙示録~勝手に召喚されて勝手に追放されたので勝手に旅に出ます~

枯井戸
ファンタジー
力も強くない、足も速くない、魔法も使えないし、頭も大してよくない、どこにでもいるちょっとオタク趣味の主人公・東雲真緒が白雉国に勇者として転生する。 同期の勇者はそれぞれ力が強かったり、魔法が使えたり、回復ができたりと各々の才能を開花させ頭角を現していくのだが、真緒に与えられた才能は異世界転生モノでよく見る〝ステータスオープン〟のみだった。 仲間には使えないと蔑まれ、ギルドには落第勇者の烙印を押され、現地人には殺害されかけ、挙句の果てに大事な人を亡くし、見ず知らずの土地の最底辺で生きていくことになった真緒だったが、彼女はまだ〝ステータスオープン〟の可能性に気づいていないだけだった。 ───────────── ※投稿時間は多少前後しますが毎日投稿は続けていくつもりです。 ※タイトルは予告なしにガラリと変わる場合があるのでご了承ください。 ※表紙は現在の主人公のイメージ図です。もしまた別の国へ行く場合、彼女の装いも変化するかもしれません。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?

タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。 白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。 しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。 王妃リディアの嫉妬。 王太子レオンの盲信。 そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。 「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」 そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。 彼女はただ一言だけ残した。 「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」 誰もそれを脅しとは受け取らなかった。 だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。

企業再生のプロ、倒産寸前の貧乏伯爵に転生する 

namisan
ファンタジー
数々の倒産寸前の企業を立て直してきた敏腕コンサルタントの男は、過労の末に命を落とし、異世界で目を覚ます。  転生先は、帝国北部の辺境にあるアインハルト伯爵家の若き当主、アレク。  しかし、そこは「帝国の重荷」と蔑まれる、借金まみれで領民が飢える極貧領地だった。  凍える屋敷、迫りくる借金取り、絶望する家臣たち。  詰みかけた状況の中で、アレクは独自のユニーク魔法【構造解析(アナライズ)】に目覚める。  それは、物体の構造のみならず、組織の欠陥や魔法術式の不備さえも見抜き、再構築(クラフト)するチート能力だった。  「問題ない。この程度の赤字、前世の案件に比べれば可愛いものだ」  前世の経営知識と規格外の魔法で、アレクは領地の大改革に乗り出す。  痩せた土地を改良し、特産品を生み出し、隣国の経済さえも掌握していくアレク。  そんな彼の手腕に惹かれ、集まってくるのは一癖も二癖もある高貴な美女たち。 これは、底辺から這い上がった若き伯爵が、最強の布陣で自領を帝国一の都市へと発展させ、栄華を極める物語。

魔物に嫌われる「レベル0」の魔物使い。命懸けで仔犬を助けたら―実は神域クラスしかテイムできない規格外でした

たつき
ファンタジー
魔物使いでありながらスライム一匹従えられないカイルは、3年間尽くしたギルドを「無能」として追放される。 同世代のエリートたちに「魔物避けの道具」として危険な遺跡に連れ出され、最後は森の主(ヌシ)を前に囮として見捨てられた。 死を覚悟したカイルが崩落した壁の先で見つけたのは、今にも息絶えそうな一匹の白い仔犬。 「自分と同じように、理不尽に見捨てられたこの子だけは助けたい」 自分の命を顧みず、カイルが全魔力を込めて「テイム」を試みた瞬間、眠っていた真の才能が目覚める。

無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから―― ※ 他サイトでも投稿中

みそっかす銀狐(シルバーフォックス)、家族を探す旅に出る

伽羅
ファンタジー
三つ子で生まれた銀狐の獣人シリル。一人だけ体が小さく人型に変化しても赤ん坊のままだった。 それでも親子で仲良く暮らしていた獣人の里が人間に襲撃される。 兄達を助ける為に囮になったシリルは逃げる途中で崖から川に転落して流されてしまう。 何とか一命を取り留めたシリルは家族を探す旅に出るのだった…。