【連載版】婚約破棄? 私が能無しのブスだから? ありがとうございます。これで無駄なサービスは終了致しました。

ごどめ

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第二部

50話 【閑話】ルーラのお見合い【sideルーフェン】

「おみあい、です?」

 きょとんとした顔でそう答えるのはアルカード家の末娘、今年でまだ8歳になったばかりの俺の妹、ルーラである。

「うむ、そうだよルーラ。お前も年頃の娘だ。だから私とリアナはお前にも良い相手がいないかと少しでも条件の良さそうな貴族子息の釣書を貯めておいたんだ」

 車椅子の上でいくつもの釣書をその手に持ちながら笑顔で頷いているのはフリック父様だ。

「それってアレですよね父様。リフィル姉様とシュバルツ兄様みたいな関係のお相手探しって事ですー!?」

「そうだよルーラ。お前はこの世界では8歳かもしれないけれど、実年齢は18歳なわけだからね。デビュタントにも出してやれなかったのを私は申し訳なく思っていたんだ」

 そう。

 俺とルーラは俺の魔法【先駆者ザ・パイオニア】によって、この肉体は10年を先に過ごしてしまっている。

 本来ならルーラも16歳になったら王都で開かれる舞踏会に出て、貴族令嬢らしく華々しいデビュタントを飾ってやりたかったが、そうもいかなくなってしまった。

 俺とルーラはお役所の書類上では実年齢9歳と8歳になっている。
 デビュタントとして舞踏会にお披露目できるのは書類上で満16歳となった貴族令嬢のみだ。

 つまりルーラはあと8年経たなければデビュタントの舞踏会には出れないのである。

 しかしあと8年も経てばルーラはもう実年齢26歳。いくら童顔だとは言え16歳の娘たちに混ざって26歳の成人女性が混ざるのは些か無理があるだろう。

 フリックお父様と俺はそんなルーラにもせめて貴族令嬢らしい平凡な幸せを願い、ルーラに相応しそうなパートナーを密かに探していたのである。
 もちろん、我が家の事情(実年齢と書類上の年齢の乖離について)を理解してもらえそうな人をだ。

「ルーラ、お前自身はどうなんだ? 俺やフリック父様はお前にもリフィル姉様みたいに幸せな結婚をして欲しいと思ってるんだ」

 俺がルーラに尋ねると、

「おみあい、しますですッ!」

 ルーラは相変わらずのヘンテコな敬語で即答した。
 しかしこいつ、本当に意味わかってるのかな。

「おお、ルーラ、本当かい? お前はずっとギルドの依頼や狩りばかりしていたからそういうものに興味はないかと思っていたよ」

 フリックお父様も驚いているところを見ると、ダメ元でルーラに聞いてみたんだな。

「ルーラもリフィル姉様みたいになりたいんです!」

「リフィル姉様みたいに?」

 俺が少し訝しんで尋ねる。

「はい! リフィル姉様、凄い綺麗になりました。アレはきっとシュバルツ兄様のおかげなのです。ルーラもシュバルツ兄様みたいなパートナーができれば綺麗になれるかもしれません!」

「あん? ルーラ、お前はなんで綺麗になりたいんだよ?」

「そしたら、お金持ちのお貴族様のところに嫁げるからに決まってるです!」

「「……は?」」

 俺とフリックお父様は同時に声を揃えた。

「お金持ちのお貴族様のもとへ嫁げたら、フリック父様もルーフェン兄様も、もっと生活が楽になります。ルーラの分の食い扶持は減るですし、嫁ぎ先からアルカード領へのお金の支援も要求して、アルカード領の開発も進みますです!」

「そ、そりゃあそうだけど、お前の考え方だとお見合いして、付き合って、綺麗になったら別の金持ちの子息のところに嫁ぐって言ってるように聞こえるぞ?」

「そう言ってるですよ?」

「「いやいやいやいや!」」

「何かおかしいですか?」

「「おかしいよ!」」

 フリックお父様と俺は声を揃える。

 っつーか、アルカード家の女ってなんか皆、考え方がぶっとんでんだよな……お母様然り、姉様然り。
 ルーラは子供っぽいだけだと思ってたけど、これはいくらなんでも腹黒すぎるだろ。

「あのね、ルーラ。お見合いして、上手くいかなければそれは仕方がないけれど、上手くいったらどうするんだい?」

 フリックお父様が冷静に問いかける。

「そしたらそいつが金持ちならそのままけっこんします! びんぼーだったら、こんやくしといたままにします!」

 うん。
 こいつは一体何を言っているんだ。

「……えーと、ルーラ。そもそも婚約と結婚ってなんだかわかってるかい?」

「馬鹿にしないでください父様! こんやくはなんか雰囲気とか見た目とかが良さそうな人ととりあえず仲良くしとくこと! けっこんはそいつと一生墓に入るまで一緒にいてやる事です!」

 おお……ルーラ……お前は……。

 と、俺が愕然とした表情でルーラを見ていると、フリックお父様も同じ様な顔をして口を半開きにしていた。

「ん、んー……まあ百歩譲ってそれは良いとして、婚約したままで別の人と結婚はできないよ。婚約を解消しないとね」

「……こんやくをかいしょー???」

 フリックお父様の言葉に、ルーラは頭の上でたくさんのハテナを浮かべている。

「結婚をする予定でお付き合いをする事を婚約、と言うんだよルーラ」

「それはなんとなくわかりますですよ」

「だからね、婚約をしたならその人と結婚しなくちゃダメなんだよ」

「そうなんですか。でもルーラ、体は一個しかないですよ?」

「え? ど、どういう意味だいルーラ?」

「おみあい、たくさんして、良い奴は皆、こんやくしようと思ってたです。それで綺麗になったらお金持ちの奴とけっこんする予定でした。お金持ちの奴が落ちぶれたら、今度は別の奴とけっこんすればいいと思いました!」

 こいつ、怖いわ。

 いや、確かにルーラは昔から少し、ちょっとだけ、相当に、物凄く馬鹿なところがあるとは思ってたが、純粋すぎてその馬鹿さがぶっ飛んでやがる。

「けっこんしたらりこんすれば、また別の奴とけっこんできます! ルーラ、それは知ってるんです!」

 ちょっと俺の妹が怖い件について。

「あ、あのねルーラ。結婚とか婚約とか、そんなに軽いものじゃないんだよ? お役所手続きとか社交界での体面とかもあるし、何より婚約も結婚も、お互いが本当に好き同士で、愛し合う人とだけするものなんだよ。だから婚約者は一人だけしか作れないんだよ」

「そんなの嘘ですよ父様! ルーラを騙そうとしてるですか!?」

「してないしてない」

「だってこんやくしゃ、たくさんいてもいいってこの前レオガルド様が言っておりました!」

 レオガルド様……だと……。

「ル、ルーラ、お前今なんて言ったんだい?」

「レオガルド様がこんやくしゃいっぱいいても良いって言ってたって言ったんです!」

 レオガルドってのは、俺の聞き間違えじゃなければエリシオン王国の王太子殿下の名前だ。

 エリシオン王国の第一王子、レオガルド・エリシオン殿下。

 しかしそんな大それた人とルーラが知り合いなのか?
 そんなわけないよな。同名なだけか?
 もはやフリックお父様なんかルーラの会話に疲れて首を傾げたままフリーズしてるぞ。


 
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