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第二部
55話 セカンド・プロローグ 〜新たな門出は既視感の破局と共に〜
「すまないがリフィルさん。キミのような能無しで醜い女性を愛し続けるのは私には不可能だったみたいだ」
王家主催の舞踏会にて。
大勢の人が周囲で見守る中、今にもその憤りをぶちまけてしまいそうなほど、見せた事のない剣幕でお顔を強張らせてそう言い放ったのは、私の旦那様であるシュバルツ・フレスベルグ伯爵令息だ。
「……それで?」
私は努めて冷静に彼の言葉を受け止めてそう返す。
「だからキミとは離婚しようと思う」
「そう。……あなたがそうまで言うのなら仕方がありませんわね。わかりましたわ」
私とシュバルツ様はそう言うと、互いに視線を合わさず、しばしの静寂が訪れる。
幸せな結婚生活になるはずの、二年目の春。
私とシュバルツ様の関係は、少し前までなら想像する事もなかったような状況となっている。
「リフィルさん」
私が少しの間、呆けているとシュバルツ様がまるで促すように私の名を呼ぶ。
ええ、そうね。
「それじゃあさようなら」
これは決して遊びなんかじゃない。
私は意を決して彼に背を向け、
「正式な手続き等はまた後日に行ないましょう。今日のところはもう実家に帰らせてもらいますわ」
「……そうしてくれると助かる」
そう言い残し、会場を出ていく。
多くの人々がどよめき、私たちの様子を見守る。
人の目なんて気にしない私だけれど、誰かに呼び止められたりされないかだけを心配したが、私とシュバルツ様の険悪なムードに誰一人近づこうとする者はなく――。
私はひと足先に、待たせておいた馬車へと乗り込み、一旦フレスベルク邸へと帰宅し、そしてすぐに予め用意しておいた大きめのキャリーケースを手に持ち、
「さようなら、フレスベルグ家」
そう最後に呟いて、私は一年とちょっとを過ごしたフレスベルグ邸を後にした。
振り返らないと決めた。
こうして離婚を突きつけられるのはとても辛い事だけど。
私は振り返らないで前を向く。
最愛の人の為に――。
●○●○●
フレスベルグ邸の外で待たせておいた馬車へと私は再び乗り込む。
御者の男に「今度はアルカードへ」と命じて、馬車を出してもらった。
しばらくして、御者の男は不思議そうな顔で馬車の中にいる私を見てはこう尋ねてきた。
「リフィルお嬢様。その大きな荷物は一体なんですか?」
「フレスベルグ邸にあった私の私物ですわよ」
「まるで里帰りのような大荷物……日帰りではないのですか?」
「ごめんなさいね。まだあなたには話していなかったけれど、私はシュバルツ様と離婚するんですの」
「えっ!?」
「今までお世話になりましたわね、ジルベール」
「そ、そんな……お嬢様、一体何があったのですか!?」
御者の男、ジルベールは私がフレスベルグに嫁いでからよくお世話になった、初老になる白髭の御者さんだ。
彼は古くからフレスベルグ家に仕えていて、シュバルツ様の事も幼い頃からよく知っている。
「……結婚生活がうまく行かなかった。ただそれだけですわ」
「あれほど仲睦まじいご夫婦であられたリフィルお嬢様とシュバルツおぼっちゃまがそんな……。リドル旦那様とマリーナ奥様はご存知なのですか?」
「まだ話していませんわ。正式な手続きは後日、改めて行おうと思いますの」
「一体どうして……」
「……色々、ありましたの」
「……そう、ですか。事情はわかりませんが、かしこまりました」
私が感情のない瞳で彼にそう伝えると、ジルベールは察してくれたのか、それ以上私に何かを尋ねる事はしなかった。
これで、幸せな結婚は終わり。
そして終わりから、また始まる。
私はそう、考えていた。
王家主催の舞踏会にて。
大勢の人が周囲で見守る中、今にもその憤りをぶちまけてしまいそうなほど、見せた事のない剣幕でお顔を強張らせてそう言い放ったのは、私の旦那様であるシュバルツ・フレスベルグ伯爵令息だ。
「……それで?」
私は努めて冷静に彼の言葉を受け止めてそう返す。
「だからキミとは離婚しようと思う」
「そう。……あなたがそうまで言うのなら仕方がありませんわね。わかりましたわ」
私とシュバルツ様はそう言うと、互いに視線を合わさず、しばしの静寂が訪れる。
幸せな結婚生活になるはずの、二年目の春。
私とシュバルツ様の関係は、少し前までなら想像する事もなかったような状況となっている。
「リフィルさん」
私が少しの間、呆けているとシュバルツ様がまるで促すように私の名を呼ぶ。
ええ、そうね。
「それじゃあさようなら」
これは決して遊びなんかじゃない。
私は意を決して彼に背を向け、
「正式な手続き等はまた後日に行ないましょう。今日のところはもう実家に帰らせてもらいますわ」
「……そうしてくれると助かる」
そう言い残し、会場を出ていく。
多くの人々がどよめき、私たちの様子を見守る。
人の目なんて気にしない私だけれど、誰かに呼び止められたりされないかだけを心配したが、私とシュバルツ様の険悪なムードに誰一人近づこうとする者はなく――。
私はひと足先に、待たせておいた馬車へと乗り込み、一旦フレスベルク邸へと帰宅し、そしてすぐに予め用意しておいた大きめのキャリーケースを手に持ち、
「さようなら、フレスベルグ家」
そう最後に呟いて、私は一年とちょっとを過ごしたフレスベルグ邸を後にした。
振り返らないと決めた。
こうして離婚を突きつけられるのはとても辛い事だけど。
私は振り返らないで前を向く。
最愛の人の為に――。
●○●○●
フレスベルグ邸の外で待たせておいた馬車へと私は再び乗り込む。
御者の男に「今度はアルカードへ」と命じて、馬車を出してもらった。
しばらくして、御者の男は不思議そうな顔で馬車の中にいる私を見てはこう尋ねてきた。
「リフィルお嬢様。その大きな荷物は一体なんですか?」
「フレスベルグ邸にあった私の私物ですわよ」
「まるで里帰りのような大荷物……日帰りではないのですか?」
「ごめんなさいね。まだあなたには話していなかったけれど、私はシュバルツ様と離婚するんですの」
「えっ!?」
「今までお世話になりましたわね、ジルベール」
「そ、そんな……お嬢様、一体何があったのですか!?」
御者の男、ジルベールは私がフレスベルグに嫁いでからよくお世話になった、初老になる白髭の御者さんだ。
彼は古くからフレスベルグ家に仕えていて、シュバルツ様の事も幼い頃からよく知っている。
「……結婚生活がうまく行かなかった。ただそれだけですわ」
「あれほど仲睦まじいご夫婦であられたリフィルお嬢様とシュバルツおぼっちゃまがそんな……。リドル旦那様とマリーナ奥様はご存知なのですか?」
「まだ話していませんわ。正式な手続きは後日、改めて行おうと思いますの」
「一体どうして……」
「……色々、ありましたの」
「……そう、ですか。事情はわかりませんが、かしこまりました」
私が感情のない瞳で彼にそう伝えると、ジルベールは察してくれたのか、それ以上私に何かを尋ねる事はしなかった。
これで、幸せな結婚は終わり。
そして終わりから、また始まる。
私はそう、考えていた。
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