【連載版】婚約破棄? 私が能無しのブスだから? ありがとうございます。これで無駄なサービスは終了致しました。

ごどめ

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第二部

58話 不穏の足音。秘密を知る者

「ルーラは当然やらねえさ」

 ルーフェンもそれは同じ気持ちだったようだ。

「ねえルーフェン。それとドレイアム卿が孤児を引き取ってる話は何か関係があるんですの?」

「俺も最初はわからなかった。けど、これだ」

 そう言ってルーフェンは新聞を広げてみせた。

「これは……助成金制度?」

「ああ。ビスマルク陛下は最近こんな法案を通した。成人未満の男女においてその者らの魔力に応じて条件付きで育成を手助けする助成金を援助する、ってな」

「それで孤児たちの数に応じてエリシオンから助成金を得ようと? でもそれがルーラとどんな関係が……」

「ルーラは優秀な魔導師だと思われてんだ」

「えっ!?」

「英傑選の時だ。最後、俺たちを救う為にルーラは【空間転移トランスポート】を使っただろ?」

 覚えてる。
 みんなが満身創痍で動けなくなっていた時だ。

「その事に尾ひれ背びれが付いて広まった。アルカード家の末娘、ルーラ・アルカードは8歳にして高難度上位魔法の【空間転移トランスポート】が扱えるってな」

 確かに【空間転移トランスポート】は高難度な上位魔法だ。
 ルーフェンほどの天才的魔力量がないと、どうひっくり返っても8歳の子供が覚えるのは無理がある。

 それを扱えるという噂だけが広まってしまったらしい。

「まあそもそもルーラが見た目だけは大人になっちまってるって話は内緒にしてあるんだ。そうしたら噂話が変な風に歪曲して、ルーラは8歳にして空間転移の魔法を扱える天才児となっちまったってわけだ」

「そうなんですのね。あれ、でもルーフェンはどうなんですの? あなただってまだ9歳でしょう?」

「俺ぁ実は今19歳って事になってる。っつーか、役所関係の書類とかもそう改ざんした。王都に多少融通のきく奴がいてな。俺が爵位を受け継ぐ前だ。俺はこれでも領主だし、そうしねぇと色々と不便だからな。カラム村の奴らには事情を話してあるけどな」

 そうだったんだ。

 え、じゃあ私はルーフェンの妹って事になるのかしら?

「ま、俺の事はいい。ルーラを婚約者にしたがっていたのはルーラが優秀な魔導師だからだ」

「優秀な魔導師だから?」

「そうだ。おそらくドレイアムはこう考えたのさ。優秀な魔導師を自分の息子の嫁にして、孤児たちの育成係にしようってな」

「なるほど、そうか。助成金はあくまで未成年の魔導師育成の為だ。魔導師としての育成には必ず優秀な魔導師を教師とする必要がある。その費用を減らそうとしたのか」

 シュバルツ様が納得したようにそう言った。

「そうだ。20人分もの助成金をちょろまかせれば、結構な額になる。おまけに孤児たちを優秀な魔導師として育成し、ついでに俺たちアルカードをルヴァイク側へと引き込むつもりだったんだろう」

 やっぱり許せない。
 ドレイアム卿の考えにはそもそも愛が全く感じられないもの。

 そんな人のところにルーラは渡せませんわ。

「……で、ここからが本題だ。近々開かれる王家主催の夜会にリフィル姉様とシュバルツ兄様に出席してもらいたいんだよ」

「夜会に?」

「ああ。そこには今回、アルベスタからの貴族も数名参加するんだ。そこで姉様と兄様にはアルベスタの情勢に関する聞き込みをして欲しいんだ」

 ルーフェンが言うにはその会場でアルベスタの内部事情を調査してきて欲しいというものだった。
 孤児たちの事やルーラを婚約者にしたがっていた理由もあくまで推測にすぎないから、との事だ。

 私とシュバルツ様はルーフェンの提案に頷き、そして王家主催の王宮で開かれるその夜会に参加する事に決めた。



 ――そして事件はその夜会の当日に起きた。



「キミ、なんて名前?」

 舞踏会が始まりを告げたばかりの頃。

 銀色の長髪に整った顔立ちをした漆黒の瞳の見知らぬ貴族の男が私の手を許可なく取って、唐突にそう言ってきたのだ。

「な、なんですのあなたは? 私には旦那様がおります。勝手に手を触らないでください」

 と言って私がその手を振り払おうとした時。
 彼はスッと私の耳元に近づき、

「ああ、そっか。やっぱりキミだったんだね。【魔力提供マジックサーバー】の持ち主は」

 信じられない言葉を囁いた。

「な、何を……」

 と、私が戸惑っていると、少しの間会場の外に出ていたシュバルツ様がちょうど戻ってきて、私と目が合ったその瞬間。

「……んッ!?」

 私はその場で強引に名も知らぬ銀髪の男に唇を奪われていた。

「いやッ!」

 私が強く抵抗して離れようとするも、その男は私の腕を掴んで離そうとしない。

「貴様ッ! 私の妻に何をしている!?」

 シュバルツ様が声を荒げてこちらに向かってくる。

「なるほどねえ。……、旦那様の魔力の秘密、バラされたくなかったら、舞踏会が終わるまでにこの王宮の舞踏会場の3階バルコニーに一人で来てね。来なければキミたちの秘密を言いふらすから」

「……ッ」

 銀髪の彼は私の耳元で再びそう囁くと、逃げるようにその場から立ち去った。

「おい、待て貴様! ……リフィルさん! 大丈夫か!?」

「シュバルツ様……私……」

「あの男……! 一体キミに何を……!? しかも人の妻の唇を勝手に奪うなど……!」

 シュバルツ様が怒りで震えている。

「ごめんなさいシュバルツ様。私が油断したせいであんな人に……」

「いや、私が目を離したせいだ。すまないリフィルさん。何か言われていたようだが、一体何を!?」

「……えっと」

『秘密をバラされたくなければ』

 彼はそう言った。

 こんな事を言われたのは初めてだ。
 私の魔法、【魔力提供マジックサーバー】の事について他人から触れられたのは……。

 それに彼に唇を一瞬だけ奪われた後、何故か彼は私の名を呼んだ。

 初めに出会った時は、名前を尋ねてきたというのに。

「……ダンスのお誘いを受けておりました。けれど私、ちゃんとお断りしましたから!」

「そ、そうか。それにしても私のリフィルさんに勝手な真似を……ッ。強引にキスまでしてくるとは許せん……ッ!」

 シュバルツ様は怒りでふるふると震えている。

 私も許せない。この身体も心もシュバルツ様に捧げているというのに。
 しかしとはいえ、暗に彼の言葉を全て無視するのは危険な気がした。

「そ、それよりシュバルツ様。私、少し体調が優れなくて……。お手洗いに行ってきますわ」

「あ、ああ。わかったリフィルさん。そこまで私も付いていくよ」

「あ、だ、大丈夫ですわ。シュバルツ様は引き続きルーフェンの言っていた通り、アルベスタの者たちから情報を探っていてください」

「本当に大丈夫なのかい、リフィルさん……?」

「ええ。ご心配をお掛けしてすみませんわシュバルツ様」

 私はそう言って、会場の奥の廊下へと向かって行った。



 



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