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第二部
60話 罪悪感
「……んん。あれ、ここは……どこ?」
カーテンの隙間から差し込む日差しに目を覚させられて周囲を見渡すと、ベッドの上に寝かされていた事に気づく。
真っ白でふかふかの布団に大きめの天蓋付きベッド。
いや、よくよく見るとこの天蓋付きベッドは見た事がある。
あれ……私、いつの間にフレスベルグのお屋敷に帰ってきたんだっけ。
そう思った直後。
「え……あれ……?」
上半身を起こしてようやく気づく。
自分が下着一枚だけの格好で布団の中にいた事に。
――私は昨晩もシュバルツ様と愛し合ったんだっけ……?
「お、ようやくお目覚め?」
「……ッ!?」
布団の端っこの方の膨らみから突然声がして私は思わず身体をビクつかせた。
「おはようリフィル。んー、いい朝だねえ」
「あ、あなたは……ッ!」
布団の中から顔を覗かせ、私と同じベッドの中で伸びをする彼は、昨晩私に言い寄ってきた上半身が裸の銀髪の男。
確かに名前は……。
「ザリアス、だよ。リフィル」
そうだ。
ザリアス・マクシムス!
「ど、どうしてあなたがここに……! と言うかここは一体……?」
「ここは僕の家だよ。キミだってしばらく過ごしていたんだ。覚えているだろう?」
そうだ思い出した。
ここはやっぱりマクシムス家だ。
私がダリアスと共に生活させられていた、あの……。
「私はなんでここに……あなたは私に何をしたんですの!?」
「あーあ、もう忘れちゃったの? 昨晩、あんなに愛し合ったって言うのにさあ」
「な、何を馬鹿な事を……!」
「リフィル、キミが望んだんじゃないか。キミの秘密を、シュバルツの秘密をバラされたくないから僕と寝るって。それに、最初は少し抵抗していた癖に、途中からはすっかり僕のテクニックにメロメロだったじゃないか」
私は彼の言葉に思わず顔を赤らめたが、
「そんなデタラメを……! 私はそんな事しません! あなたが勝手に……」
私はまさかこの男に強引に犯されたとでも言うの!?
そんな、そんなの……。
「よーく思い出して? 昨晩の事を。そして僕とここで愛し合った事を。キミは僕の身体も散々に味わったでしょ?」
そんな記憶……!
そんな……。
……。
……。
そう、だ。
私は確かにこの男に脅されて……。
だんだんと記憶が蘇る。
王宮の舞踏会場、3階のバルコニーでこの男に詰め寄られて、それで……。
「そうだよリフィル。突然睡魔に襲われたキミを僕が背負って馬車に乗せ、そしてこのマクシムス家に連れ込んだんだ」
そうだ。
「さ、触らないで……」
気づけば彼は私の左手に右手を添えている。
跳ね除けようとするが、力が入らない。
記憶が混濁している。
「ほら、その後の事もよく思い出してよ。僕にここまで運ばれたキミは一体どうしたっけ?」
「私は……」
私は朦朧とした意識の中、このベッドに寝かされた。
それからなんだかとても身体が熱くなって、それで……。
「そうだ。キミは蕩けたような瞳で僕を見つめたから、こうやって」
と、彼はそこまで言って、
「んんッ!」
また強引に私の唇を奪った。
すぐに離れたかったが、彼の腕の力が凄くて、唇を話す事ができなくて。
「んーッ! んんッ!」
嫌だ!
と、強く拒否反応を示した途端、彼はようやく私の唇から離れてくれた。
「ふう……相変わらずキミとのキスはたまらないよ。色々な感情が湧き起こる」
「……最低!」
私は唇をごしごしと腕で拭った。
本当なら今すぐここから飛び起きて逃げ出したいけれど、今は格好が……。
「思い出してごらん。さっきみたいに僕とキスした後、キミはどうした?」
私はあの後……。
あれ……。
嘘……。
「キミから求めてきたんだろう?」
違う!
「キミから抱きしめてきたんだろう?」
違う違う!
「キミの方からその綺麗な身体を差し出してきたんだろう?」
違う違う違うッ!
違うはずなのにッ!
「うあ……うぅ……」
涙が止まらない。
だんだんと鮮明になり始めた記憶を思い返すたびに、私は自らの罪悪感に苛まれて。
「その涙がシュバルツに対する罪悪感なのだとするなら、それはある意味正しい感情だ。何故なら、キミも快楽に溺れたんだからね」
駄目だ。
これ以上思い出すと。
「もう思い出しているんだろう? 僕に散々に身体中を愛撫された事を」
「間違いよ! こんなの、こんなの……!」
「何が間違いなんだ? キミの記憶が間違いだとでも?」
「間違い……なの……こんなの……ッ」
涙が止まらなかった。
この男の言う通り、私は昨晩、ここでこの男と――。
「間違いだと、そう思い込むのもありかもね。せいぜいそう思い込んで生きるといい。一生彼を騙すには、それが一番だ」
「黙ってッ!」
「黙らないよ。いいかいリフィル。キミはこれから先もずっと僕が命じた時、僕の好きなタイミングでその身体を僕に差し出すんだ」
「嫌よそんなの!」
「……まあ、いいけど。どのみちもうキミの身体には僕の印を十分に刻み込んだ」
ザリアスはそう言うとようやく私から離れ、布団からスッと降り立ち、私のいる布団の方に向かってラフな部屋着を放り投げた。
「キミのドレスは昨晩、汚してしまったからね。良質なものだったから僕の家の使用人に責任を持って洗わせている。後でキミの家に届けさせるから、今はとりあえずそれを着るといいよ」
ドレスが……汚れて……?
そう言われてまた呼び起こしたくない記憶が蘇った。
そうだ、私は昨晩ドレスのままこの男と――。
「今日はもう帰るといいよ。そしてシュバルツに会うといい。マクシムス家からフレスベルグ邸までなら歩いて帰れる距離だろう」
「……」
私は彼の行動が理解できなくて、警戒しながら睨み付ける。
「……ふう。そんな睨まないでよ。一応これで僕も現段階では満足したからね。後はキミ次第だ。せいぜいシュバルツに上手い嘘を吐くといいさ」
彼はそう言い残すと、白いシャツだけを羽織って部屋から出て行ってしまった。
「……う。うぁ……うわぁ……ぁあぁあぁん……シュ、シュバルツ……さ、まぁ……」
私はそこで一人、泣き崩れていた。
カーテンの隙間から差し込む日差しに目を覚させられて周囲を見渡すと、ベッドの上に寝かされていた事に気づく。
真っ白でふかふかの布団に大きめの天蓋付きベッド。
いや、よくよく見るとこの天蓋付きベッドは見た事がある。
あれ……私、いつの間にフレスベルグのお屋敷に帰ってきたんだっけ。
そう思った直後。
「え……あれ……?」
上半身を起こしてようやく気づく。
自分が下着一枚だけの格好で布団の中にいた事に。
――私は昨晩もシュバルツ様と愛し合ったんだっけ……?
「お、ようやくお目覚め?」
「……ッ!?」
布団の端っこの方の膨らみから突然声がして私は思わず身体をビクつかせた。
「おはようリフィル。んー、いい朝だねえ」
「あ、あなたは……ッ!」
布団の中から顔を覗かせ、私と同じベッドの中で伸びをする彼は、昨晩私に言い寄ってきた上半身が裸の銀髪の男。
確かに名前は……。
「ザリアス、だよ。リフィル」
そうだ。
ザリアス・マクシムス!
「ど、どうしてあなたがここに……! と言うかここは一体……?」
「ここは僕の家だよ。キミだってしばらく過ごしていたんだ。覚えているだろう?」
そうだ思い出した。
ここはやっぱりマクシムス家だ。
私がダリアスと共に生活させられていた、あの……。
「私はなんでここに……あなたは私に何をしたんですの!?」
「あーあ、もう忘れちゃったの? 昨晩、あんなに愛し合ったって言うのにさあ」
「な、何を馬鹿な事を……!」
「リフィル、キミが望んだんじゃないか。キミの秘密を、シュバルツの秘密をバラされたくないから僕と寝るって。それに、最初は少し抵抗していた癖に、途中からはすっかり僕のテクニックにメロメロだったじゃないか」
私は彼の言葉に思わず顔を赤らめたが、
「そんなデタラメを……! 私はそんな事しません! あなたが勝手に……」
私はまさかこの男に強引に犯されたとでも言うの!?
そんな、そんなの……。
「よーく思い出して? 昨晩の事を。そして僕とここで愛し合った事を。キミは僕の身体も散々に味わったでしょ?」
そんな記憶……!
そんな……。
……。
……。
そう、だ。
私は確かにこの男に脅されて……。
だんだんと記憶が蘇る。
王宮の舞踏会場、3階のバルコニーでこの男に詰め寄られて、それで……。
「そうだよリフィル。突然睡魔に襲われたキミを僕が背負って馬車に乗せ、そしてこのマクシムス家に連れ込んだんだ」
そうだ。
「さ、触らないで……」
気づけば彼は私の左手に右手を添えている。
跳ね除けようとするが、力が入らない。
記憶が混濁している。
「ほら、その後の事もよく思い出してよ。僕にここまで運ばれたキミは一体どうしたっけ?」
「私は……」
私は朦朧とした意識の中、このベッドに寝かされた。
それからなんだかとても身体が熱くなって、それで……。
「そうだ。キミは蕩けたような瞳で僕を見つめたから、こうやって」
と、彼はそこまで言って、
「んんッ!」
また強引に私の唇を奪った。
すぐに離れたかったが、彼の腕の力が凄くて、唇を話す事ができなくて。
「んーッ! んんッ!」
嫌だ!
と、強く拒否反応を示した途端、彼はようやく私の唇から離れてくれた。
「ふう……相変わらずキミとのキスはたまらないよ。色々な感情が湧き起こる」
「……最低!」
私は唇をごしごしと腕で拭った。
本当なら今すぐここから飛び起きて逃げ出したいけれど、今は格好が……。
「思い出してごらん。さっきみたいに僕とキスした後、キミはどうした?」
私はあの後……。
あれ……。
嘘……。
「キミから求めてきたんだろう?」
違う!
「キミから抱きしめてきたんだろう?」
違う違う!
「キミの方からその綺麗な身体を差し出してきたんだろう?」
違う違う違うッ!
違うはずなのにッ!
「うあ……うぅ……」
涙が止まらない。
だんだんと鮮明になり始めた記憶を思い返すたびに、私は自らの罪悪感に苛まれて。
「その涙がシュバルツに対する罪悪感なのだとするなら、それはある意味正しい感情だ。何故なら、キミも快楽に溺れたんだからね」
駄目だ。
これ以上思い出すと。
「もう思い出しているんだろう? 僕に散々に身体中を愛撫された事を」
「間違いよ! こんなの、こんなの……!」
「何が間違いなんだ? キミの記憶が間違いだとでも?」
「間違い……なの……こんなの……ッ」
涙が止まらなかった。
この男の言う通り、私は昨晩、ここでこの男と――。
「間違いだと、そう思い込むのもありかもね。せいぜいそう思い込んで生きるといい。一生彼を騙すには、それが一番だ」
「黙ってッ!」
「黙らないよ。いいかいリフィル。キミはこれから先もずっと僕が命じた時、僕の好きなタイミングでその身体を僕に差し出すんだ」
「嫌よそんなの!」
「……まあ、いいけど。どのみちもうキミの身体には僕の印を十分に刻み込んだ」
ザリアスはそう言うとようやく私から離れ、布団からスッと降り立ち、私のいる布団の方に向かってラフな部屋着を放り投げた。
「キミのドレスは昨晩、汚してしまったからね。良質なものだったから僕の家の使用人に責任を持って洗わせている。後でキミの家に届けさせるから、今はとりあえずそれを着るといいよ」
ドレスが……汚れて……?
そう言われてまた呼び起こしたくない記憶が蘇った。
そうだ、私は昨晩ドレスのままこの男と――。
「今日はもう帰るといいよ。そしてシュバルツに会うといい。マクシムス家からフレスベルグ邸までなら歩いて帰れる距離だろう」
「……」
私は彼の行動が理解できなくて、警戒しながら睨み付ける。
「……ふう。そんな睨まないでよ。一応これで僕も現段階では満足したからね。後はキミ次第だ。せいぜいシュバルツに上手い嘘を吐くといいさ」
彼はそう言い残すと、白いシャツだけを羽織って部屋から出て行ってしまった。
「……う。うぁ……うわぁ……ぁあぁあぁん……シュ、シュバルツ……さ、まぁ……」
私はそこで一人、泣き崩れていた。
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