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第1章 神獣復活
第7話 邂逅02
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「小夜さん、僕を誘ってくれてありがとう」
「……」
小夜が顔を上げると憂いを帯びた眼差しがこちらを見つめている。今日だけで何度、「ありがとう」と言われただろう。たび重なる感謝は小夜の胸を締めつけた。
──感謝されることじゃないのに……あれ?
間近で春馬を見上げていた小夜は気づいた。春馬は思ったよりも背が高くて肩幅がある。首筋の血管はひそやかに脈打ち、前髪の奥の瞳は優しげに瞬いていた。星空を背にする春馬が例えようもないほど儚げで美しく見える。
──どうして……わたしは……。
春馬を異性として強く意識している……そのことに気づくと小夜の戸惑いは大きくなった。自分の心が理解できず、春馬に見とれてしまう。やがて春馬は微かに首を傾げながら顔を近づけてきた。
「小夜さんどうしたの?」
「え……」
「また僕が怖い?」
「ち、ちが……ウワッ!?」
動揺した小夜はバランスを崩して鉄柵の後ろへ倒れそうになった。その瞬間、熱くて強い力が小夜の二の腕をつかむ。小夜は倒れずにすんだが反動でメッシュキャップが地面へ落ちた。
「危なかったね」
春馬は仰向けになった小夜を支えたまま優しく微笑みかける。小夜は二の腕から伝わってくる体温に耳まで赤くさせた。
「小夜さんって、意外とドジなんだ……」
春馬は優しげに笑いながら小夜を引き起こした。そして、メッシュキャップを拾い上げ、ほろって返す。
「あ、ありがとう……」
メッシュキャップを受け取りながら小夜は涼と会っているときとは別の、違った胸の高鳴りを感じていた。春馬は小夜の心を見透かすように耳元へ口をよせる。
「僕って二酸化炭素なんだろ? もっと余裕みせてよ」
湿度のある少し低い声。優しい口調だが春馬はクスクスと嗜虐的に笑う。それは、好きな女の子をわざと虐める少年のようだった。以前のように女に気後れする春馬は消え失せていた。
「調子に乗らないでよ……バカ……」
小夜に『なぜ春馬が急変したのか』を考える余裕はない。強がって見せるので精一杯だった。
「じゃあ……兄さんが車で待ってるから、ついて来て」
「うん。わかった」
小夜は予想外の出来事に心がざわついて忘れていた。寛が春馬を『屈折した感情の持ち主』と評価していたことを。だから気づかなかった……春馬の瞳に暗い復讐の炎が宿っていることに。
──この女も……この女の兄も……『デッドマンズ・ハンド』っていうやつも利用する。僕は夏実の復讐ができればそれでいい。
春馬は小夜の華奢な背中を見つめながら歩き続けた。
「……」
小夜が顔を上げると憂いを帯びた眼差しがこちらを見つめている。今日だけで何度、「ありがとう」と言われただろう。たび重なる感謝は小夜の胸を締めつけた。
──感謝されることじゃないのに……あれ?
間近で春馬を見上げていた小夜は気づいた。春馬は思ったよりも背が高くて肩幅がある。首筋の血管はひそやかに脈打ち、前髪の奥の瞳は優しげに瞬いていた。星空を背にする春馬が例えようもないほど儚げで美しく見える。
──どうして……わたしは……。
春馬を異性として強く意識している……そのことに気づくと小夜の戸惑いは大きくなった。自分の心が理解できず、春馬に見とれてしまう。やがて春馬は微かに首を傾げながら顔を近づけてきた。
「小夜さんどうしたの?」
「え……」
「また僕が怖い?」
「ち、ちが……ウワッ!?」
動揺した小夜はバランスを崩して鉄柵の後ろへ倒れそうになった。その瞬間、熱くて強い力が小夜の二の腕をつかむ。小夜は倒れずにすんだが反動でメッシュキャップが地面へ落ちた。
「危なかったね」
春馬は仰向けになった小夜を支えたまま優しく微笑みかける。小夜は二の腕から伝わってくる体温に耳まで赤くさせた。
「小夜さんって、意外とドジなんだ……」
春馬は優しげに笑いながら小夜を引き起こした。そして、メッシュキャップを拾い上げ、ほろって返す。
「あ、ありがとう……」
メッシュキャップを受け取りながら小夜は涼と会っているときとは別の、違った胸の高鳴りを感じていた。春馬は小夜の心を見透かすように耳元へ口をよせる。
「僕って二酸化炭素なんだろ? もっと余裕みせてよ」
湿度のある少し低い声。優しい口調だが春馬はクスクスと嗜虐的に笑う。それは、好きな女の子をわざと虐める少年のようだった。以前のように女に気後れする春馬は消え失せていた。
「調子に乗らないでよ……バカ……」
小夜に『なぜ春馬が急変したのか』を考える余裕はない。強がって見せるので精一杯だった。
「じゃあ……兄さんが車で待ってるから、ついて来て」
「うん。わかった」
小夜は予想外の出来事に心がざわついて忘れていた。寛が春馬を『屈折した感情の持ち主』と評価していたことを。だから気づかなかった……春馬の瞳に暗い復讐の炎が宿っていることに。
──この女も……この女の兄も……『デッドマンズ・ハンド』っていうやつも利用する。僕は夏実の復讐ができればそれでいい。
春馬は小夜の華奢な背中を見つめながら歩き続けた。
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