何気ない僕の日常は優しさで溢れている

としろう

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あなたが蹴った小指が痛い

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それは何気ない朝の一幕だった。



「としろう君、おきて!会社遅刻しちゃうよ~」

「う~ん」

僕は生返事をして、再び布団に潜った。

今思うと、僕はこの時なぜ直ぐに起きなかったのか。



たかが、5分程度の快楽の為に、僕はこの後、地獄?の苦しみを味あうことになる。



「もうっ!いい加減におきてよ!起きないならこうだ!スライディングターックル‼︎」



ボキィッ



妻が布団の上からスライディングターックルをかましてきた。

これは対したことはない。

ちょっとみぞおちに入るとグエッとなる程度のこと。

新婚の頃からしている妻の起こし方で、たわいもないじゃれあいさ。

…まあ、ちょっと新婚当初より、ボディブロウの重みが増したような気がするが、おそらく気のせいだろう。

僕の腹筋が衰えただけさ。



だが今日はいつもと少し違った。

ボキィ



変な音が足の小指からしていた。



「‼︎っ」



「わっ…。大丈夫!?」

足の小指があり得ない方向へそらされる感覚があった。

「う…ん。でもちょっと痛いかも」



だいぶ痛い。



心配する妻をよそ目に僕は出勤した。

まさか

「足の小指が痛いんで休みます」

なんて言えない。



でも、正直靴を履くのも激痛だった。

これほど革靴のカチッと感にイラっとした日は入社以来初めてじゃないだろうか?

ウチがサンダルオ~ケ~のラフな会社だったらどんなに楽だったか!

これ程クリエイティブ系に転職したいと感じたのは入社以来初めてじゃないだろうか?

それくらい痛い。地味に。



とにかくなんとか、会社に着いて仕事をする。

歩くと痛いが、座って足を動かさなければ痛みは無い。

コッソリ靴は脱いでいる。


…楽勝だな。



僕はこの時完璧に油断していた。



そしてそれは突然やって来た。



「としろう君ちょっといいかい?」



僕は焦っていた。

それは先週末に出した資料で、自分では完璧のつもりでいた。

しかし部長は少し難しい顔をしていた。

なんでだ?どこがまずかったのか?



「はいっ!いま…あっ」



やばい!靴を履いて無かった!



僕は急いで机の下の靴を足でたぐり寄せ、履いて、部長のもとへ向かおうとしたその時…。



ガンっ



本日二度目の悪夢が。



机の角に足の小指をぶつけてしまった。

しかも、朝と同じ右足小指を…!



机の角に小指をぶつけるといえば、誰しも経験するであろう地味に痛いランキングの常に上位をいくアレだ。

通常で有れば、10秒もすれば痛みは回復へ向う。

痛みやすく、治りやすいランキングでも上位である。



しかし、今回は違った。



痛みはまったく引かない!むしろ増していく感覚さえある!地味に痛い何てレベルじゃ無い!もう!激しく痛い!ヤバイ!俺のバカ!



クソっ涙が出て来そうだせ…。

でも俺は泣かねえ!なぜならあの日二度と涙は見せないと誓ったから…。



「…としろう君?どうした?」



やばい!部長に呼ばれていたんだった!

「はい!今行きます!」

涙で少し部長が滲んで見えた。



僕は仕事を早く切り上げて速攻近くの整形外科へ行った。



結果、折れていた。



「何やったの~?結構痛かったんじゃない?」

「あっちょっと、ぶつかって」



妻に布団の上からスライディングアタックされましたとは言えない。



「ふ~ん、まあ2週間位安静にしてたら治るよ。その間、小指をぶつけないように注意してね~」



もう遅い。悲劇は起きた。



「それにしても、だいぶ強くぶつけたんだねえ??」



なんだ?疑われているのか??

ヤバイ…。

やっぱりぶつけた位で骨折とか不自然過ぎるのか⁇でも真実は言えない!真実を言ったところで果たして信じてもらえるだろうか?むしろ、ベットの上でなにやってるんだとあらぬ疑いをかけられてしまうのでは…!なんとしても誤魔化さなくては!妻の名誉の為にも…‼︎



「僕、昔っからドジっ子で!てへっ!」



ダメ押しでやったこと無いウィンクもしてみた。



医者は真っ直ぐに僕を見据えた。



「…一応塗りぐすり出しておきますので、痛みが引かないようならまた来て下さい。」



それ以上、怪我の原因については言及されなかった。

やはり、ウィンク効果は絶大だったようだ。



「ただいま~」

「おかえり~!今日は早いのね!」



小指が折れてた事は妻には言わないでおこう。

気にするといけないから。



「今日さ~、お隣の奥さんからミカンわけてもらってね~…キャっ!」



妻がつまづいて僕の足(小指)を踏みつけた。



「ふざけんな‼︎…テメーのせいで小指が骨折してるんだよ!!このボケがっ‼︎イイ歳してドジっ子なんて笑えねーんだよ!!クソがっ‼︎」



…その夜僕は泣きやまない妻をなだめるのに必死だった。

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