夢の灯る街

何者

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<第一章>夜の始まり

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「幸せになりたい」
 誰もがそう思って生きている。幸せを求める心は皆同じだ。しかしその美しさと危うさは、時として人を狂わせ、翻弄する。人の欲とは凄まじいものだ。いつの時代も__。
 
 
「もぅいいかぁい」
 どこからか聞こえてくる鬼の合図に、時壱は息を潜める様にして建物の影に身を隠した。近づいたり遠ざかったりする足音に耳を澄ませ、見つからない様にと身体を縮こませる。
 どのくらい経っただろうか。いつしか足音は遠くなり、日も暮れ始めていた。ふと見上げた狭い空はオレンジ色に染まっており、カラスが群れとなって空を横切っていく。
『皆んな、もう帰っちゃったのかな』
 路地裏からそっと出て辺りを見渡してみるも、他の友達の姿はない。太陽が西に沈みかけていた。
 そっと息をついて家に向かおうと振り返った瞬間、感じた、違和感。何かがぞわりと背中を這う様な感覚。目の前に広がっているのはいつもと変わらない景色。だけど何かが違う。紛れもない違和感。身体の全細胞が違うと叫んでいる。
『夕方に隠れんぼをしてはいけないよ。あの世に連れ去られてしまうからね。』
 小さい頃、母はよくこう言っていた。
「まさか、ね」
 そう言い聞かせながらすくむ足を引っぱるように家の方向に歩き出す。一刻も早く家に帰って母の顔を見たかった。大丈夫だと抱きしめて欲しかった。
 動けずにいる俺を横目に太陽は傾き続け、あっという間に山に隠れてしまった。辺りは一瞬にして闇に包まれる。それと同時に祭りのような音が鳴り始め、辺りは騒がしさに包まれた。何もなかったはずの路地裏からは灯りが漏れ、人影が交差している。まるで俺を招いているかの様だった。
 一刻も早く家に帰りたかったが、辺りは闇に包まれ、どこをどう帰ればいいのかも分からない。仕方なく俺は灯りの溢れる方へと向かった。
「なんだ、ここ___」
 そこに広がるのはずらりと立ち並ぶ店の数々。それを照らす鮮やかな街灯。華やかな着物を身に纏った人々。夜とは思えないその光景に、時壱は思わず目を見張った。
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