半分本当にあった怖い話

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半分本当にあった怖い話

消灯

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「ああー、もう10時だよ…」
「はえーなー、寝るべ寝るべ」
 私のいる寮は消灯が10時だ。

~♪

 消灯をしらせるメロディがスピーカーから流れてきた。
 廊下の電気が消える。
「消しまーす」
 部屋で一番下の後輩が一言いれてからパチパチとスイッチを切った。

 これがいつもの日常だ。

────────────────────
 その日はお盆前、全員が夏の休暇に向けてそわそわし始める頃だった。

「消しまーす」
 代わり映えのしない後輩の声をスルーしつつ布団に潜り込んだ私はスマートフォンを手に取って、イヤホンをした。
 消灯といっても、すぐには寝ずに携帯やゲームをしている者も多い。見廻りなどほとんど来ないからだ。

 1時間ほど経った頃だろうか。
 私はSNSで外部の友人とアニメの話をしながら音楽を聴いていた。

ザッ、ザガッ、ザー…

 スピーカーが突如ノイズを吐いた。
 突然の出来事に驚いた私はとっさにイヤホンを外して耳をすませた。
 どうやら起きていた同室の人達は皆一様に耳をすませているようだった。

ザ、~♪ザッザ、~♪ザー

 ノイズの合間にメロディが聴こえる。
 ほとんど聞き取れないが、ラッパの聞き慣れないメロディだった。

「…なに今の?こえー」
 スピーカーが静まると、一人がくっくっと喉の奥で笑いながら呟いた。
 一人が呟くと笑いの波紋が広がる。
 私もなんだかおかしく感じて笑った。
「おい、こいつまだ寝てるぜ」
 部屋で唯一寝ていたぽっちゃりがいびきをかいたことで笑いが更にふくらみ、結局その日は隣の部屋の人に怒鳴り込まれておしまいとなった。

 しかし、その現象はその日を境に毎日起こるようになった。
 しかも決まって消灯の1時間後、23時に起こるのだ。
 普段の放送は問題なく聴こえることからスピーカーの故障ではないとなり、放送室に確認したがそんな定時放送の設定はしていないという。

 流石にこれはおかしい…
 全員がそう思い始めたが、特に害があるわけでもないため、問題は先送りにされて休み明けに点検することになった。

────────────────────
 休暇に入り、大半が帰省して人がいなくなった後も現象は続いていた。
 正直ほとんど全員馴れてしまって、今さら驚く人なんていなかった。

 だから異変に気付くのに遅れた。

~♪

 …あれ?今日はノイズが混じってない?
 今日のスピーカーはハッキリとラッパのメロディを奏でた。
 やはり聴いたこともないメロディだった。
 でも、どこか消灯のメロディに似ている。
 私は静かにメロディを聴いていた。

ゴッ、ゴッ、ゴッ

 廊下からそんな音が聴こえてきたのはスピーカーが静まって少ししてからだった。
 最初は見廻りが来たのかと思った。
 しかしそれにしては足音が重い。
 普段ならスリッパでパタパタと軽い足音がするはずなのに、まるでブーツのような重くて固い靴が出すような音だった。

ゴッ、ゴッ、ゴッ

 足音がゆっくりと近づいてくる。

ゴッ、ゴッ、ゴッ

 なんだか嫌な予感がした。

 このメロディって結局なんで鳴るのか謎なんだった…

ゴッ、ゴッ、ゴッ、ゴトッ

 部屋の前であからさまに足音が止まる。
 気合いの入った見廻りですように…。
 祈るような気持ちで寝たふりを決め込み、薄目を開けてドアの様子を見ていた。

…ガチャッ、ギッ

 古いがきちんと手入れのされたドアは小さく軋んだだけで、あとは静かに開いた。

ゴッ、ゴッ、ゴッ

 足音が部屋に入ってくる。
 足音だけが。

 おいおいおいおい…冗談だろう…
 幽霊なんてテレビの作り話で、まさか自分がこんな目に逢うとは考えもしなかった。

 どうやら部屋に残った他の人も同じく寝たふりをしながら様子を見ているようだった。

 …1人を除いて。

「んん…、なんだようるせーな。みんなが騒いでるスピーカーって、これ?」

 いつもは真っ先に寝るせいかスピーカーの現象を聴いたことのないぽっちゃりが、むくりと上半身を起こした。

ゴッ、ゴッ、ゴトッ

 足音がぽっちゃりのベッド前で止まる。

 おいバカ!
 止めようとするが、体が強ばって声が出なかった。

「いくらお盆だからって、こんな安いビビらせに…」

 そこでぽっちゃりの表情が固まった。

     しょ~うと~う

 低くしわがれた声がどこからともなく響いた。
 体がビクンと跳ねた。

 それからどれくらい経っただろうか。
 足音はとっくに出ていき、部屋には不気味な静寂だけが満ちてなお、誰も動かなかった。
 動けなかったと言った方が正しいかもしれない。
 ぽっちゃりは上半身を起こしたまま小刻みに震えていた。奥歯がカチカチと鳴るのが微かに聴こえる。

ピーピーッ、ピーピーッ

 誰かの時計の時報が静寂を破った。
「うわああああああああああ!!!」
 ぽっちゃりは自分を縛っていた糸が切れたように飛び起きて半狂乱に陥った。
「お、おい!落ち着け!大丈夫だ!誰か電気つけろ!」
 先輩がぽっちゃりを押さえつけながら怒鳴った。
 私は電気のスイッチに駆け寄った。

パタパタパタ…

「ひっ…!」
 再び近づいてくる足音に体がすくんだ。

ガチャッ!

 乱暴に開けられるドアに私は身構えた。

「おい!なに騒いでる!」
 見廻りだった。
 私は膝の力が抜けて、その場に尻もちをついた。
「よかった…」

 私は先輩と見廻りがぽっちゃりを押さえつけるのを呆然と眺めていた。

────────────────────
 その後、ぽっちゃりは先輩のビンタを2~3度頬に食らってようやく正気を取り戻した。
 部屋のメンバーはバラけて他の部屋に間借りし、現象が落ち着くのを待った。

 ぽっちゃりの話では何かを「見た」というより、得体の知れない恐怖、目の前に何かがいてこちらを睨み付けているように「感じた」という。
 近くにいただけの私ですら、恐怖で動けなかったのだ。
 狙われた時の恐怖は計り知れなかった。

 また、ぽっちゃり曰くあのメロディは大日本帝国軍時代の消灯ラッパだという。
 どうしてそんなものが流れたのか気になって調べてみると、どうやら私の学校は元々陸軍の士官学校だった。

 もしかすると今も教官が巡察を続けていて、お盆という特別な期間に私達の目の前に偶然現れたのかもしれない…。
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