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戦闘行為

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深く、深く暗く、冷たい中で、フッとそこから引き揚げられたような感覚に包まれて、酸素を求めるように口を開けて空気を吸い込んだ。


夢から覚めて、一気に現実に引き戻されたようで、肩を上下させて身体中に酸素を回して行く。


「プハッ!  ハァ……ハァ……ゆ、夢……だよな。なんだったんだあいつは……怪我もしてないし……良かった、やっぱり夢だったんだ」


身体を起こして、人狼に噛まれた脇腹と、謎の女性に刺された額に触れても傷一つ付いていない。


安堵の吐息を漏らした真治だったが、そんな真治をジッと見詰めている男性が隣にいて、思わず小さな悲鳴を上げた。


「目を覚ましたね。あ、大丈夫かい?  状況は理解出来ているかな?」


小さく、でも聞き取りやすい声で優しく問い掛けてくれたようだが、真治は驚いてソファから転がり落ち、窓際まで這って後退りをした。


「だだだだ、誰、誰ですか!?  俺を殺す人ですか!?」


そう言いながら自分の左手を見ると、日本刀が握られている。


どうやらあれは、夢ではなかったようだ。


殺されてたまるかと、鞘から日本刀を引き抜いた真治は、その切っ先を男性に向けた。


「ちょ、ちょっと待った!  俺は味方だよ。ほら、キミの手首と同じように、赤く光っているだろう?  同じ色は、同じ軍だという証拠だ。少なくとも、俺はキミを殺すつもりはないよ」
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