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戦闘行為

system_0049

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あれほど真治に熱く語ったのに、危険が迫ると我が身第一で逃げ出す。


それが弱い人の生きる術だと言われたらそれまでだが、真治はその後に続くべきかどうか迷っていた。


(訓練された星4レアには勝てないか。それも二人だからな。ここは新崎さんの言う通り逃げた方が良いのか)


今の真治が勝てる相手ではないということは、二人の堂々とした態度からもわかる。


ここはやはり逃げるべきかと、新崎が逃げた方へと向かおうとした時だった。


「……感じるね。美優、近くに隠れてる」


ジャリッと地面と靴が擦れる音が聞こえ、立ち止まったのがわかる。


気付かれた。


そう判断した真治が道路の方に視線を向けたが……まだ二人の姿は見えない。


「剥き出しの殺意を隠そうともしないなんて、素人も良いところだね。美優、あのアパートの上!  二人隠れてる!」


見付かったのは真治ではなかったが、その二人というのが奈央と明美だというのは明白。


真治が身を潜めている場所を通り過ぎて、二人がいるアパートの前まで駆けた真冬と美優は空を見上げた。


そして、手甲鉤と呼ばれる鉤爪のような武器を両手に取り出して、真冬がアパートの壁面を登り始めたのだ。


(なるほど、敵地の建物の中には伏兵がいるかもしれないし、外から攻めた方が安全というわけか)


戦闘はズブの素人の真治だったが、だからこそ他の人達の行動をフラットな目で見ることが出来た。
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