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戦闘行為

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「わはははは!  残念だったな。権田は殺せても、この次期東軍四天王の前田様は殺せなかっ……トゥンク。ベリーキュート」


睨む奈央を見て、胸に手を当てて顔を赤くした、筋肉質のゴリラのような見た目の前田。


他の三人は、そんな前田に驚いた様子だったが、何かを理解したようで武器を取り出してそのうちの一人が奈央に近付いた。


「運がなかったなお前。前田さんがお前に惚れたみたいだから、大人しくついてこいよ。言うことを聞くなら命までは奪わないだろうからさ。まあ、朝から晩までやられまくる……」


そこまで男が言った時だった。


屈んだタイミングでバイクの後ろに隠れていた真治と目が合って、一瞬身体が固まった。


「う、うわわわわわっ!」


これはまずいと判断した真治の行動は早かった。


飛び出すと同時に日本刀を前に振ると、男の胸から上を胴体から切り離したのだ。


奈央を守ったことを褒められた真治にとって、奈央を見捨てて逃げる選択肢は最初からなかったと言えよう。


足りなかったものは覚悟と勇気。


もちろん、今それがあったかと問われたら、ないと言わざるを得ないのだが。


切断した男が光の粒となって四散した路地で、真治は日本刀を構えて深呼吸した。


「前田さん、男がいたみたいですぜ!  この女、前田さんを誘惑したくせに男持ちだったんですよ!」
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