上 下
105 / 682
死神と荒獅子

system_0105

しおりを挟む
東軍の内部事情も色々あるようで、優と死神、吹雪が話をしている後ろで真治は話について行けずに歩いているだけ。


無理もない。南軍のことでさえあまりよくわかっていないのに、他軍の話など遠い国の世界のように思えていたから。


人通りの多い道を避けて、街の一番端に近い道を歩いているが、真治はその不思議な光景に目を奪われていた。


各軍を隔てていると言われている光の壁。


街をぐるりと取り囲むように地面から発生しているその壁は街の外周にもあって、キラキラと柔らかい光を放つ壁は、見る者の心を安らかにさせるよう。


「うん?  どうしたの少年。ぼんやりしちゃってさ。パンイチでそんな顔してると、頭が残念な子に見えるよ?」


「な!  パンイチは仕方ないでしょ!  光の壁を見てたんですよ!  近くで見るの初めてだから、綺麗だなって。これが街を区切ってるんですよね」


クスクスと吹雪が笑いながら尋ねるが、真治は納得出来ない様子で反論する。


「そうだ。そしてその光の壁の先には何もない。虚無が広がっているだけだ。誰がなんの為にこんな街を造ったのか……さっぱりわからんがな」


死神にそう言われて、光の壁を目を凝らして見てみると、確かに壁の向こう側には何もない。


ビルを切断するように発生していても、内側にしか建物がないのだ。


この街は、光の壁の中にだけ存在する世界。


真治は無意識にそれを想像していた。
しおりを挟む

処理中です...