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西の地で

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さらにギュッと抱き締めて、真治はそれから抜け出すのに必死だ。


それにしても雨村雪子とは。総合ランキングでも上位で、吹雪と同じくらい強い人ではないかと真治は震える。


そんな二人をよそに、何かに気付いた三葉がソファから立ち上がり、窓の方に歩を進めた。


「げ、元気ですよ! 強い仲間もいるし、目的もあるみたいですからね。雪子さんが言ってる人とはイメージが合わないですけど……」


雪子が言う吹雪は、どうもか弱い女性のようなイメージだが実物はまるで違う。容赦なく、感情のない機械のように人の命を奪うまさしく殺し屋のような人だから。


「雪子、お楽しみの途中で悪いけどさ、ビルの前に人が集まってる。あれは……沼沢のところのやつらだね」


窓の外の様子を見た三葉がそう言うと、雪子は真治から離れて真面目な表情に戻る。


「あんた達、まさかステルス機能を使わなかったのかい? 使わない時は、捕虜を先に歩かせろって言ったのに、それも忘れてたんじゃないだろうね?」


「ご、ごめん雪ちゃん。慌ててたから忘れちゃった」


ステルス機能。ヘルプの中にその機能の説明もあった。他軍に侵攻している時、武器を取り出さない状態であれば、腕の色をその軍と同じ物に変えられるという機能だ。


奈央を助けることに必死で、誰もそのことを忘れていたようだ。


「うーん……どうすっかね。つっても、やることはひとつなんだよね。少年。この奈央ちゃんは私が保護してあげるよ。でも、あんたは突き出す。いいね?」
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