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西の地で

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「嘘だろ嘘だろ! なんだよこいつ! 誰だよ弱いとか言ったの! 強えじゃねぇかよ!」


「無理無理! 私は降参だから! 逃げるからね!」


半分ほどの人が斬り捨てられて、流石に勝てないと感じた人達が蜘蛛の子を散らすように逃げ始める。


当然、そんな人達に追撃するほど真治はこの街に染まっておらず、ほとんどの人が死んだか逃げ出したかという状態になった。


「30……くらいはやったか。レベルが1は上がったかね? さて、それで沼沢にどこまで食い下がれるか」


雪子が死んだ人数を数えている中で、相変わらずビルを見上げる沼沢。


その後ろで肩で息をする真治が周囲を見回して、もう戦おうとしている人がいないことを確認して沼沢に日本刀を向けた。


「はぁ……はぁ……後はあんただけだ。俺は死ねない。戦うつもりなら容赦はしない」


それは真治にとっては精一杯のハッタリだったが、当然そんなものは沼沢に効くはずもなく。


「……お前さ、もう一人女の人連れてたよね? ビルの中にいるの?」


真治には興味がないと言わんばかりにビルを指差してそう尋ねて来たのだ。


まさか、どこかで見られていたのか? いや、見られていたからこそ、こうしてビルに押し掛けて来たわけだし、誤魔化すのは通用しない。


たとえ誤魔化したところで、納得するまで何度だってここに来るかもしれないと考えると、嘘をつくメリットはないと感じた。
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