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厳しい優しさ

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「三笠は……どうして死ななきゃならなかったんですか。この街で強くなかったから、死ぬのは当然だったんですか」


誰かが強くなる為には、その人よりも弱い人が必要になる。


そして、殺されるだけ殺されて、他人を強くして死んでしまう。


そんな事の為に、この街に呼ばれてしまうのかと、真治は納得することが出来ずにいた。


「わからんやつだな。弱ければ死ぬ。それは少年が殺した人間にも言える事だ。そこまで強くなる為に、少年は一体何人殺した? その全ての人間に、大切な人はいたかもしれないのに」


「それは……し、仕方ないじゃないですか。殺らなきゃ殺られるんですから……」


話せば話すほど、自分が言っている事は矛盾だらけで、自分の都合の良い事しか言っていないというのがわかる。


人を殺す理由を正当化しなければ、なんの感情もなく殺人をしているわけだから。


「だとしたら、お荷物を抱えて戦う事が、どれだけ無謀なのかわかるだろう? 大体少年はだな……」


と、さらに畳み掛けるように恵梨香が話を続けた時、ジャリッという地面を踏み締める音が、公園の入り口の方から聞こえたのだ。


北軍の恵梨香と一緒にいる所を誰かに見られたら、池田みたいに勘違いをするかもしれないと、慌てて音のした方を向いた真治は……思いもよらない光景を目の当たりにした。
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