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厳しい優しさ

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その人物が、しっかりとした足取りでこちらに向かって歩いて来る。


「え? え? な、なんで……」


何が起こっているのかわからない。


どういう事か説明してもらおうと恵梨香の方に顔を向けるが、「チッ」と舌打ちして顔を背けるだけ。


「な、なんで……死んだんじゃないのか?」


ベンチから立ち上がって、真治がその人物に尋ねると。




「なんとか、助かったみたいだ。そっちの姉さんが俺を助けてくれた」




死んだはずの三笠が、失った腕も脚も元通りの姿で、目の前に現れたのだから驚かないはずがない。


「恵梨香さん……何をどうやって三笠を助けてくれたんですか!?」


三笠はソウルがなかったはずだ。敵軍の誰かを倒すにしても、洗浄日明けの今、そんなやつらがいるとは思えない。


「来るなと言っておいたのに……簡単な事だ。少年Bに、貴史に決闘を申し込ませた。それに勝利して、少年Bはソウルと賞金を手にしたというわけだ」


決闘……同じ軍の人間でも戦ってソウルと賞金が得られるシステムだ。一対一の戦いで、誰も干渉出来ない戦い。


あんな姿で、同じような姿になっていたとはいえ貴史に買ったのか三笠は。


「ありがとうな、高山。それだけ言いたくてよ。俺、頑張って生きるから、お前も死ぬなよ」


それだけ言うと三笠は、背を向けて歩き始めた。
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