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厳しい優しさ

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真治に斬り捨てた人間が光の粒に変わる前に、その後続の人達が足を取られて次々と倒れて行く。


さらに後続は、それを避けて先に進むといった感じだ。


「誰かが誰かを守る為に戦ってる。誰もが誰かの大切な人かもしれないなんてわかってるけど……強くならないと守ることも出来ないんだ!」


倒れた東軍の人達の首を斬り落とし、起き上がろうとした人にも斬り掛かって光の粒へと変える。


祈るように斬り続けて、第一波が途切れた頃、その群れを追い掛けるように南軍の人間が向かって来たのだ。


「み、味方みたいだけど……大丈夫かこれ!?」


人を追い立てる人の群れ。


恐ろしく勢いのある集団に、一応腕の光を見せて味方であることをアピールしたが、その迫力に圧された真治は慌てて振り返り、来た道を引き返した。


「す、すげぇ怖い!! なんだこいつら!」


味方だから、怖いからって殺すわけにもいかず、必死に逃げるしかなかった。


正直な話、真治は総力戦の大通りをなめていたと言わざるを得ない。


敵も味方も、あちこちに殺意を向けて、下手すれば誰と戦っているのかもわからなくなりそうな乱戦状態。


こんな状況だが、一つだけ間違いなく言えることがあった。


「転んだら死ぬ! 味方に踏まれて死ぬ!」


冗談にもならないこの状況に恐怖し、この集団をやり過ごそうと道の端へと寄った真治は、マラソン大会のように人で埋め尽くされた道路を安堵して眺めた。
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