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厳しい優しさ

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上の階で、エレベーターの前に東軍が待ち構えていれば、上がって来るのは表示でわかる。


見付かるのを覚悟でエレベーターを使うか、疲労するのを覚悟で階段を使うか。


「……迷うな。日本刀さえ壊れてなければ、どっちでも良いんだけどな」


どちらも危険は付き物だ。


階段を上がっている時にエレベーターで逃げられるという可能性もあるから、あえて敵が待ち構えている所に飛び込む方が、逆に不意をつけるかもしれない。


そう考えて、真治はエレベーターのボタンを押した。


東軍の人間が七階にいる可能性が高いとして、どう攻めるべきか。


恵梨香や吹雪なら、恐らく強引に踏み込んで、力ずくで制圧するのだろう。


中途半端はない。全滅させるかこの場をスルーするかのどちらかに違いない。


エレベーターが一階に到着し、扉が開いて中に入る。


七階のボタンを押して、扉が閉まると同時に、神経を扉に集中させる。


今の真治は普段の半分以下の力しかないのだ。


扉が開くと同時に矢が飛んで来たり、襲い掛かられた時に対処出来るようにしておかなければ待っているのは死だ。


何度も深呼吸をして、扉が開いた時のシミュレーションを何度も繰り返す。


大雑把な戦いで許される屋外戦とは違い、緻密な戦い方が要求される屋内戦。


七階に近付くにつれ、真治の心臓の動きは激しさを増し始めた。


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