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厳しい優しさ

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七階に到着して、ポーンという音が聞こえたと同時に扉が開いた。


その瞬間、僅かな隙間から細い矢が侵入して来るが、想定していた攻撃故に、真治の防御行動は早かった。


生と死の狭間にいるような、キリキリとした感覚が肌を切るように撫でる。失敗すれば死、成功して辛うじて生きられるこの状況。


飛んで来る矢に刃を合わせて縦に真っ二つに切断すると、左右に分かれた矢が真治を避けるようにして壁に突き刺さったのだ。


エレベーターの中で真ん中に立っていたのは、攻撃を誘発させる為。


外から見えない位置にいれば、敵は警戒するか、姿を確認してから攻撃をしただろう。


それでは精神的余裕を敵に与えてしまうことになるだろうと考えた。


「く、くそっ!」


目の前の男は一瞬呆気に取られていたが、すぐさま矢を取り出して弓を構えようとする。


しかし遅い。真治はダンッと床を踏み締めた勢いそのままに飛び掛かり、弓ごと身体を真っ二つに斬り裂いた。


「がはっ……」


ドサリと身体が崩れ落ちて、びくんびくんと痙攣したように震え、しばらくして光の粒に変わった。


「東軍……仲間もいるはずだよな」


音が聞こえたのは外に面した部屋の中だった。廊下で音を立ててもそこまで音は出ないだろうし、何より見張りのように男がここにいたなら、他に人がいるに違いない。


エレベーター前から廊下を見てみると誰もいない、静かな空間が奥に伸びているだけだった。
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