上 下
286 / 682
厳しい優しさ

system_0286

しおりを挟む
嵐のように猛威を振るって、そしてそれだけ言うと去っていった男達。


敵だったが、妙に爽やかな印象を真治に植え付けた。


自分達の信念とも言うべき、芯が一本通っているような感じだ。


矛盾した二つの考えに悩む真治とはまるで違う。


偶然遭遇したが、戦えて良かったと思える相手だった。


「無駄な事はしない……か。考えた事もなかったな」


自分にとって無駄なことは何なのか。


街の中央にそびえる塔に向かう為には、強くならなければならない。


その為には人を殺してソウルを集めなければならないから、無駄とは言い難い。


今までの行動を振り返りながら、何かしら理由を付けて無駄じゃなかったと言い聞かせて。


これから無駄な事をしなければ良い。


しばらく歩いて、傷を負った東軍の人間とすれ違うが、悩んでいた真治はそれを見逃してぼんやり考える。


何かが違うと頭を抱えて、恵梨香と吹雪がいるマンションの前に到着した。


無駄な事をしないという信念は、あの三人の物であって俺の物ではない。


持つべきは俺の信念。


何をどうすれば良いのか。答えを出さなければこの先、感情に流されて日本刀を振るうことが容易に想像出来たから。


時には感情に任せるのも良いだろうが、その結果が折れた日本刀なのだから、もっと考えなければこの街では生き残れないだろう。
しおりを挟む

処理中です...