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持つべき信念

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無駄な戦闘を避ける為に、ステルス機能を使って腕の色を黄色にする。


空ももう随分黒くなり、腕の色がハッキリとわかるような時間。ステルス機能が効果的なのだろう。西軍の人間とすれ違うことはあっても、誰とも戦闘にならなかった。


そしてやって来た、真治達が侵攻した光の壁近くの大通り。


さすがに総力戦以外ではこの辺りには人の姿はない。


ここから、雪子がいるビルまでは約300メートル。


「さて、少年。言っておく事がある。私達がここに来たのは、飽くまで仲間を探す為だ。最悪の場合、少年の仲間を助ける事に手は貸さないが、それでも構わないな?」


恵梨香の厳しさは今に始まったことではない。そう言われる可能性は真治は考えていたが、それは自身を試そうとしているようにも見えた。


一人で困難を乗り切れなければ、塔を目指す資格すらないと言われているようで。


「その時は、自分で何とかします」


強く真治はそう答えた。


「早く行こうよ。すぐ近くに姉ちゃんがいるんでしょ?」


そんな決意も、姉が大好きな吹雪には無意味なものだ。


「じゃ、じゃ、行きましょう。雪子さんの所に」


頭の中が一つのことでいっぱいになった人間には、どれだけ真面目な話をしても軽く流されてしまうのだと学んだ真治だった。
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