上 下
386 / 682
新たな脅威

system_0386

しおりを挟む
まさかこの音はと、速度を落とさないように一瞬だけ振り返った真治の目に、高速で迫るナイトの姿が映る。


「ひ、ひいっ!」


あまりの迫力と恐怖に、情けない声が漏れたが現実は非情なものである。


もうすぐ光の壁の切れ目に辿り着くのに、これではとても間に合うとは思えない。


恵梨香は既に南軍に入り、後は真治がそれに続くだけという状況だったが、絶望的な状況だった。


「ギャウッ!」


そんな時、真治の耳に届いた獣の悲鳴のような声。


もう一度振り返って見ると、ナイトの身体を蹴り、宙返りをしている赤いマントを羽織った人物がいたのだ。


「あの時の赤マント……いや、違う!」


フードの中から見えたその顔は、口元まで隠していた以前の赤マントとは別人。


女性の顔が見えたのだった。


「ほら、早く逃げなよ。いくら私でもこんなやつをまともに相手なんてしてらんないんだから。ほら、行った行った」


以前に会ったとは違う謎の赤マントに助けられたが、ピンチには変わりはない。


少しでも日本刀のレベルを上げて、自身の動きが速くなればと、勿体なくも感じたが左手でスティレットを引き抜き、溶け込ませるようなイメージでそれを日本刀に合わせた。


スティレットは消え、日本刀のレベルが上がったのだろう。


ほんの少しだけ、真治は身体が軽くなったような気がして、南軍に逃れるように走った。


そんな真治の眼前にポーンの群れが迫る。
しおりを挟む

処理中です...