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聞こえぬ死燕の足音

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起き上がって武器を取り出そうするが、身体が重くて起き上がるのも困難。


こんな状態で戦闘に突入すれば、どんな相手にも勝てる気がしないと真治は感じたが、それでも身は守らなければならない。


音がしたのは奥の診察室辺りで、声の主がどういう行動を仕掛けてくるかと、ジッとそこに目を向けていると。


診察室から小さな顔がひょっこりと出たのだ。


「……おじさん誰?」


細く、高い声で女の子が尋ねる。


まだ高校生の真治にとって、おじさんと呼ばれることは心外だった。


「俺は……ちょっと怪我してて。えっと、キミはどうしてこんな所に?」


敵意も殺意も感じないそこ女の子に、真治は安心して握り締めた日本刀を下ろした。


「うん、亜美はお姉ちゃんと一緒にここにいるの。いつか家に帰れるんだけど、まだ帰れないんだって」


こんな小学生低学年に見える子まで、容赦なくこの街に呼ばれたと考えると酷いものだ。


この街から出るには、どこにあるかもわからない、敵のキングを破壊しなければならない。


小さな女の子には、それはほぼ不可能と言える。


それよりも、他にも人がいるという亜美の言葉に、真治はまだ安心出来ないと再び日本刀を構えた。


この医院の中に、他にも人が潜んでるのかと。
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