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聞こえぬ死燕の足音

system_0425

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こんな時だが、真治はこの状況に陥ってようやく通常回復の仕組みが理解出来た。


自軍にいる時は自然回復が早くて使うことはほぼないが、他軍では使う回復。


武器を手にしている時はこの回復は止まるから、回復しながらの継続戦闘は出来ない。


そう感じたのは、日本刀を抜いてから徐々に死に向かって動き始めたような気がするから。


早く勝負を付けないと自分が死んでしまう。


「はっ。どうやら死にかけてるみたいだな。俺に喧嘩を売ったやつを見逃してはやらねぇぞ。さっさと死ねよ」


真治の様子を見て、怖くないと判断したのだろう。


一歩後退するとナタを振り上げて、激しく斬り掛かったのだ。


その攻撃に反応し、重い腕と共に日本刀を頭振り上げて防御する。


ガンガンと、何度も振り下ろすナタがぶつかる音と振動が発生する度、真治の身体を徐々に追い詰めて行く。


大した攻撃ではないのに、真治は耐え切れなくなって床に膝を付いた。


「クソ弱ぇガキが! いきがってんじゃねえぞコラ! このまま大人しく死んでろや!」


調子に乗った弓長が、めったやたらとナタを振り下ろす。


「くっ……お前なんかに……負けてたまるか!」


一か八か、弓長がナタを振り上げたタイミングに合わせ、しんしは足に力を込めて床を蹴った。
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